沖縄では少ない築64年の木造平屋 家主「譲ります。移築活用して」 5月末までに立ち退きで 1級建築士「取り壊しもったいない」 那覇市松山

 那覇市松山にある築64年の木造平屋の建物が、土地の賃貸借契約終了に伴い5月末までに立ち退かなければならなくなっている。建物にはスギなど良質な木材が使われており、沖縄の建物に詳しい1級建築士の福村俊治さんは「取り壊して処分するのはもったいない」と話す。家主の柳生徹夫さん(78)も「思い入れのある建物。移築するなどして利活用してほしい」と引き取り先を探している。

 建物は約16年前に亡くなった柳生さんの父、四郎さんが住宅として建てた約26坪の木造平屋。学生時代を過ごしたほか、四郎さんの一周忌の後に改装して小料理屋を営んできたこともあるという。

 建物には良質な木材が使われ、シロアリなどの被害も見られない。柳生さんは取り壊されてそのまま廃棄されるのは惜しいと、人づてに福村さんへ相談を持ちかけたという。

 良好に保たれている建物の状態を見た福村さんは「こだわりを持って建てられ、その後も手入れが行き届いていたことが分かる。十分に移築して活用できる」と指摘する。その上で「沖縄ではスクラップ・アンド・ビルドが繰り返され、古い木造の建物はほとんどなくなってしまった。移築などにつなげ、建物を大切に管理することを考える一つの契機になれば」と期待した。

 柳生さんも「移築などで活用してくれる人がいればぜひお譲りしたい」と話している。問い合わせは福村さん、電話090(9568)4430。(社会部・島袋晋作)

 

(写図説明)建物への思い出などを語りながら「移築などに活用してほしい」と呼びかける柳生徹夫さん(左)と福村俊治さん=12日、那覇市松山

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