「暗い雰囲気を何とかしたい」体育館解体跡のコンクリートが巨大壁画に ほとばしる情熱 卒業前に3年生が描いた内容は?

 高校生のほとばしるパッションを感じて-。沖縄県浦添市にある県立浦添工業高校の3年生が高さ5メートル、長さ13メートルの壁画制作に挑戦した。体育館跡の擁壁に昨年10月に開催された浦工祭から描き始め、卒業間近の2月28日に完成させた。アートへのあくなき探究心を躍動感ある構図と鮮やかな色で表現している。(浦添西原担当・比嘉直志)

 壁画を発案したのは2年の我那覇和香さん。解体された体育館跡に残っていた擁壁が「灰色のコンクリートで、周辺の雰囲気を暗くしているので何か活用したい」と思ったのがきっかけ。浦工祭実行委員を務めていたことから、イベントとして描くことを3年生に提案した。

 浦工祭では、3年の奥平康仁さん、屋良朝世さん、西銘駿之介さん、諸見里虹さんがペンキで絵を描き、そばで天久颯さんがドラムを演奏するライブアートを披露した。

 絵のテーマは「ランの園」で、技術者の「卵(らん)」が集まる同校を表現した。15~16世紀に活躍したオランダの画家、ヒエロニムス・ボスのシュールな作風を参考にした。

 絵には、校内を流れる小湾川を挟んで立つ2体の守り神としてのシーサーを、さまざまなポーズを取った人間があがめている様子を描いた。奥平さんは「絵全体にいろんなものを詰め込んでカオスな感じを出したかった」と狙いを語る。

 メンバーは、完成した絵を眺めながら「シーサーがかっこいい」「迫力ある作品になった」と口々に語り、満足げだった。

 絵を描いた擁壁は、体育館跡地の活用次第で撤去される可能性があるが、少なくとも今後10年は残る予定。浦工祭を担当した大城由華教諭は「完成させたことがすごい。今回の経験を生かして、これからの人生も最後までやり抜く気持ちを大切にしてほしい」と5人にエールを送った。

 ライブアートを披露した5人は「Hae Bun Bun」のグループ名で、絵や立体物を展示するなどのアート活動を行っている。活動はインスタグラムに投稿している。

制作に携わった壁画をバックに立つ浦添工業高校の生徒=2月29日、浦添市の同校

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