【4月1日付編集日記】開成山の桜

 桜の名所には誕生の逸話が付きもの。現在も花見の名所として知られる東京・飛鳥山は、庶民が飲食を楽しみながら桜をめでられる場所がなかったことから、徳川吉宗が造成を命じた

 ▼明治時代初期に郡山市のシンボルでもある開成山公園に桜を植えたのは、開拓者たちだった。リーダーの阿部茂兵衛は「桜は孫子の時代のもの。かならず名所としてにぎわいを見せる」と話すなど、後世に残すための植樹との思いが強かったようだ(安積開拓120年記念誌「先人の夢に逢う」)

 ▼公園は、かつて二本松藩の狩り場があったところ。競馬場があったころは、開催ごとに数万人の観光客が訪れた。50年前には、国内初の本格野外音楽イベント「ワンステップ・フェスティバル」の会場にもなった

 ▼開成山公園はきょう、再整備を終えて、新しく生まれ変わる。カフェやガーデニング雑貨の店、猛暑や雨天に備えた「大屋根」、芝生広場などがお目見えし、洗練された印象となった。桜が見頃を迎える頃には、大勢の市民でにぎわうことだろう

 ▼さまざまの事思ひ出す桜かな(松尾芭蕉)。桜も公園の変遷に思いをはせつつ、いつまでも市民の憩いの場であり続けるのを願っているに違いない。

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