校長先生からバス運転士“1年生”に 下平さん(青森・南部町)「地域の足守る」 教え子乗せることも

運転席に座り発車時間を待つ下平さん(左)と五戸小の児童たち

 青森県南部町の元小学校校長・下平(しもたい)正明さん(61)が2023年7月から南部バスの運転士として、五戸町内を回るバスを運転している。スクールバス便では中学生になった教え子を乗せることもあり、運転士1年生の下平さんは「児童生徒の登下校でも高齢者の通院でも、バスが必要とされていることを痛感する。地域の足を守る仕事で、毎日が充実している」と話している。

 下平さんは五戸町の上市川小学校校長だった22年9月、自らの可能性を広げるため大型2種免許を取得。学校に集金に訪れた、バスを運行する岩手県北自動車の社員に免許取得を話したところ、同社から勧誘を受けた。23年3月の定年退職後は教員として再任用の道もあったが、悩んだ末に地域の足を守るためバス運転士に挑戦することにした。

 試験に受かり、研修を経て同年7月下旬に入社。五戸営業所に配属され、月平均12日勤務している。主に五戸町から受託しているコミュニティーバスを運転し「安全最優先の仕事なので大変なことはたくさんある。特にお年寄りの安全に気を使う」と言う。

 また、五戸小学校の非常勤講師も週2回ほど務める二刀流。「子どもたちが乗るときは遠足に引率している感じ」と振り返る。スクールバス便を利用する小渡瑛太(えいた)君(五戸小2年)は下平さんの授業も受けていて「優しい先生で、バスの運転も上手」と語る。

 岩手県北自動車南部支社の高橋学支社長は「乗客への接遇もよく、安心して業務を任せられる」と評価する。下平さんは「会社の皆さんの配慮で何とか続けている。できれば次の1年も継続したい」と優しい目で話していた。

© 株式会社東奥日報社