55歳男性がFXの“殺人通貨”トレードで勝負に出た結果…わずか半年で「300万円」を失うまでの顛末

(※写真はイメージです/PIXTA)

知り合いが投資で儲けたと聞くと、「自分も」と思うのは当然のことでしょう。しかし、実際に投資を始める際には十分な知識を持ち、リスクについても把握しておく必要があります。それがFXトレードのように高リスク・高リターンの投資となればなおさらです。今回は、短期で利益を得たいからと勢いでFX投資に手を出し、逆にお金を失ってしまった人を例に、FX初心者が押さえておくべき「失敗しないためのポイント」を解説します。

「短期で利益を出すならコレだ!」と始めたFX

山田吾郎さん(仮名)は、IT関連の仕事をする千葉県在住の55歳男性。2人目の息子の就職が決まり、肩の荷が下りたと感じています。子育ても一段落し、これからは一番の楽しみである旅行を夫婦で楽しみたいと考えていますが、老後を考えると貯蓄に不安があるそうです。

そんな山田さんが後悔しているのは、7、8年前に手を出したFXでの大きな失敗。半年ほどで300万円もの損失を出して退場した経験を持ちます。

当時、息子2人の大学進学による出費が予想されるなか、山田さんはもっと自由に使えるお金が欲しいと考えていました。そんなときに、同僚がFXのポンド円トレードで大きく儲けたという話を聞き、「短期で利益を出すならコレだ!」と感じたといいます。

英国の通貨ポンドは「殺人通貨」と呼ばれることもあり、ボラティリティが大きく相場が荒れやすいことで有名です。特に当時は英国のEU離脱問題で相場が動くなかで、確かに大きな利益を出せる可能性がありました。

[図表1]山田さんがFXを始めた時期とポンド円の推移 ※当時のポンド円の週足チャート(TradingView)

山田さんは、旅行用に分けていた貯金から50万円を取り崩し、ポンド円のトレードを始めます。資金は少ないながら大きなレバレッジをかけており、短時間に数万円以上の利益が出ることもあったそうです。「スリルがあって、中毒性がありましたね」と振り返ります。

ただ、どんな取引をしていたか聞いてみると、「何となくの相場観で売ったり買ったり。損切りを自分でしたことはほとんどなくて、強制ロスカットまで我慢していました」とかなり感覚的なもの。結局、1カ月足らずで、最初の資金は大きく減ってしまったそうです。

お金を失ったことが受け入れられなかった山田さんは、何とか元を取ろうとさらに貯金を取り崩して入金を行います。しかし、損失を取り戻すどころか、損失はどんどん大きく膨らんでいきました。

最後に山田さんは、英国のEU離脱を決める国民投票のタイミングで勝負に出ます。「EUを離脱するわけがない。ポンドは下げ過ぎ」という直感で、ポンド円の買いポジションを持ち超したのです。しかし、この予想は外れてポンドは大暴落。ダメ押しとなる大損失を出すことになり、ついにFXをやめることを決意しました。

こうして山田さんは、FXを始めてからわずか半年足らずで合計300万円を失い、FX取引から退場したということです。なんとか2人の子供を大学に通わせることはできましたが、好きな旅行を我慢することになっただけでなく、生活を切り詰めるハメになりました。

敗因は「すぐに利益をあげられる」という気持ち

山田さんがFXで大失敗した原因は、すぐに利益をあげられると思い、十分な準備もなしにリアルトレードを始めたことにあります。さらに取引対象にボラティリティの大きなポンド円を選んだことで、傷口が広がってしまいました。

また、山田さんはもともとギャンブル好きだったのか、FXのスリルを楽しんでいたようにも見えます。相場を分析して優位性のあるところを探すというよりも、上昇するか下降するかを丁半バチで当てるようなトレードをしていたことも失敗の原因でしょう。

確かにFXでは、初心者がいきなり大きな利益をあげることもあります。しかし、それを継続するのは難しく、安定した成績を残すにはそれなりの知識やスキル、経験が欠かせません。「簡単に稼げそう」という安易な気持ちだけで始めると、痛い目に遭う可能性が高いわけです。

実は山田さんのように、FXを始めたものの短期間で退場してしまうケースが多いことが、最近の調査で明らかになっています。

FX退場者の半数が1年未満でやめている

FXをやめた人を対象に行った、独自のアンケート調査の結果を2つ紹介します。1つ目は、FXをやめたタイミングに関する質問です。

[図表2]Q. FXを始めてからどのぐらい経ったときに、FXをやめましたか? https://ad-van.co.jp/technical/article/survey-reason-quitting-fx/

最も多かったのが「6カ月~1年未満」で26.4%、これに「1年~2年未満」が24.6%、「6ヵ月未満」が22.9%で続いています。1年未満で集計すると49.3%で、FXをやめた人のうち半数近くが1年も経たずに退場しています。山田さんはFXを始めて半年もせずに退場しましたが、これは決してめずらしいケースではなかったことがわかります。

次に、FXを始めた当初の目的について見てみましょう。

[図表3]Q. FX取引を始めた当初の、最も大きな目的をひとつ選択してください。 https://ad-van.co.jp/technical/article/survey-reason-quitting-fx/

「短期的な利益獲得で」が32.4%で最も多く、これに「長期的な資産増加」が17.6%、「スワップポイントによる利益獲得」が16.9%で続いています。「短期的な利益獲得」が頭一つ抜けて高い割合となっており、FXをやめた人のなかには、短期的に利益を出そうとしてFXを始めた人が多いという結果です。

確かにFXは短期間で利益を出すことも可能ですが、それは決して簡単なことではありません。山田さんのケースのようにならないためにも、FXでは真面目に取り組む意識が大切になるといえるでしょう。

FX初心者が心がけるべき6つのポイント

本記事では、短期的に利益を出そうとしてFXを始めた男性が、半年足らずでFXをやめることになったエピソードを紹介しました。こんな形で、FXに慣れる前に退場する人は少なくありません。

最後に、これからFXを始める初心者が、大きな失敗をしないために心がけておきたいポイントを6点紹介します。

1.余剰資金を使う

FXに限ったことではありませんが、投資は余剰資金を使って行うのが基本です。なぜなら投資にはリスクがあり、資金を失う可能性もあるからです。負けてはいけないという余計なプレッシャーがあると、冷静に取引することが難しくなります。負けても生活に影響が出ない資金を使って、余裕を持って取引することが大切です。

2.少額から始める

トレードの世界では、初心者も上級者も関係なく同じ土俵で戦うことになります。そのため、経験の少ないうちはどうしても不利なところがあります。わざわざ不利なときに、大きな資金で取引する必要はありません。まずは少額で始めて経験を積み、経験を積んでから投入資金を増やすほうが理にかなっているといえるでしょう。

3.短期で大きく稼ごうとしない

FXは最大25倍のレバレッジをかけることができるため、短期間で大きな利益を出すことも不可能ではありません。しかし、そういった取引は、同時に大きな損失を出すリスクを伴うものです。自分がやろうとしている取引のリスク(損失がいくら出る可能性があるのか)を具体的に意識して、無理のない範囲でトレードを行うことが大切です。

4.トレードルールを明確にする

FXで安定した成績を出せるようになるためには、トレードルールが欠かせません。自分の感覚だけでトレードをしていると、感情に邪魔をされて客観的な判断ができなくなるためです。FXで大切なのは、トレードルールを明確にしたうえで、それに従って淡々とトレードを行うこと。これを繰り返しながらトレードルールの改善を行い、少しずつ成績を向上させていきましょう。

5.検証・練習ツールを活用する

FX初心者にとって、トレードの経験をたくさん積むことが大切です。しかし、リアルトレードだけで経験を積もうとすると、どうしても時間がかかってしまいます。この点、検証・練習ツールを使用すれば、たとえば1ヵ月分のチャートを1日で経験することも可能。こういった便利なツールを活用して、スキルアップを図るのもよいかもしれません。

6.自分の勝ちパターンをひとつ見つけよう

人によって性格や生活スタイルは異なるので、自分に合うトレードスタイルも人それぞれです。初心者の人は、まずは自分が実践しやすい勝ちパターンをひとつ見つけることを目指しましょう。自分が得意とする相場が見えてくると、FXトレードが格段にやりやすくなります。そしてトレードを繰り返しながら、勝ちパターンの引き出しを少しずつ増やしてください。

まとめ

FXの場合、勝負できる実力を身に付ける前に損失を出してやめてしまう人が多いと考えられます。

特に初心者のうちは、利益を出すことよりも退場しないことが何よりも大切です。リスクを抑えて経験を積みながら、焦らずにトレードスキルを磨くことを心がけていただければと思います。

© 株式会社幻冬舎ゴールドオンライン