【4月2日付社説】新社会人の君へ/柔軟な発想で社会に新風を

 何事にも臆することなく挑戦し、長年にわたり社会に漂う閉塞(へいそく)感を打ち破る力になってほしい。

 日本経済はいま、大きな転換期を迎えている。1990年代前半のバブル崩壊以降、物価や賃金が上がらない状況が続いてきた。中国や韓国、インドなど周辺のアジア諸国が着実に経済成長を遂げた一方、日本経済の成長を実感できる機会は少なかった。

 しかし最近はエネルギー価格の上昇などで物価高が急速に進んでいる。原材料費の高騰分を販売価格に転嫁し、賃上げにも配慮する企業が増え始めた。企業業績の拡大とデフレ脱却の期待から、日経平均株価は先月、史上初めて4万円を超え、終値の最高値は更新される日が増えている。

 今春の新卒の初任給を大幅に引き上げた企業も多い。中小企業が大半の地方では、業績改善による賃上げは限定的だが、その機運は広がりつつある。停滞の時代が終わりを迎えようとするなか、皆さんは社会人生活の第一歩を踏み出した。明るい気持ちで前向きに仕事に向き合ってもらいたい。

 昨春の新入社員に「社会人として何を大切にしたいか」と尋ねた民間の調査結果がある。「必要なスキルや知識を身に付ける」「社会人としてのルール・マナーを身に付ける」と例年同様の項目が上位を占めた一方、「新しい発想や行動で職場に刺激を与えること」の選択率が過去最高になった。

 先輩社員と堅実に仕事を進めたいとの意識とともに、若手だからと遠慮せず、自発的に行動しようという若者が増えているようだ。

 日々進化を遂げる人工知能(AI)の活用など、経済環境は大きく変わっており、企業や社会は対応が迫られている。人口減少に伴う労働力不足のなか、企業などは効率性、生産性をどう高めていくかが課題だ。皆さんは生まれた時からデジタルが身近な「Z世代」である。柔軟で新しい発想力により磨きをかけ、社会に新風を吹き込むことを期待したい。

 皆さんは新型コロナウイルス禍の真っただ中で学生生活を送ってきた。学業以外にサークル活動や旅行、アルバイトなど、時間の制約が少ない学生の間に取り組めるさまざまな経験が思うようにできなかったという人もいるだろう。

 働き方改革で労働時間の短縮、特別休暇の取得推進などが進み、以前よりプライベートの時間を確保できるようになっている。

 人生100年の時代にあり、皆さんの長い旅はまだ始まったばかりだ。仕事以外にも多くのことに挑み、人生の糧としてほしい。

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