【群馬県 | スタートアップ支援プログラムRAITO2023成果発表会】いよいよデモデイ到来!採択企業5社がメンターと駆け抜けた5か月間の成果を発表(連載企画/最終回)

2023年10月10日にキックオフとなった、起業家を支援する「ぐんまスタートアップアクセラレーションプログラム(RAITO)2023」。採択者5社を追う連載企画もいよいよ最終回となる。2024年3月1日、群馬県庁32階セミナースペースにて成果発表会が行われた。採択者が支援機関やメンターと駆け抜けた約5か月間の成果をお届けしたい。

自身の経験と独自の販路を最大限に活用し、着物アートのプラットフォーマーを目指す【tomokimono】

阿部 智子さん
プラン名:「着物革命 伝統と革新の融合」
https://www.tomokimono.com/

tomokimono代表 阿部 智子さん

中古着物をアート作品にアップサイクルし、海外市場向けに販売する取り組みを行っている阿部さん。受注生産の他、旅館等で着物アートを委託展示し、興味を持ったお客様に購入してもらうという販売方法をとっている。

目標としては、3月末までに5件の販売を目指していたが、現時点では1件。しかし、FM群馬や上毛新聞などのメディアでの露出により確実に認知度を高めており、興味を持った女性から就職したいとの連絡も。また、群馬県知事の知事室や群馬県庁32階の官民共創スペース「NETSUGEN」の入口に着物アートを飾ってもらうなど、着物アートの価値を実際に見てもらう機会を作ることができた。

RAITOを通うじてメディア露出などが増え、着実な認知度向上に繋げている(出典:2024年3月11日付上毛新聞文化面)

今後は販売目標を達成するため、旅館頼りではなく直接ターゲット顧客であるBtoB、BtoGのセールスを強化していく予定だ。

RAITO採択前は「着物アートの先駆者になること」がビジネスの目標だった阿部さんだが、支援を受けていく中で「着物・クリエイター・顧客を繋ぐ『プラットフォーマー』になること」へと変化した。自身だけでなく、着物に係る全ての人を繋げたいという阿部さんの想いが、この大きな変化に繋がったのだろう。

阿部さんはこの春、JTBに復職。大手旅行代理店の社員としての経験やチャンスを最大限に活かし、「着物アート」の認知度を高めるため、販路拡大やプレゼンの機会にどんどん飛び込んでいくと意気込んだ。

RAITOを通じて『プラットフォーマー』としての活動に梶をきる

地酒を通した「つながりの大切さ」を再認識。企業理念をブラッシュアップし目指すべき道が明確に【群馬SAKETSUGU】

清水 大輔さん
プラン名:「地酒を核とした関係人口づくり、プラットフォームビジネスの構築」
https://www.gunma-saketsugu.jp/

群馬SAKETSUGU代表 清水 大輔さん

ふるさと納税を利用し群馬県の地酒を広め、関係人口を拡大するプランを掲げた清水さん。群馬県庁の職員を辞め、2019年から一人で模索しながら始めた事業だが、RAITO採択後からはメンターとの壁打ちをしながら二人三脚で進んできた。

メインの取り組みであるふるさと納税については、確認通知が届いたのが年を越した1月末であったため、今後は2024年末を狙い、メニューのブラッシュアップをしていく予定と気合いが入っている。

2024年のふるさと納税に向けてメニューのブラッシュアップを図る

また、SNSでの情報発信にも力を入れている。インスタグラムとX(旧Twitter)では毎日、「#カンパイ」のハッシュタグをつけて地酒を紹介しており、フォロワー数は支援前より着実に増加している。今後も情報発信に取り組み、フォロワー数を増やしていきたいとのことだ。

今回のRAITOを通じて、大きく見直したのが企業理念だ。これまでは想いは込めたものの抽象的な部分もあり、相手に伝わりにくい部分があった。そこで新しく「ミッション・ビジョン・バリュー」を策定。清水さんが大切にしている「群馬の蔵元さんを応援したい」「群馬の地酒や特産品の素晴らしさを体験してほしい」という2点をミッションとし、「魅力的な情報を発信し続け、ファンコミュニティを形成し広げる」というビジョンを掲げた。そのためのバリューは「”楽しい”を共有する」こと。2か月に1回行っているリアルイベントもこの指針に基づいており、ただ地酒が売れればいいというわけでなく、「人と人とのつながりを地酒を通して大切にしていきたい」という想いから引き続き開催の計画が進んでいる。

支援を受けたことで全体的な事業計画を策定し、何に集中すべきかがはっきりしたという清水さん。今後も地酒を通して群馬県の魅力を発信していきたいと力を込めて語った。

RAITOを通じた多くの支援内容を発表

ブランディング力を強みに安中市でナイトウォークを正式受注。ブラッシュアップされたプレゼンで営業力の弱みを解決【株式会社Sunset films】

井埜 涼太さん
プラン名:「観光コンテンツ創生 ナイトウォークコンテンツ事業」
https://sunsetfilms.co.jp/

株式会社Sunset films 代表取締役 井埜 涼太さん

ブランディングを軸に映像や写真、デザインを行う会社を運営している井埜さんは、その土地の歴史や自然を活かし、映像や照明を融合させたコンテンツ「ナイトウォーク」の事業展開に取り組んでいる。

AIの発達によりクリエイティブの仕事が淘汰されるのではないかという懸念がある中、クリエイティブの力を活かしたいという思いから、日本ではまだ馴染みの薄い「ナイトウォーク」というコンテンツに着眼。これを地方創生と結び付け、事業展開していくために今回RAITOへの参加となった。

RAITO採択前の課題は3つあり、強みが見つけ出せていないこと、営業が出来ていないこと、壁打ちの相手がいないこと。特に営業に関して、今までは口コミで仕事が広がっていたこともあり対外的な営業が出来ていなかった。そのため、営業ツールの作成・企業へのプレゼンが今回の大きな目標である。

支援開始後、メンターと壁打ちしながら作成した営業ツールと共に観光関連の企業約9件に営業。1件ごとにプレゼンをブラッシュアップし精度を高めていった結果、案件として考えたいという企業が3件と、今後につながる営業となった。

そしてなんといっても安中市でナイトウォーク事業を正式に受注できたことが大きな成果だ。更に、第二弾が上野村、第三弾も2025年の冬に決まっている。技術面で提携できる会社も増え、より没入型の体験やシステム開発に強くなっていくだろう。

群⾺県安中市横川 3⽉30⽇グランドオープン決定!
Igntion SERIES第一弾『MELODIC LIGHT WALK』のイメージ映像はこちら

「持続可能な観光地」として地方創生に一役も二役も買うであろう「ナイトウォーク」事業。RAITOで培った営業力とブランディング力でより事業を拡大させるため、金融機関や協力企業と連係を取りながら事業を展開していきたいと井埜さんは話している。

新たな観光コンテンツとして各地域で期待される「Ignition SERIES」

栃木銀行主催のビジコンで最優秀賞を獲得!目標の資金調達のため引き続き投資家にアピール【ソーシャルムーバー株式会社】

北嶋 史誉さん 大江 一徳さん
プラン名:「介護福祉分野のクロスモビリティ事業」
https://social-mover.co/

ソーシャルムーバー株式会社 代表取締役 北嶋 史誉さん

同社は介護から「送迎」を切り離し、介護タクシー業者にアウトソーシングするビジネスに取り組み中。いわば、「介護タクシーのUber」のような立ち位置で、利用者と介護タクシーをマッチングするサービスだ。

すでにサービスは始動しており、目標に対して上振れした数字を残すなど好調な様子。課題はこれから事業をより拡大していくための資金調達と、競合他社の台頭だ。ダイハツやパナソニックなど大手企業が送迎支援システムを提供しており、これから高齢化社会が進む中でサービスに参入する企業は増加するだろう。

大型の資金調達に向けて事業計画を発表し呼びかける

しかし、同社の取り組みでは、大手企業ができていない「複数のデイサービスを一体として送迎できる」という大きな強みがある。今まさに走っている介護タクシーに空きがあって、乗りたい利用者がマッチングすれば乗せることができるというシステムだ。

今後、同じようなシステムを展開する競合他社が出てくることは考えられるが、同社代表取締役の北嶋さんには30年間介護業界に深く関わってきており、独自の販路を持っているという大きな強みを持っている。

この強みを活かし、約135億円の規模をもつ市場に事業を展開していくためには、資金調達が欠かせない。メンターや支援機関の力を借り、現在72社に打診中。求めているのは、案件を主導する投資家であるリードインベスターだ。また、自身でも栃木銀行主催のビジネスコンテストで最優秀賞を獲得するなど、積極的に活動している。前回の中間発表会より一段とブラッシュアップされたプレゼン・ピッチ力で、引き続き投資家との話し合いを進めていきたいとしている。

既に全国で導入実績があり「介護タクシーのUber」を目指す

現場へのヒアリングで新たな商品のヒントが。痒い所に手が届くツールで販路拡大を目指す【かまちょっかい株式会社】

金城 拓登さん
プラン名:「小規模事業者向け 生産管理システム」
https://kamachokkai.com/

かまちょっかい株式会社 代表取締役 金城 拓登さん

中小企業の製造業者向けにDXツールを販売、コンサルティングを行う会社を運営する金城さん。同社で開発した生産管理システム「Wakno」の普及にむけた取り組みでRAITOの支援を受けることとなった。

Waknoは月11,000円で導入できる生産管理システムだ。現場の声を反映させたシンプルな作りとなっており、LINEで操作が完結する点が大きなメリット。「スマホは苦手だけどLINEだけは使っている」という層にも受け容れられやすいツールである。

スマホのLINEで簡単に利用できる生産管理システム「Wakno」

販売方法としては直接製造業者と契約するだけでなく、商社に営業をすることで販路の拡大を目指す。そして、県外へパイプをつなげることにより、より可能性は広がった。長野県で行われた信州ベンチャーサミットではDX/GX部門で優勝。武者修行することでプレゼン力も格段にレベルアップしている。

既に導入企業では「このシステム無しで業務できない」といった声が上がっている

中間発表会では「Waknoの導入が難しい」という現場の声を聞き、方向転換を考えていた金城さん。メンターとの壁打ちや支援を受ける中で、生産管理システムWaknoをメインにし、付随して在庫管理システムや外観検査システムを開発するなど、痒い所に手が届く商品ラインナップにしていく。

今後も多くの人に自社を知ってもらえるよう、高崎市全域の企業や機関にアピールを続け、提携先を増やしていくと金城さんは語った。

プレゼン力が飛躍的にアップした5社、これからが本当のスタート!

約5か月間、メンターや支援機関のサポートにより事業を進めてきた5社。キックオフからその活動を見守ってきた中で感じたことは、各社ともビジョンが明確になり、ピッチ・プレゼンのスキルが飛躍的にアップしていることだ。県外のビジネスコンテストで優秀な成績を収めていることも頷ける。RAITOの支援は3月末で終了となるが、ここからが本当のスタート。ますます加速する各社の事業を、これからも注目していきたい。

ぐんまスタートアップアクセラレーションプログラム(RAITO)2023プログラムの紹介記事はこちらhttps://kitakanto.localbook.work/2023/09/15/gunma-accelerator-program-raito1/

連載企画第1回キックオフイベント開催記事はこちらhttps://kitakanto.localbook.work/2023/10/20/gunma-accelerator-program-raito2/

連載企画第2回中間発表会開催記事はこちらhttps://kitakanto.localbook.work/2024/01/12/gunma-accelerator-program-raito3/

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