浅草の人気ガイド もっともらしいけど内容は全て嘘?マニアックな「嘘のツアー」発案者、松澤茂信さんに聞く

浅草のガイドツアーで、観光情報や歴史にまつわるお話、街のトリビアをもっともらしく説明するが、その内容は全て「嘘」という、かなり変わったガイドツアー、その名も「嘘のツアー」が3月より開催されている。

浅草で開催されている「嘘のツアー」とは?

SNSなどでは「くだらないけど、ちょっとおもしろそう」「斬新なアイデだから参加してみたい」という反応から、実際に参加した人からは「パンチの効いた嘘から上品な嘘までツアー時間中ずっと嘘」「別次元の新しいエンタメツアーなので超おすすめ」という声で盛り上がり、予約が殺到。当初は1日限定のツアーのはずが何度も増便を重ね、なんと8月までの催行が決まっているとのこと。

「嘘のツアー」で語られる内容は、もっともらしいが全て嘘!

この記事を書いているわたしも実際に参加し体験してきたが、参加者も「嘘で自己紹介をしてください」と言われ、本当か嘘かわからないメジャーな名前を言う人から、絶対にありえない名前を言う人までいる「嘘」の自己紹介からツアーは始まる。その後、歩きながら看板や街の説明をされ、途中、存在しないベストセラー小説の話をされたりしながら「嘘」で構成された世界の共犯者になるのがおもしろい。一方で、雷門や浅草寺という〝THE観光スポット〟ではなく、街中の看板やタイル、岩や木を含めて普段街を歩いていても、なかなか立ち止まって見たりすることのないものや、ディープな地下街を巡ることで視点が広がったと感じさせられる。そういう意味では、とても満足感のあるツアーだった。

今回はそんな「嘘のツアー」の発案者であり、ツアーガイドの松澤茂信さんにお話を伺った。

なお、文中のいわゆるインタビューカットといわれる写真だが、本物の松澤茂信さんではなく、AIが生成した「嘘の松澤茂信」さんであるため、その点ご注意を。

―改めて「嘘のツアー」がどんなものか教えてください。

松澤茂信さん(以下、松澤):90分間の浅草ガイドツアーなのですが、私がお話しする内容のほとんどが嘘です。また、参加者の方も僕の説明に加えて、嘘の情報を差し込みたくなったら自由に嘘をついていただくことができます。ツアー中には「チャンスタイム」として、上手い嘘をついていただいた方にはちょっとしたプレゼントもあります。

―どのようなかたちで着想されたのでしょうか。

松澤:もともとはエイプリルフール企画のつもりだったのですが、人気だったのでさらに実施することにしました。おかげさまで8月までの運行が決まっております。ツアー自体は嘘ではなく本当に実施しております!

▲AIが生成した「嘘の松澤茂信」さんです

―言える範囲で、数として嘘はいくつくらいあるのでしょうか? また、イチオシの嘘があれば教えてください。

松澤:30個以上の嘘がありますね。イチオシといいますか、ツアー最初の嘘なんですが、「浅草はランダム生成されてる街で、来るたびに通りや建物が変わってる」という嘘からスタートします。そして「浅草の有名な金色のオブジェがあるのがたくさんあるうちのパターン112なのですが、自由の女神やスフィンクスの場合もあります。そのパターンになるかはその日になってみないと分からなく、555段の階段がある場合もあり、そのときはかなり困難なツアーになるので、ツアーガイドとしても日々ドキドキしています」という感じです。

―よく嘘というのは「少しだけ本当のことを混ぜると本当っぽくなる」という話がありますが、今回も本当の話もありそう……でした。ツアー内容はどのように考えられたのでしょうか。

松澤:もともと個人的な趣味で珍スポット巡りをしたり、実際の街歩きのガイドツアーもしたりしているので、リアルな知識を各所からつぎはぎして嘘にしています。なので、「少しだけ本当のことを混ぜると本当っぽくなる」というのはおっしゃる通りで、嘘なはずなのに妙にリアル……ということが起こります。

―いままでに嘘のツアーは30回開催されていると思いますが、実際の参加者から寄せられた感想やコメントを教えてください。

松澤:「嘘なのにツアーとして面白かった」「参加型で大喜利できるのが楽しかった」などのご意見をいただいてます。たくさんの方に喜んでいただけてとてもうれしいですが、僕自身としては、30回も開催していると嘘と本当の境界線が徐々にぼやけてきていて、何が嘘で何が本当なのかがわからなくなっています。

―浅草という場所を変えれば、いろいろな場所で、またいろいろなコンテンツとのコラボレーションの可能性が考えられるフォーマットになっていると思いますが、実際に浅草以外での開催の予定はあるのでしょうか?

松澤:すでにお話しを進めているところもあります。「うちでやりたい」という企業さんや自治体さんがいらっしゃったら、ぜひお気軽にご相談ください。

―最後に、これから参加する方、参加を検討している方に一言お願いします。

松澤:嘘みたいな話しですが、けっこう好評なのでぜひお気軽にお越しください!

(ライター・大原 絵理香)

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