特需の反動減を経て2023年度は好業績が続出?2022年度食品スーパー決算を振り返り

2023年の食品スーパー(SM)の業績はおおむね好調に推移した。SM3団体によると、既存店、全店ともに増収となった。売上上位企業の23年度第3四半期(3Q)、第2四半期(2Q)業績も増収増益基調にある。通期業績予想を上方修正した企業も多く、23年度のSMは好決算が見込まれる。

SM3団体の2023年度全店売上高3.7%増と好調な伸び

全国スーパーマーケット協会など3団体がまとめたSMの2023年の全店売上高は前年比3.7%増の12兆2335億円だった。

既存店前年比は2.6%増。コロナ特需のあった20年以降、2年連続で前年割れ(21年1.3%減、22年0.5%減)となっていたが、23年は2月を除いて、月次ベースでも前年同月実績を上回るなど好調に推移したといえる。

23年度、SMの3Q(一部2Q)の業績を見ていくと、マルエツ(東京都)、カスミ(茨城県)、マックスバリュ関東(東京都)の首都圏SM3社を束ねるユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス(東京都:以下、U.S.M.H)を除けば、売上上位企業は増収増益基調にある。

なかでも、オーケー(神奈川県)、ヤオコー(埼玉県)、ベルク(埼玉県)は売上を大きく伸ばしている。オーケーは2Q売上高が2ケタ増収(12.6%増)の3046億円。2Qでは2922億円のアークス(北海道)を上回っており、公表数値のない西友(東京都)を除き、オーケーの売上を上回るのは4001億円のライフコーポレーション(大阪府、以下ライフ)、3526億円のU.S.M.Hのみになった。

ヤオコーの3Qは9.1%増の4060億円(単体)。既存店の来店客数が3.4%増と、多くのSMが客数確保に苦しむなかで、強力な支持を得ている。ちなみに、ライフは0.3%増だ。ベルクは13.4%増の2582億円(連結)。既存店売上高は10.5%増、同客数も5.5%増とヤオコーを上回る伸びを示している。

3Q決算発表時に通期連結業績予想を下方修正したU.S.M.Hは、3Q売上高が前年同期を割り込んだ(0.2%減)。要因はカスミが全店4.9%減、既存店6.4%減と苦戦したことが大きい。

間もなく、2月決算、3月決算企業の本決算が発表になる。

23年度中に通期業績予想を修正したSMは多い。売上高2000億円超では、23年4月にセントラルスクエアららぽーと門真店をオープンし、近畿圏・首都圏を合わせた店舗数が300店舗を突破したライフをはじめ、関西フードマーケット(兵庫県)、ベルク、アクシアル リテイリング(新潟県)、大黒天物産(岡山県)、23年12月イオンの連結子会社となったいなげや(東京都)が上方修正した。

24年3月、フジ(広島県)、傘下の総合スーパー(GMS)フジ・リテイリング(愛媛県)とSMマックスバリュ西日本(広島県)の3社が合併し、中四国最大のリージョナル・チェーンとなる新生フジ(広島県)の決算(業績予想では営業収益7959億円)はどうなるか。

上場企業ではないため、決算の公表はしばらく先になるが、23年10月銀座マロニエゲート2に銀座店をオープンしたオーケー、そして23年6月博多ヨドバシ店、8月仙台ヨドバシ店、11月名古屋みなと店と出店エリアを拡大したロピア(神奈川県)がどこまで売上を伸ばしているか気になるところだ。

ヤオコーは増収増益を続けられるか

各社の決算発表を待つ前に、22年度決算での売上ランキングはどうなっていたのか、ここで振り返っておこう。

22年度決算では、多くの企業に増収をもたらしたコロナ特需をへて、社会が日常を取り戻し始め、SM業界は各社の実力がそのまま業績に直結するフェーズに入ってきた。

売上高ランキングで首位となったのはライフだ。

首都圏と近畿圏で11店舗を新規出店するとともに、近畿圏を中心に4店舗で大型改装を実施した。23年2月期の既存店売上高は0.1%減とほぼ前期並みを維持し、客単価は1.2%増と堅調に推移した。23年2月期は新収益認識基準適用のため営業収益の前期との比較はないが、旧基準ベースでは営業収益は2.3%増となっており、実質的に増収減益決算だった。

2位はU.S.M.Hだ。カスミが営業収益1.1%増と健闘したが、売上規模が最も大きいマルエツ、マックスバリュ関東が減収となった。当期純利益は75.1%減の13億円と大きく落ち込んだ。

3位は米ウォルマート傘下から事実上離れた西友。従来のEDLP(エブリデー・ロー・プライス)を軸とした販売手法を継続しつつ、生鮮食品のPB(プライベートブランド)開発や個店での地域対応なども推進している。同社株式の20%を保有していた楽天グループが米投資会社のKKRへ売却、12月には楽天西友ネットスーパーを楽天グループが完全子会社化することを発表するなど、両社の関係に変化が生じているが、戦略的協業関係に変更はないとしている。

図表●2022年度SM企業売上高ランキング(トップ20社)

4位のアークスは、事業会社が緩やかに連帯する企業グループ。23年2月期から新収益認識基準を適用しているが、ラルズ(北海道)、ユニバース(青森県)、ベルジョイス(岩手県)、道北アークス(北海道)、福原(北海道)が新収益認識基準ベースで増収となっている。

5位以下で、成長基調を維持し続けるのが、5位のオーケー、7位のヤオコーだ。オーケーの23年3月期は増収減益だったが、首都圏郊外を中心に積極出店を継続している。ヤオコーは業界全体が減益基調となるなか、34期連続となる増収増益を達成。その実力を見せつけた。

売上高ランキングでは18位だが、前年から順位を2つ上げたのが、2ケタの増収増益を果たしたロピア。地盤とする関東のほか、東海、関西、さらには台湾へと事業を拡大した。

24年度はオーケーが関西1号店となる高井田店(東大阪市)をオープンする。ロピアを展開するOICグループは、24年8月から25年3月にかけて、イトーヨーカドー7店舗を事業承継。U.S.M.Hは24年11月をメドに、イオンの連結子会社となったいなげやを加えた4社の事業会社で売上高1兆円をめざすとしており、近々、SM業界の売上高ランキングにも大きな変化が現れてきそうだ。

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