米ボルティモアで橋が崩落、不明6人は死亡と推定 コンテナ船が電力喪失して衝突か

アメリカ・メリーランド州ボルティモアで26日未明、パタプスコ川にかかる橋にコンテナ船が衝突し、橋が崩落した。当局は同日、6人が行方不明となっているとし、全員死亡したと推定されるとした。

崩落したのはフランシス・スコット・キー橋。全長2.6キロメートルを超え、ボルティモアのランドマークとなっている。

コンテナ船が橋の支柱の一つに衝突した際、複数の車両が橋を通行していた。

現場では複数のボートとヘリコプターによる大規模な捜索・救助活動が行われた。

水中では何台かの車両が見つかった。これまでに2人が川から引きあげられ、うち1人は重体となっている。

沿岸警備隊は26日夕になり、行方不明者6人の捜索を中断し、橋の復旧作業を開始したと発表。行方不明者は橋の補修工事をしていた作業員たちだとした。

沿岸警備隊のシャノン・ギルリース少将は行方不明者たちについて、転落した川の水温と、水中にとどまっている時間の長さから、死亡したと推定されると述べた。

当局によると、コンテナ船は「電気系統の問題」に見舞われ、衝突の直前に救難信号を発していたという。

「電気系統に問題」

シンガポール船籍のコンテナ船「ダリ」は現地時間26日午前1時30分、47年の歴史を持つフランシス・スコット・キー橋の支柱に衝突した。

同船は午前0時45分ごろ、スリランカの首都コロンボに向けてポイント・ブリーズの港を出港していた。

米連邦政府機関によると、船は出港時に「推進力を失った」という。

乗組員はその後、船が衝突する可能性があるとメリーランド州の運輸当局に警告したと、サイバーセキュリティーおよびインフラセキュリティー当局の機密扱いではない事故報告書に書かれている。

メリーランド州のウェス・ムーア知事は「乗組員が電気系統の問題を当局に通知していた」ことを認め、橋の支柱に衝突する前に船が電力を喪失していたと付け加えた。

当局はトレーラーサイズの車両を含む何台かの車両が川に落下したとしている。

ボルティモア消防署や沿岸警備隊、メリーランド州のほかの複数の機関が大規模な救助活動を行った。

ボルティモア消防署のジェイムズ・ウォレス署長は、救助された2人のうち1人が「非常に深刻な状態で、地元の外傷センターに搬送された」と認めた。

ウォレス氏は、潮流が救助活動を難しくしていると述べた。地元当局者たちは、橋の周辺の気温が摂氏3度ほどと、凍えるような状況であることも、救助チームにとって大きな懸念だと指摘した。

ボルティモアのブランドン・スコット市長は先に、今回の事故は「想像を絶する悲劇」だとし、いま集中すべきは「人、命、魂だ。(中略)我々が助け出さなければならない人たちが水中にいる。我々が話すべきことはそれだけだ」と述べた。

メリーランド州運輸局長のポール・ウィードフェルド氏は、複数のエンジニアが現場で、倒壊がもたらした構造的影響を調べていると述べた。

コンテナ船の海運会社シナジー・マリーン・グループはBBCに対し、船にはインド人22人が乗っていたと語った。

同社は声明で、 港内での離着岸を担当するハーバーパイロット2人を含む乗組員全員について、けが人の報告はないとした。

そして、「事故の正確な原因はまだ特定されていない」、船の所有者は連邦政府機関と「全面的に協力している」と付け加えた。

海運大手マースク(デンマーク)は、同船をチャーターし、顧客の貨物を輸送していたと明らかにした。

「ボルティモアで起きたことに恐怖を感じている。影響を受けたすべての方に思いを寄せている」と声明で述べた。船にはマースクの乗組員や職員は乗っていなかったという。

ジョー・バイデン米大統領は、ボルティモアにできるだけ早期に向かうつもりだとし、捜索・救助活動を優先すべきだと述べた。

「人事を尽くしてできるだけ早急に港を再開し、全力で橋の再建にあたるよう私のチームに指示した」

バイデン氏は、橋の崩落は事故によるもので、連邦政府が「その橋の(再建にかかる)費用を全額負担する」とした。ただ、その費用を確保するには議会の承認を得る必要があると付け加えた。

(英語記事 Baltimore bridge collapse: Six presumed dead after ship collides with bridge

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