ハーレーの本命は「グランドアメリカン・ツーリング」だ:抜群の巡航性能を誇る2モデルが日本上陸

アメリカでは最量販モデル

ハーレーダビッドソン・ジャパンから新型「ストリートグライド」「ロードグライド」が3月1日に発表された。

そのフォルムは上級グレードである「CVO」ですでに披露済みだが、発表会の壇上に登場した「ホワイト オニキス パール」のストリートグライド、「シャークスキン ブルー」のロードグライドは爽やか、かつ新鮮に見えた。

大型のフェアリングを備え、冷却システムも専用の装備を持つグランドアメリカン・シリーズは、ハーレーの総販売のなかでアメリカでは約半分、年によってはそれ以上を占める人気モデルだという。筆者が2023年夏に訪れた、ミルウォーキーにおけるハーレーの120周年イベントでも、その比率の高さは実感できた。

これが日本では現状15%に留まるそうで、「日本でのシェアを倍にしたい」と、壇上の野田一夫社長の鼻息は荒い。路上での存在感が強いモデルが増え、売上単価も上がるなら万々歳だろう。

この目標を実現するため、価格は後述する多数のアップデートにもかかわらず従来モデルと同等の3,693,800円〜とされた。

ツーリング時の快適性が大幅向上

スタイリングはLEDヘッドライトやキャストホイールを含め、完全に刷新された。フェアリング形状などの空力性能も、流体力学を活用して改善した結果、風の巻き込みを大幅に低減しているという。

フレーム、スウィングアームも構造や素材を見直して軽量化された。ストリートグライドで8.2kg、ロードグライドで7.3kgスリムになったという。SHOWAと共同開発のダンパーを採用したリヤサスペンションのストローク量は1.5倍に拡大している。

1923ccの45度Vツイン・エンジン「ミルウォーキー・エイト117」は105psを発生。アップデートにより、昨年モデルとの比較で馬力で3%、トルクにして4%増加している。気筒あたり4バルブ、デュアルスパークプラグを採用したほか、カウンターバランサーによるアイドリング振動低減、冷却性能向上が施されている。ライドモードを選択することでスロットルやブレーキのレスポンスを調整できる。

新OS「スカイラインOS」インフォテインメントは、すべてのメーターをタッチ操作可能なTFTスクリーンで表示し、高品質のオーディオも楽しめる。基本的にはハンドルバーの親指部分ですべての操作が可能。AppleCarplayもナビゲーションの画面を全面に表示できる。

ハーレーが「競合モデルに対する大きなアドバンテージ」とする新OS「スカイラインOS」を通じてコントロールできるオーディオは、出力倍増した200W・4チャンネルアンプを採用。ロックフォード・フォズゲートへのアップグレードも容易に可能。

大型ハーレーこそブランドの魅力

イベントには格闘家でブレイクアウト・オーナーの魔娑斗氏と、その妻で女優の矢沢 心氏が登場し、新型を走らせた印象を語った。「ブレイクアウトで1年で1万km走りました。一度に走るのは最大で350km程度なのですが、新型ロードグライドなら船に乗るような快適性で、500kmは軽いと思います」

昨年7月、ハーレーダビッドソン本社の120周年イベントに招かれたとき、最も印象的だったのは、来場したハーレーの多くが大型のグランドアメリカン・シリーズであることだった。ソフテイルやスポーツスターはほとんど見かけなかった。大型ハーレーでこそこのブランドの魅力が生きる、と本場のひとびとは考えているわけだ。

自分が走らせたのは上級のCVOモデルだったが、「ロードグライド」「ストリートグライド」がツーリングに快適な乗り心地を示し、風よけ性能も万全、さらに従来型に対する軽量化に基づく運動性能を示すのは間違いないところだろう。

田中 誠司
ボルテックスパブリッシング株式会社代表取締役/編集長。自動車雑誌カーグラフィック編集長、BMW Japan広報部長、ユニクロ・グローバルPRマネジャー等を歴任。ポーリクロム株式会社代表取締役PRストラテジスト。企業広報・PRのアドバイス、コンテンツのローカライゼーションなどに携わる傍ら、編集著述者としてメディアに寄稿する。1975年生まれ。筑波大学基礎工学類卒業。

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