愛さずにはいられない! 宇宙世紀『ガンダム』に登場する“クセ強の敵役”たち

『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』(バンダイナムコフィルムワークス)

『ガンダム』シリーズといえば、アムロ・レイやカミーユ・ビダンなど、魅力的な主人公がたくさん登場する。そして、それと同じかそれ以上に敵役も魅力的かつ個性的で、彼らの活躍によって作品もより面白いものとなっている。ゆえに、ファンのなかにはジオン軍やティターンズなど主人公と敵対する組織のほうが好きだという人も少なくなく、これも『ガンダム』シリーズの面白い特徴と言えるだろう。

そこで今回は、愛さずにはいられない『ガンダム』シリーズのクセの強い敵役たちを宇宙世紀から厳選して紹介したい。

■赤い鼻が特徴的な特殊工作員リーダー「アカハナ」

1人目は、赤く大きな鼻が特徴的な「アカハナ」を紹介する。

アカハナは、『機動戦士ガンダム』第30話「小さな防衛線」に登場したジオン軍少尉、マッドアングラー隊のリーダー格の人物だ。作中では、特殊工作員らしく黒茶色の潜水服を着ており、その特徴的な赤鼻を指してかコードネーム「アカハナ」と呼ばれていた。

『ガンダム』シリーズではシャア・アズナブルの“赤い彗星”や、ランバ・ラルの“青い巨星”など、コードネームやあだ名で呼ばれるキャラは多く登場するが、本名不明のコードネームのみのキャラは珍しい。

爆発物に精通しているアカハナは、ジャブロー潜入作戦においてシャアの指揮下に入り、部下たちを率いて連邦軍の生産工場や格納庫に爆弾を仕掛ける。しかし、カツら子どもたち、そしてホワイトベースクルーの活躍によって作戦は失敗に終わる。さらには撤退時、アムロの乗るガンダムの猛烈な追撃を受け、部下共々戦死してしまうのだ。

ちなみに、彼がこの作戦時乗っていたアッガイは、茶色で丸っこい見た目をしており、近年では“萌えMS”として再び脚光を浴びている。

このように比較的認知度が高いアカハナだが、登場時間も短く、実は作中で目立った活躍や名言もとくに残していない。しかし、その特徴的な見た目と絶妙なコードネーム、さらには哀愁ある佇まいでファンの印象に残り、愛さずにはいられない敵役となっている。

■独自の戦闘美学を持つ金髪リーゼント「ヤザン・ゲーブル」

続編『機動戦士Zガンダム』に登場した「ヤザン・ゲーブル」も、実にクセの強い敵役だった。

ヤザンは、金髪のリーゼントに浅黒い肌、胸元には亀のタトゥーの入ったティターンズ所属の強面MSパイロットだ。その能力は非常に優秀で、作中ではギャプランやハンブラビに乗り、ニュータイプのパイロットたちとも互角以上にわたり合っていた。そのことからファンの間では、“オールドタイプ最強”と推す人も多い。

またヤザンは、味方から“野獣”と呼ばれるほどの戦闘狂であり、たびたび上官と衝突、さらにはその上官を謀殺してしまう冷酷な一面もある。しかし、その衝突は彼なりの戦闘美学によるもので、コロニー落としや毒ガス攻撃などの非人道的な作戦に対しては、明らかに嫌悪感を示していた。

第26話「ジオンの亡霊」では、新平であるアドル・ゼノの股間を鷲掴みにし「縮こまっとるぞぉ! しっかりせんか!」と、彼なりの豪快なやり方で出撃前の緊張をほぐすなど兄貴分な一面を見せている。さらには仲間の死に激昂したり、信頼する仲間にはしっかりと敬意を示すなど、ただの戦闘狂ではないところがヤザンの魅力であろう。

ヤザンは『機動戦士Zガンダム』の激しい最終戦でも生き延び、『機動戦士ガンダムZZ』でも再登場している。アーガマからZガンダムを盗み出すことをジュドーたちにけしかけたり、ハンドメイドのモビルワーカー・ゲゼで暴れたりと、続編ではコミカルな部分が強調されていたが、それもまた彼の魅力の1つとなっている。

■親を亡くした子どもたちと孤島で暮らす元軍人「ククルス・ドアン」

最後は、武骨で寡黙な元軍人「ククルス・ドアン」を紹介する。

ククルス・ドアンは『機動戦士ガンダム』第15話「ククルス・ドアンの島」、そして2022年のリメイク作品『機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島』に登場する愛すべき敵役だ。両作品の基本設定は同じだが違いも多いので、今回はリメイク版をベースに紹介していきたい。

ドアンは、ジオンの精鋭部隊であるサザンクロス隊の元隊長だ。明確な理由は語られていないが、彼自身の戦闘により民間人が犠牲になり、そのことが一因となってジオン軍を脱走したと言われている。

脱走後は無人島・通称“ククルス・ドアンの島”に、戦争孤児20人とともに自給自足の生活を送り、島に訪れる者がいれば脱走時に使ったザクIIに乗り、ことごとく退けていた。

ジオン軍にいたときは、シャアと並ぶほど名の知れた凄腕のエースパイロットだったドアン。作中ではアムロのガンダムを再起不能に追い込み、さらには島に攻めてきたサザンクロス隊2名も返り討ちにするほど、卓越したMS操縦技術を見せている。

また、彼が乗っていた少し面長でアンバランスな見た目のザクIIも印象的だった。この見た目から通称“ドアンザク”と言われており、リメイク作品でもこのデザインは引き継がれている。孤島で物資が不足するなか、倒したモビルスーツの部品を再利用しているという設定が追加され、そのアンバランスな見た目も歴戦を感じさせるいい味となっていた。

ラストで、アムロはドアンに対して「あなたの体に染み付いている戦争の匂いが、戦いを引き寄せるんじゃないでしょうか?」と言い、その根源であるザクを海中に投棄する。そのアムロの行為に感謝するドアン。島のその後は分からないが、戦いから離れ子どもたちと一緒に穏やかな生活を送っていてほしいものだ。

今回は、愛さずにはいられない『ガンダム』シリーズのクセの強い敵役たちを紹介してきた。紹介したキャラは、本編以外にもスピンオフ作品である漫画、小説、ゲームにも登場し、ククルス・ドアンに至っては40年以上の時を経て、彼の登場回である話数がそのままリメイクの劇場作品にまでなっていた。

出番こそ少ない人物もいるが、いずれのキャラもとても印象的で、これからも人々に愛され続ける敵役たちだと言えるだろう。

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