トランプ氏のSNS運営会社、ナスダック上場 取引開始直後に株価急騰

ドナルド・トランプ前米大統領のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」を運営する会社が26日、米ナスダック市場に上場した。株価は取引開始直後に急騰した。

上場したのは「トランプ・メディア・アンド・テクノロジー・グループ」(以下トランプ・メディア)。同社の株価は、取引開始早々に70ドルを突破し、時価総額が90億ドル(約1兆3700億円)を超えた。終値は約58ドルと、前身会社の前日の終値より16%以上上昇した。トランプ氏が保有する株式の価値は40億ドル(約6000億円)以上になった。

これは同社の業績をはるかに上回るものだと、複数のアナリストは指摘する。

トゥルース・ソーシャルは「X」(旧ツイッター)に似たサービスだが、昨年1~9月の収益は330万ドル(約5億60万円)に過ぎず、5000万ドル(約75億8000万円)近い損失を出した。

同社によると、フェイスブックなどの主流サイトに代わるプラットフォームとして2022年に一般公開して以降、890万ものアカウントが作成された。ただ、アクティブなアカウントの数は不明だ。

これに対し、最近上場した掲示板サイト「レディット」の現在の時価総額は約110億ドル(約1兆6700億円)。7000万人以上のユーザーを誇る同サイトの昨年の収益は8億ドル(約1200億円)だった。

調査会社SPACインサイダーの創業者クリスティ・マーヴィン最高経営責任者(CEO)は、トランプ氏のイニシャル「DJT」というティッカーシンボルで取引を開始したトランプ・メディアを、業績に関係なくSNSなどで注目が集まり株価が急騰する「ミーム株」になぞらえた。

トランプ・メディアへの関心は、金融街ウォール・ストリートの企業とは対照的に、個人投資家の間でも高まっている。こうした投資家の多くはトランプ氏の支持者とみられる。

「誰もが、今日の取引は少しクレイジーになると予想していた」と、マーヴィン氏は述べた。「本当の疑問は、今から1週間後、2週間後にどのような取引になるのかということだ。どうなるのか、誰にも分からないので」。

「極めて重要な瞬間」

トランプ・メディアの上場計画が最初に発表されたのは、2021年だった。

今回の動きは、すでにナスダックに上場している特別買収目的会社(SPAC)「デジタル・ワールド・アクイジション」との合併により実現した。

この取引は政府による調査などに阻まれて遅れが生じていたが、規制当局が今年初めにこれを承認。デジタル・ワールド・アクイジションの株主が先週、合併計画を支持した。

トランプ・メディアの関係者は上場に先立ち、同社やより広範なメディア業界にとって「極めて重要な瞬間」だと述べていた。

「公開企業として、当社はビッグ・テックと呼ばれる巨大IT企業の検閲からインターネットを取り戻すムーブメントを構築するという我々のビジョンを、情熱的に追求していく」と、トランプ・メディアのCEOで元下院議員のデヴィン・ヌネス氏は述べた。

「当社は、表現の自由のための安全な港としての役目を務め、ますます増加する言論抑制集団に立ち向かうという、米国民に対する責任を果たし続ける」

トランプ氏にとって「重要な局面」

トランプ氏は複数の訴訟に直面し、賠償金などの支払いの資金繰りに奔走している。トランプ・メディアの株式の半分以上を保有している同氏にとって、今回の上場は重要な局面といえる。

トランプ氏は現在、少なくとも6か月間は持ち株の売却が禁じられており、この思いがけない利益を即座に手に入れることはできない。

トランプ氏の息子の一人と盟友たちで構成される同社の取締役会は、この規則を変更するかもしれない。しかし、アナリストたちは規則の変更が直ちに実現する可能性は低いとみている。

トランプ氏が株式の大部分を売却すれば、株価は下落し得る。

投資家たちは、トランプ氏の政治的な運勢や、2024年大統領選キャンペーンなど、ほかのリスクにも直面している。

ニューヨーク大学のマイケル・オーロッゲ法学教授は、トランプ氏が負ければ株価は下がるかもしれないが、勝利すれば逆の効果が生まれる可能性がある、トランプ氏の機嫌を取りたい買い手の需要が高まればなおさらだと指摘した。

一方で、現在の株価は「誰もが(トランプ・メディアの)基本的価値として考えているものより、もっと、はるかに上昇している」とした。

(英語記事 Donald Trump media firm soars in stock market debut

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