脂肪肝の改善には、食生活を整えることが重要です。脂肪肝と診断された由美さん(仮名)との会話を通して食習慣を見直しながら、減量中に気になる水分補給と糖質依存について見ていきましょう。尾形哲氏の著書『専門医が教える 肝臓から脂肪を落とす食事術 予約の取れないスマート外来のメソッド』(KADOKAWA)より、実際のエピソードとともに効果的な減量法について解説します。
水分はしっかり摂取した方がいいワケ
「由美さん、こんにちは。調子はいかがですか?」
先生は変わらない笑顔で迎えてくれた。でも、私は先生に合わせる顔がない。
「体重、1.5㎏しか減らせませんでした。だめですね、私……」
「そんなことはありませんよ。食事記録を見せてもらいましたが、主食の量を守りつつ、野菜たっぷりでタンパク源も加えられたことがわかります。由美さんの食事方法は間違っていませんよ。それに、血液検査の結果はAST27、ALT50、γ-GTP18まで下がっています。すばらしい結果です」
すぐに気持ちは上向かなかったけれど、肝臓のことを思うと私に残された選択肢は1つだけ。元気な肝臓を取り戻すことだ。ありのままを先生に話そう。
「体重が減らないことで焦って、たくさん汗をかくまで湯船に浸かったり、水分摂取量を減らしたりもしました」
「それはかえって逆効果です。水を飲んでむくんで太るというのは誤解ですし、体重が増えても一時的なもの。お風呂で汗をかいたり、水分を控えたりしても、脂肪は落ちません。むしろ、体内の水分が少ないと肝臓への血流の量が落ちて、太りやすくなります。減量中だからこそ、水やお茶は意識してたっぷり飲むといいですよ」
「そうですよね。わかってはいたんですけど……」
「食事の前後30分の間にスクワットをするといいですよ。机かイスの背もたれに両手をかけた状態でゆっくり行うと安全です。10回2セットを1日1回から始めてみてください。大きな筋肉を鍛える筋トレになりますし、むくみの解消にもよっぽど効果的ですよ」
<先生からの処方箋>
減量中は水を普段より多めに! 減らしても、体から水分が減るだけで脂肪は落ちません。
糖質を減らしたことで“依存”が軽減
「そのほかに気づいた体の変化などはありますか?」
「家に甘いものを置かないようにしていたのですが、来客があったときにプリンをいただいて。消費期限も短くだれかにあげることもできなかったので、娘と半分ずつにして食べたんです。前にも食べたことがあるものだったのですが、何だか口にまとわりつくような不快な甘さを感じて……。3口食べて、これはもうやめようと自制の念が働きました」
「それは糖質依存がなくなってきているよい兆候ですね」
「甘いものを食べてしまったことについては、すごく後悔しています」
「食べてしまった→体重が増える・減らない→自己嫌悪→自分はだめだ→もういいや、となっていませんか? 一度のダメージで肝臓はやられません。何度だってやり直せます。由美さんの体は、本来あるべき姿に近づこうとしていますよ」
「体型も体重も変化がないので不安ばかりでしたが、体は変わっているんですね」
「1日1日、体はよい方向に変わっています。ほかのだれと比べることもありません。比べるのは、昨日の自分です。では、最後の1カ月。由美さんの目標体重は?」
体重が減らずに鬱々とした時間を過ごしてきたが、体はちゃんと変わってくれているのかもしれない。残り1カ月、イチかバチかやってみよう。
「スタートから3カ月で5㎏減。61㎏になります」
「大丈夫。がんばりましょう。次回は何日にお目にかかりましょうか」
「7月26日はいかがでしょう」
「では、11時にお待ちしています」
<先生からの処方箋>
食べてしまった後はスパッと忘れて、明日も体重計に乗ろう!
尾形哲
長野県佐久市立国保浅間総合病院
外科部長/「スマート外来」担当医