シリアのイラン大使館領事部に空爆、死者多数 イスラエルを非難

ジェレミー・ボウエン国際編集長(イスラエル北部)、デイヴィッド・グリテン(ロンドン)、BBCニュース

イランの革命防衛隊は1日、シリアの首都ダマスカスにあるイラン大使館の領事部がイスラエルによって攻撃され、将官7人が死亡したと発表した。

シリア国防省によると、イスラエルの航空機が1日午後5時ごろ、同国が占領するゴラン高原方面からイラン領事部の建物を攻撃した。領事部は大使館の隣で、ダマスカス西部メゼ地区の高速道路沿いにある。

発射されたミサイルの一部はシリアの防空システムが撃ち落としたが、他のミサイルが「建物全体を破壊し、中にいた全員が死傷した」という。

現場ではがれきの中から遺体を回収し、負傷者を救出する作業が進められているという。同省は犠牲者の人数や身元は明らかにしていない。

報道などでは、精鋭コッズ部隊の上級司令官モハマド・レザ・ザヘディ准将と、その副官のモハマド・ハディ・ハジ=ラヒミ准将の名前が死者に含まれているとされる。

イラン領事部の建物は攻撃で破壊された。イランとシリアの両政府はこの攻撃を非難した。

イスラエル軍は、外国メディアの報道にはコメントしないとした。

イスラエルは近年、イランや革命防衛隊から武器や資金、訓練などを提供されている武装グループとつながりがっているとするシリアの標的を何百回も攻撃していることを認めている。

そうしたイスラエルの攻撃は、昨年10月にガザで戦争が始まってから強まっているとされる。イスラエル北部には、レバノンのイスラム教シーア派武装組織ヒズボラや、イランが支援する他のグループがレバノンやシリアから国境をまたいだ攻撃を実施しており、イスラエルはそれに対応しているとされる。

しかし、1日の攻撃が深刻な激化と受け止められるのは必至。

イスラエルは、イランとその協力国の決意を試すとともに、敵対する国々への圧力を真剣に強める姿勢を示していると思われる。

イスラエルは、イランとヒズボラがこれまで、一部で予想されていたほど強い攻勢に出てこなかったことに着目。今回、イランとヒズボラが反撃に出るかを見定めるとみられる。

何らかの反応は予想されるが、大勢が思うようなものにはならない可能性がある。ミサイル攻撃ではなく、ある種のサイバー攻撃もあり得る。

攻撃現場の写真や映像では、倒壊した数階建ての建物の残骸から煙と粉じんが立ち上っているのが見えた。隣のイラン大使館には大きな被害はなかったとみられる。

イランのホセイン・アクバリ駐シリア大使は、イスラエルのF-35戦闘機が「私の居住場所と大使館の領事部、イランの駐在武官を残忍に襲った」と述べた。また、外交官を含む5~7人が殺害されたと、イラン国営テレビに話した。

その後、革命防衛隊は将官7人が殺害されたとする声明を発表。司令官であり「幹部軍事顧問」のザヘディ氏とハジ=ラヒミ氏が死者に含まれているとした。

イランのメディアによると、ザヘディ氏は63歳。革命防衛隊で国外作戦を担当するコッズ部隊の幹部で、2008~2016年にレバノンとシリアで司令官を務めた。ハジ=ラヒミ氏はザヘディ氏の副官とされる。

ザヘディ氏は、イスラエルの長期にわたる暗殺活動によって殺害されたとみられるイラン人としては、最も有名な1人となった。

イギリスに拠点を置くNGO「シリア人権監視団」は、コッズ部隊の高官1人、イラン人顧問2人、革命防衛隊の隊員5人の計8人が殺害されたと報告した。同NGOはシリア国内のネットワークから情報を得ている。

シリアのファイサル・メクダド外相は、「この凶悪なテロ攻撃」を強く非難するとし、「罪のない多くの人々」が殺されたと言い添えた。

イラン外務省によれば、同国のホセイン・アミール=アブドラヒアン外相とシリアのメクダド外相が電話で協議した。アミール=アブドラヒアン氏は、今回の攻撃を「すべての国際的なおきてと条約への違反」だとし、「この行動の結果の責任は(イスラエルの)シオニスト政権にあると非難した」という。

同氏はまた、「国際社会による真剣な対応が必要だと強調した」という。

アメリカ政府の報道官は、ジョー・バイデン大統領が今回の攻撃の情報を承知していると述べた。

イスラエル軍報道官のダニエル・ハガリ少将は1日の記者会見で、イスラエル南部エイラートの海軍基地にドローン(無人機)によるものとみられる攻撃があったとし、「非常に深刻な事案」だと述べた。ドローンについては「イランが作り操作した」とした。

シリアのダマスカスと北部アレッポでは3月29日にも、イスラエルによるとみられる攻撃があった。シリア人権監視団は、この攻撃でシリア軍兵士38人とヒズボラのメンバー7人を含む計53人が殺害されたとした。

1月にもダマスカス西部メゼ地区でイスラエルによるものとされる攻撃があり、革命防衛隊の幹部5人とシリアの治安要員数人が殺害された。

イスラエルはこれまでに、イランの「軍事的定着」や、テロ組織に指定しているグループにイラン製の武器が輸送されていることに対抗するためとして、シリアで空爆を実施したことを認めている。

イランは、内戦中のシリアのバシャール・アル・アサド大統領の軍に「助言」するために革命防衛隊をシリアに派遣したとしている。だが、戦闘への参加や基地を設置は否定している。

(英語記事 Israel accused of deadly strike on Iranian consulate in Syria

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