トランプ氏、詐欺訴訟で保証金1.75億ドルを納付 差し押さえ回避

アメリカのドナルド・トランプ前大統領は1日、所有資産の価値を過大に申告して不正な利益を得ていたとして訴えられている民事訴訟で、保証金1億7500万ドル(約265億円)を納付した。これにより、資産の差し押さえを免れた。

トランプ氏は2月、不動産価値の不正なつり上げをニューヨーク州地裁によって認定され、賠償金4億6400万ドルの支払いを命じられた。

これに対しトランプ氏側は、全額を用意するのは不可能だと主張。州控訴裁判所は3月25日、10日以内に保証金1億7500万ドルを納めれば、資産は差し押さえないとする決定を出した。

訴訟でトランプ氏は、不正行為を否定。この事件を、民主党の検事による政治的魔女狩りだと主張している。訴訟は2022年にニューヨーク州のレティシア・ジェイムズ司法長官(民主党)が起こした。

トランプ氏は控訴中で、敗れれば4億6400万ドルを支払わなければならない。

トランプ氏の代理人のアリーナ・ハバ弁護士は声明を発表。「トランプ大統領は約束どおり保証金を納付した。控訴審で自らの権利を守り、この不当な評決を覆すことを楽しみにしている」とした。

自身のSNSの株価が乱高下

賠償金4億6400万ドルの支払いを命じた州地裁の判決により、トランプ氏は深刻な窮地に立たされた。同氏は宣誓証言やソーシャルメディアで、手元の現金資金は4億~5億ドルだとしてきた。

この判決が出たころ、トランプ氏は作家E・ジーン・キャロル氏が起こした別件の名誉毀損訴訟で敗れ、保証金9100万ドルを確保する必要も生じた。

米誌フォーブスは、トランプ氏の純資産を57億ドルと推定している。ただ、同氏のソーシャルメディア「トゥルース・ソーシャル」の親会社が先週、株式を上場。株価は急騰し、同社の時価総額は一時110億ドルに迫ったため、トランプ氏の資産は急増した。

しかし、1日には株価は20%以上下落。トランプ氏の資産は10億ドル減ったと、米ブルームバーグは報じた。

トランプ氏の弁護団によると、同氏は巨額の賠償金の支払いを遅らせるため、当初30社に保証金の支払いの担保を求めたが、応じるところはなかったという。

控訴審の評決までは数カ月以上かかる可能性がある。

その間に、トランプ氏の最初の刑事裁判が開始される予定だ。2016年大統領選挙の前にポルノ俳優に口止め料を支払ったことを不正に隠そうとした疑惑をめぐる裁判が、今月15日に始まる。

さらに、2020年大統領選で現大統領のジョー・バイデン氏に敗れたのを覆そうとした疑惑と、大統領退任後に機密文書を不正に扱った疑惑でも、刑事責任が問われている。

トランプ氏はこれらすべての事件で無罪を主張している。

(英語記事 Trump posts $175m bond in New York fraud caseTruth Social: Trump's DJT stock plummets days after going public

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