「公務員vs会社員」生涯年収が高いのはどっち?退職金事情の比較も

会社員の生涯年収はいくらなのかシミュレーション

春は就職・転職の季節。今後のキャリアについて考え直している方も多いのではないでしょうか。

仕事選びの基準は立地・福利厚生・ワークライフバランス・やりがいなどさまざまですが、給与事情を挙げる方も多いでしょう。

最近では初任給を引き上げる企業もあり、その年収事情に注目が集まります。

一方、根強い人気を誇るのが「公務員」。ソニー生命保険の「子どもの教育資金に関する調査2024」では、自分の子どもに就いてほしい職業として1位に「公務員」が選ばれています。

安定を理由に挙げる声が多いですが、では「生涯年収」を比べた場合、会社員とどれほど異なるのでしょうか。

記事の後半では会社員の生涯年収に迫ります。

職種や役職、勤務地などによっても生涯年収は大きく異なりますが、今回は国家公務員の「モデル給与例」や会社員の「労働統計」などを基に比較してみたいと思います。

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国家公務員の生涯年収はいくら?役職別に調査

まずは公務員の生涯年収について、モデル例を見てみます。

地方公務員は自治体による違いも出てくるため、今回は国家公務員に限定したケースで試算してみます。

公務員の給与

内閣官房内閣人事局が公開している「国家公務員の給与(令和5年版)」から、平均的な給与を確認しましょう。

現在、国家公務員は約59万人。このうち、一般職で給与法適用職員は28万2000人です。

国家公務員の月給例

月例給(行政職俸給表(一)(平均 42.7歳)の平均)は40万5049円。ここにボーナスが年間平均4.4月分加算されるので、年収目安は約664万円となります。

平均年収で38年働いた場合、生涯年収は単純計算で2億5232万円です。

ただし、勤続年数や役職によって大きく異なるものです。

例えば2023年4月1日現在、入職時に1級1号俸だった場合は初任給が15万100円です。

係長となり3級25号俸が適用されれば、26万9400円に。

課長となり9級41号俸が適用されれば、52万7500円になります。

また、指定職によっても大きく異なります。

指定職の給与

昇給や昇進のスピードが、生涯年収に影響を与えるということです。

公務員の退職金

生涯の給与を得たうえで、公務員は退職時に退職金が支給されます。

行政職俸給表(一)適用者の、定年退職による平均退職金額は2111万4000円です。勤続年数による違いは次のとおりです。

  • 5年未満: 84万8000円
  • 5年~9年:451万8000円
  • 10年~14年:675万7000円
  • 15年~19年:1016万6000円
  • 20年~24年:1352万4000円
  • 25年~29年:1625万6000円
  • 30年~34年: 2037万円
  • 35年~39年:2189万1000円
  • 40年以上:2139万1000円

会社員の生涯年収はいくら?

続いて、独立行政法人労働政策研究・研修機構の「ユースフル労働統計2023 ー労働統計加工指標集ー」を基に、会社員の生涯年収を見てみましょう。

会社員の生涯年収

学校卒業後の60歳までの生涯賃金(退職金を含めない)は男性の大学卒で2億5000万円、女性の大学卒で2億円です。

企業規模が大きいほど高くなる傾向があり、例えば男性で大学卒の場合、企業規模1000人以上では2億9000万円まで達するものの、企業規模10~99人では2億円にとどまります。

また退職金を含めた金額では、男性は10~99人の企業規模では2億6000万円であるのに対し、1000人以上では3億7000万円。

女性は10~99人で2億1000万円なのに対し、1000人以上では2億9000万円となりました。

企業規模により生涯賃金の差はさらに開くことがわかります。

会社員の退職金

別の統計資料にはなりますが、厚生労働省「令和5年就労条件総合調査 結果の概況」によると、大学・大学院卒の定年退職金は次のとおりです。

会社員の平均退職金額
  • 20~24年:1021万円
  • 25~29年:1559万円
  • 30~34年:1891万円
  • 35年以上:2037万円
  • 合計:1896万円

公務員と同様に勤続年数や昇進・昇給スピードによって異なる上に、企業規模によっても差が出ることがうかがえます。

生涯年収は公務員のほうが高いのか?

それぞれ異なる資料で「モデル給与例」「平均額」から算出するのであれば、国家公務員の「本府省課長」の生涯年収は3億円超えとなり、大企業の会社員と同じかそれ以上と推定されます。

しかし前述のとおり、公務員でも職種や役職、勤務地などに大きく左右されるため、単純に比較することはできません。

また、退職金や賞与の支給月数が減少傾向にあることから、今後は公務員の給与水準が落ちる可能性もあるでしょう。

生涯年収を考える上では、「公務員か会社員か」以上に、その先の出世や昇進コースのビジョンを描けるかどうかが重要になりそうです。

まとめにかえて

公務員と会社員の生涯年収について比較してみました。モデル例や平均の提示はあるものの、実際の生涯年収には個人差があります。

仕事を選ぶ基準には、目先の給与だけでなく年収アップの見通しや退職金の充実度も重要かもしれません。

そもそも給与だけではなく、やりがいや福利厚生を重視する方も多いでしょう。

さまざまな視点から、今後のキャリアについて考えていきたいですね。

参考資料

  • 内閣府「国家公務員の給与(令和5年版)」
  • 独立行政法人労働政策研究・研修機構「ユースフル労働統計2023 ー労働統計加工指標集ー」
  • 内閣官房内閣人事局「退職手当の支給状況」
  • ソニー生命保険「子どもの教育資金に関する調査2024」
  • 厚生労働省「令和5年就労条件総合調査 結果の概況」

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