ガザのアル・シファ病院、イスラエルの作戦で廃墟に 多数の遺体発見か

イスラエル軍が2週間にわたる作戦の末に撤収したパレスチナ自治区ガザ地区北部のアル・シファ病院は、主要医療施設のほとんどが廃墟と化した。イスラム組織ハマスが運営する保健当局は1日、数十人の遺体が見つかったと発表した。

現地住民らは、アル・シファ病院の周辺地域は壊滅状態だとしている。

イスラエル軍は、同病院での作戦で「テロリスト」200人を殺害し、900人超を拘束したと発表。拘束した人のうち500人以上はハマスや武装組織「イスラム聖戦(PIJ)」の関係者だとした。また、「病院全体」から武器と情報が見つかったとした。

イスラエル軍が引き揚げた後に公開された画像には、黒く焦げて壁に穴が開いた主要棟の近くを歩いたり、毛布に包まれた遺体を運んだりしているパレスチナ人らが写っていた。黒焦げの地面に遺体の一部が露出している写真もあった。

ガザ保健当局は、同病院が「全く機能していない」と説明。院内と周辺では数十体の遺体が見つかっており、中には腐敗しているものもあるとした。

医師の1人は、これまでに遺体20体以上が収容されたとし、一部は撤収するイスラエル軍の車両に押しつぶされたとAFP話した通信に話した。

ハマスが運営するガザの市民緊急サービスの広報担当は、イスラエル軍が病院の敷地をブルドーザーで掘り起こし、埋葬されていた遺体を掘り出したと述べた。

ハマス政府のメディア対応部門は、イスラエル軍がアル・シファ病院と周辺地域で400人のパレスチナ人を殺害したとした。女性医師とその息子の医師も殺されたとした。

一方、イスラエル軍のダニエル・ハガリ報道官は、同軍が「患者、医療スタッフ、周辺の民間人を一人も傷つけないよう特別な努力」をしたと主張。「院内に残っていた患者に医薬品と水を提供した」と述べた。

同軍はこれよりも前に、「病院全体から大量の武器や秘密情報の文書を発見し、テロリストと遭遇して接近戦となった。医療スタッフや患者に危害が及ばないようにした」と説明していた。

世界保健機関(WHO)は3月31日夜、アル・シファ病院で患者21人の患者が死亡したと発表。患者らはたびたび移動を強いられ、治療を受けられない状態に置かれていたとした。

同病院のアミラ・アル・サファディ医師は、集中治療室にいた16人ほどが移動後、治療を受けられずに死亡したとBBCのラジオ番組で話した。その3日後、イスラエル軍は医療スタッフに、遺体を外に埋めるよう言ったという。

患者のバラ・アル・シャウィシュさんは、イスラエル軍が「ごく少量の食べ物」だけ搬入を認めていたとロイター通信に証言。「治療も薬も何もなく、爆撃が24時間やまず、病院は大きく破壊された」と話した。

BBCはイスラエル軍にコメントを求めている。

ガザ市にあるガザ最大のアル・シファ病院は、3月17日夜にイスラエル軍が襲撃した。同軍は、「ハマスのテロリストらがアル・シファ病院内で再編成された」とし、病院が攻撃の拠点として使われていることを示す情報があると主張した。

ハマスは病院を利用したことはないとしている。

イスラエル軍を支持する人々は、今回の作戦は敵に奇襲攻撃を仕掛けて大打撃を与える戦術の成功を示すものだと評価している。軍報道官は以前、この作戦を「これまでで最も成功した作戦のひとつ」だと述べていた。

しかし、一部のコメンテーターは、2度目となった今回のアル・シファ病院への攻撃は、イスラエルの軍事戦略の欠陥を浮き彫りにするものだとしている。その理由として、ガザ北部からイスラエル軍が引き揚げた後に、ハマスとPIJが容易に再編成できたとしている。

ガザ保健当局は1日、ガザ南部ハンユニスのナセル病院を再開させるため、国際的な支援が必要だと呼びかけた。南部最大のこの病院は、2月にイスラエル軍が襲撃してから機能していない。

ハマスは昨年10月7日にイスラエル南部を襲撃。イスラエルは約1200人が殺害され、253人が人質に取られたとしている。人質のうち約130人は今も拘束されており、少なくとも34人は死亡したと推定されるとしている。

ガザ保健当局は、イスラエルの軍事作戦により、これまでに3万2800人以上のパレスチナ人が殺され、約7万5000人がけがを負わされたとしている。死者の7割は女性と子どもだという。

(英語記事 Gaza's al-Shifa hospital in ruins after two-week Israeli raid

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