【ライトノベル最新動向】『狼と香辛料』『声優ラジオのウラオモテ』などアニメ化作品の新刊が登場

4月は新作アニメがスタートする月。発売されるライトノベルにもアニメ化される作品や、アニメ化が決まった作品が並んでいて放送を見た人の目を引きそうだ。

4月10日に発売の支倉凍砂『新説 狼と香辛料 狼と羊皮紙X』(電撃文庫)もそんな1冊。2006年から始まったシリーズは、行商人のロレンスがホロという名の少女の姿をした狼と出会い旅をするストーリーの中に、商業や経済といった要素が盛り込まれて、勇者の戦いとは違った面白さをファンタジーに与えた。すぐに評判になって、2008年と2009年に2期にわたってアニメ化もされた。

原作の方はその後も長く続いていて、ロレンスとホロの間に生まれたミューリという娘の世代に突入。最新刊では、聖職者を目指す青年コルとミューリが旅を続ける中で、羊の化身・イレニアが投獄されたという方を聞いて救出に向かう。4月1日からスタートのアニメ『狼と香辛料 MERCHANT MEETS THE WISE WOLF』は、こうした続きのストーリーではなく、原作を最初から描き直していくもの。前と同じ福山潤と小清水亜美が演じるロレンスとホロが、どのような姿を見せてくれるかに注目が集まる。

4月10日発売の二月公『声優ラジオのウラオモテDJCD』(電撃文庫)も、4月10日にTVアニメ『声優ラジオのウラオモテ』の放送が始まるシリーズの最新刊。歌種やすみという名の声優であることを隠して高校に通っている佐藤由美子がラジオ番組で共演することになった声優の夕暮夕陽が、実は同じ高校に通う渡辺千佳だったから驚いた。学校で口論したばかりの2人だけにラジオ番組も険悪な雰囲気で始まったが、交流を重ねる中で仕事や学校に関する悩みを乗り越え、共に成長していく。

そんなシリーズの最新刊は一種のスピンオフで、歌種やすみのマネジャーを務める加賀崎りんごや放送作家の朝加美玲に関するエピソードが登場して、物語の世界を広げてくれそう。アニメの方は2020年に放送されたラジオ番組で歌種すみを演じた伊藤美来、夕暮夕陽を演じた豊田萌絵がそのまま起用され、番組のファンにも馴染みがある演技を聞かせてくれそうだ。

4月17日発売の古宮九時『Unnamed Memory -after the end-IV』(電撃の新文芸)は、4月9日からTVアニメがスタートする「Unnamed Memory」シリーズの最新刊で、かけられた呪いを解く方法を探す王子のオスカーと魔女ティナーシャの冒険が続く。アニメの方はオスカーを中島ヨシキ、ティナーシャを種﨑敦美が演じる。多彩な演技を見せる種﨑がどのような声を聞かせてくれるかに興味が向かう。

同じく4月17日発売のロケット商会『勇者刑に処す 懲罰勇者9004隊刑務記録VI』(電撃の新文芸)もアニメ化が決まっており、今から先取りして読んでおくのも良さそう。4月25日発売の夢見里龍『後宮食医の薬膳帖3 廃姫は毒を喰らいて薬となす』(メディアワークス文庫)もアニメ化が決定。後宮を舞台にした作品が『薬屋のひとりごと』の人気で盛り上がる中、市井の薬屋ではなく先帝の廃姫が毒や薬の知識で食医として仕事に臨むシリーズだ。

タイトルの長さで内容への関心を引く作品も続々と登場。4月14日発売の天宮暁『ハズレギフト「下限突破」で俺はゼロ以下のステータスで最強を目指す~弟が授かった「上限突破」より俺のギフトの方がどう考えてもヤバすぎる件~』(GA文庫)は、タイトル通りにマイナスからのスタートという逆境を利点に変えて立ち上がる少年の無双ぶりが見られそう。3月29日発売の菊池快晴『怠惰な悪辱貴族に転生した俺、シナリオをぶっ壊したら規格外の魔力で最凶になった』(スニーカー文庫)も悪役貴族としての破滅エンド回避を目指す男の逆転劇を楽しめる。

4月19日発売の下等妙人『ほんわか魔女を目指していたら、史上最強の杖に選ばれました。なんで!?』(ファンタジア文庫)もタイトル通りに、友達作りを目指して入った魔法学園で最強の証とも言える聖杖に選ばれてしまった少女の物語。すごい聖杖の力でお菓子を出してしまうヒロインのほんわかした振る舞いが楽しい作品だ。

タイトルが妙に気になる作品が、4月18日発売の川岸殴魚『シスターと触手 邪眼の聖女と不適切な魔女』(ガガが文庫)。シスターで触手とくれば浮かぶのはインモラルなビジョンだが、ストーリーも実際に触手召喚のスキルに目覚めたシオンが、シスターの命じるままに触手を太くし大きくして自分を冤罪に陥れた世界に挑む。いったい何が起こるのか?

4月25日発売のしめさば『サキュバス四十八手2』(ダッシュエックス文庫)もサキュバスのお姫様・スズカと共に、世界を救う「サキュバス四十八手」なる儀式を完遂することに挑み続けるアベルの物語の第2弾。今回も相当にヤバい儀式が繰り広げられそうだ。

芝村裕吏の小説でイラストがしずまよしのりという「マージナル・オペレーション」シリーズのコンビによる『英雄その後のセカンドライフ しかし子供に料理を振る舞うのは楽しいかもな』(MF文庫J)が4月25日に登場。海軍提督として大活躍した英雄が手違いによってエルフの幼年学校に入ってしまい、そこで子供たちの料理係になるという設定に興味をそそられる。

設定面では、4月15日発売の喜咲冬子『千華宮のモブ妃 崖っぷち漫画家、転生先で新作を描く』(富士見L文庫)も面白そうな1冊。アラサー漫画家が事故によって漫画の中に3コマしか出ないモブ妃に転生してしまい、その影響でヒロイン不在となった世界で起こる事件に同人誌を描くことで挑む。中華風の宮廷で漫画はどのように受け入れられるのかが気になる。

新人では、ノベル大賞2023を受賞した栢山シキ『レディ・ファントムと灰色の夢』(集英社オレンジ文庫)が4月18日に発売。幽霊が見える伯爵令嬢が転落死した親友の死の真相に挑む。4月25日発売のにのまえあきら『無貌の君へ、白紙の僕より』(メディアワークス文庫)は第30回電撃小説大賞の選考委員奨励賞受賞作。高校生の少年が、人を描くことを「復讐」という少女のモデルになって共に活動する中で、様々な悩みや苦しみを乗り越えていく青春ラブストーリーだ。

(文=タニグチリウイチ)

© 株式会社blueprint