SHAUN、「Way Back Home」の世界ヒットを経て初の日本ショーケース開催へ 無二の一体感を生んだ一夜

世界的にヒットした「Way Back Home」で知られる韓国出身のDJ/シンガーソングライター/プロデューサーのSHAUNが、3月26日に東京・SPACE ODDにて初の日本でのショーケースを開催した。機材に囲まれたステージに立つ印象がある彼だが、この日はバンドをしたがえて歌とギター演奏を披露。会場を埋め尽くしたファンたちとの一体感を存分に楽しんだ。

「本日のアーティストは物忘れがひどく、誤魔化すために水を飲んだり、急に静かになることもあります。そんな時は、皆さまの大きな歓声と拍手で励ましてあげてください!」というユニークなアナウンスの直後に轟音が鳴り響き、ライブがスタート。まずは軽快なリズムとともにバンドメンバーを紹介していく。そして場内の熱気が最高潮に達した瞬間、ギターを抱えたSHAUNがゆっくりと舞台の中央に現れた。

記念すべきオープニングナンバーは「Lunisolar」。レコーディングバージョンは穏やかなトーンのEDMミュージックだったが、今回はアレンジを変えてハードロック調に。レスポール特有の音色を交えながら伸びやかに歌い、早くも自身の世界観を強烈にアピールする。

「ハロー、こんにちは、東京!」と叫んで始まった「Shooting Star」は、“炭酸たっぷりのドリンクを飲むような清涼感のあるサウンド”を意識して作ったそうだが、このような狙いは生の演奏でより明確に聴き手に伝わったに違いない。

ミディアムテンポの落ち着いたポップス「Easy」を歌い終えたSHAUNは、ここでようやくオーディエンスに向けて挨拶。「私にとって大きな意味があるステージです。この瞬間を誰よりも楽しみに待っていました」と日本語で話すと、会場のあちこちから拍手が起きた。

トロピカルなムードが漂う「Answer」、「For a While (Japanese Ver.)」とレアなナンバーが続き、オーディエンスも満足げな笑みを浮かべるなか、再び日本語で喋り始めた彼は、「ここまで流暢に日本語を話せるのは、モニターの下に置いてあるハングルで読み方を書いたカンニングペーパーのおかげ」と告白。現在日本語を一生懸命勉強しているとのことで、次の来日ライブではより充実した内容が期待できそうだ。

クールなメロディと温かい音色で夢を表現した「Dream」、静と動の対比が鮮やかな「Road」と、独創的なソングライティングが光る楽曲をじっくりと聴かせたあとは、異国情緒溢れる「Don't Let Me Know」で卓越したアレンジ力を示し、「So Right」では熱いギタープレイを披露。そして「Terminal (Japanese Ver.)」ではボーカリストとしての存在感を際立させるーーというふうに、わずか数曲で多彩な面を見せる姿に感心した人は多かっただろう。

ショーケースは早くも終盤へ。リリカルなアコースティックポップ「That Summer」でリラックスさせたかと思いきや、再び「Traveler」で場内を盛り上げ、間髪を入れずに「Bad Habits (Japanese Ver.)」でフロアとの一体感を生み出す。ライブでのこうした理想的な流れをスムーズに進めるあたりも、SHAUNのよさだと言えよう。

本編のラストに選ばれたのは「Nocturnal」と「Way Back Home (Japanese Ver.)」。前者のゆったりとしたサウンドに合わせてフロアではスマートフォンによる光が揺れ始め、センチメンタルなギターソロに導かれるように始まった後者でもそれが止むことはなかった。この2曲でアーティストとファンが同じ場所に一緒にいる喜びを噛み締めながら、ライブは幕を閉じた。

約1時間半にわたって展開された今回のショーケースは、彼の多彩な魅力を堪能できるものだった。優れたコンポーザーであるのはもちろん、パフォーマーとしての技量も十分にあり、さらにアンコールで披露したミディアムテンポのバラード「Closed Ending」と重量感のあるハードロック「Swan Song」ではジャズの奏法を取り入れるなど、演奏家としてもポテンシャルが高い。

真のマルチアーティストと言えるSHAUNが今後日本でどのようなスタイルで勝負するのかが楽しみだ。まずは4月にリリースされる予定の日本EPを楽しみに待ちたいと思う。

(文=まつもとたくお)

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