SMAP時代から繋がり続けた鈴木おさむとの深い縁 稲垣吾郎、草彅剛、香取慎吾『ななにー』で振り返る思い出

いよいよ新年度のスタート。本日4月1日から新生活が始まるという人も多いのではないだろうか。よく「春は別れと出会いの季節」と言われるが、稲垣吾郎、草彅剛、香取慎吾の3人にも、ひとつの区切りが訪れていた。

3月31日放送の『ななにー 地下ABEMA』#19(ABEMA)では、3月末をもって引退を宣言していた放送作家の鈴木おさむとのお別れ会がオンエアされた。鈴木といえば『森田一義アワー 笑っていいとも!』『めちゃ×2イケてるッ!』(ともにフジテレビ系)や『いきなり!黄金伝説。』(テレビ朝日系)など、人気番組を数多く手掛けた人物として広く知られているが、なかでもSMAPとは20数年をともに走り抜けた仲だった。

長年愛された『SMAP×SMAP』(フジテレビ系)を担当してきたことはもちろん、SMAPのコンサートでコントを披露するバラエティ部分も担当。本番前日の深夜までネタが決まらず、ヒリヒリとした時間を過ごしたこともあったそう。

■3人の分岐点には欠かせなかった鈴木おさむの存在

また、稲垣とは『Goro’s Bar』『ゴロウ・デラックス』(ともにTBS系)、草彅とは『『ぷっ』すま』(テレビ朝日系)や『チョナン・カン』(フジテレビ系)、そして香取とは『香取慎吾の特上!天声慎吾』(日本テレビ系)や『SmaSTATION!!』(テレビ朝日系)、『おじゃMAP!!』(フジテレビ系)など彼らのキャリアを振り返るうえで欠かすことのできない番組を生み出してきたことでも知られる。

さらに、新しい地図を広げて以降も繋がりは続き、3月24日にオンエアされた#18では、2017年に彼らの新たな一歩を象徴した72時間の生配信番組『72時間ホンネテレビ』(ABEMA)を振り返る場面も。なかなかキャスティングが決まらず、生配信中に「決まった人もいるし、決まらなくなった人もいる」という今だから話せる壮絶な舞台裏の状況が明かされた。

特に「いろんなアーティストとやれたらいいね」と鈴木が企画した72曲ライブも、結果的には3人で歌わなければならなかったこと。そしてゲストの出演が決まるたびにみんなで拍手をして喜び、ステージで3人が涙を流していた裏でスタッフも全員泣いていたとも。それだけ厳しい状況だったことを思うと、再び地上波でのレギュラー番組『ワルイコあつまれ』(NHK Eテレ)でタッグを組んでいることにも胸に迫るものがある。

だが、3人が着実に新たなキャリアを築いていく一方で、鈴木自身は「2016年の年末の時点で、放送作家としての自分は死んだのかなって思ってるところがあって」と、苦しい日々を過ごしていたという。以前のように120%で動けていない自分に「このままやってていいのかな」と迷い、華麗にシフトチェンジしていった3人に比べて「亡霊で生きてる感じがした」とこぼす。

そんな鈴木の言葉を受けて、香取は「同じように思う瞬間が言われてみればあった」「けど、そこでいろんな人から“顔上げて”としてもらった感じはする」と話す。その瞳が赤く潤んで見えたのは、きっとお酒のせいだけではないように感じた。SMAPとしての多忙な時期はもちろん、新しい地図として必死な歩みも、すぐ近くで見守ってきた。そんな鈴木の放送作家人生の最終日に、彼らと飲み交わす番組が放送されるというのも、あらためて縁深さを感じずにはいられない。

■SMAPを作ったひとりであり、同じメンバー感があった

今回のお別れ会には「この世界で初めて電話番号を交換した芸能人」という濱口優(よゐこ)や、数々のバラエティ番組を手掛けてきたタカアンドトシも駆けつけて思い出話に花が咲いたのだが、そこに現在週3日ペースで鈴木と飲んでいるという陣(THE RAMPAGE)が入ったことで、“かつて”の話から“今”の鈴木にスポットライトが当たる。

鈴木の自宅で飲んだり、家族旅行に同行したりと、プライベートでも親交の深い陣の口からは、長年仕事をともにしてきた3人や濱口、タカアンドトシが驚くエピソードが次々に明かされる。さらに、放送作家を引退後は「若手のベンチャー起業家たちを応援していきたい」というビジョンを掲げる鈴木の新たな一面も。

たまらず稲垣が「僕らの知らない顔があるよね。なんか意識してた? SMAPの前だとあまり……」と問い詰めると、鈴木は額を拭いながら「それはもう戦場じゃない、あんなとこ。戦場ですよ、ずーっと!」と答える。その言葉に、香取も何やら思うところがありそうな表情を浮かべ、さらに稲垣が「飲み友だちっていないよね、元メンバーのなかに」と続けると「ヤダもん、飲むのなんか!」とバッサリ。

そして「そんなんじゃないじゃん!」と言う鈴木に、「呼ばれたらヤだもんね」「“いるな“と思ったら、ニヤッと笑うぐらい」と香取が言葉を補足すると「そう」と頷く。そんなやり取りを草彅はニコニコと微笑み、稲垣は「だから同じメンバー感っていうのがあったんだ、友だちと言うよりもね」と納得する様子が、SMAPの関係性を語る時のそれと重なって見えた。

演じる側の3人とそれをイチから生み出す鈴木のタッグは、オフを楽しむ友だちとはまた違った、オンの戦場で背中を預け合ってきた戦友だったのだろう。「僕らが表現してたことって(悩むこともあったけど)これをイチで生み出してるおさむさんはもっと大変なことだなと思いながら僕はいつもやってた」と草彅。

そこに稲垣が「シリアスな芝居をしていても、バラエティとかコントとかで、『スマスマ』(『SMAP×SMAP』)で学んだことって本当に多くて」と続けると、香取も「“コントで勉強できたんで”とか言うと“いやいやコントとは……”とか結構言われるの。それがよくわからないくらい、そこはすごく大きいよ、僕らは」と、いかに鈴木との日々が彼らの基礎力となっているかをしみじみと語る。そして「おさむさんだけじゃなくて、いっぱいそういう人いるんだけど、間違いなくSMAPを作ったひとりですから。本当に感謝しています」と締めくくった。

■時計の針を戻して、“あの時”叶わなかった乾杯を

また、最後に「ありがとうの乾杯をしよう」となった時、鈴木が「一個いいですか? 乾杯したいことがある」と切り出す流れも印象的だった。それは『SMAP×SMAP』の打ち上げで叶わなかったことだったという。

長年続いた番組の打ち上げにも関わらず、残念ながらメンバーの参加は叶わず、スタッフだけで行われたそう。だが、「やっぱりスタッフさんって絶対に(メンバーと)乾杯したかったと思うんですけど、できていないんで、僕が代表してその時の『SMAP×SMAP』のスタッフに対してここで乾杯したい」と提案したのだ。

話を聞くやいなや、すぐにジョッキに手を掛けた草彅に「OK」と鈴木の思いを察した様子の香取、そして思わず「そうだったんだ」と驚きの声をこぼす稲垣。三人三様のリアクションからも、当時がいかに混乱した状態だったのか、想像することができた。今年2月13日に逝去した黒木彰一プロデューサーの名前も挙げつつ、“あの時“に時を戻すようにして行われた『SMAP×SMAP』のスタッフへの乾杯。それは、2016年末から“亡霊”となってしまっていた鈴木の時計を再び動かす最大のスイッチになるようにも感じた。

「僕のなかではSMAPと仕事をしてきた20数年が誇りなので、それを背負って絶対に成功します」と新たな目標に向かう宣言をした鈴木。そんな戦友を見送る側となった香取も、改めて「僕はまだまだここでやっていくつもり」と継続していく覚悟を見せる。新生活をスタートする人も、これまでと同じ場所で踏ん張り続ける人も、誰もが気持ちを新たにする春。それぞれが自分の信じた道を進んだ先に、またお互いの健闘を称え合う時間があってほしいと願うばかりだ。

(文=佐藤結衣)

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