『サザエさん』はやっぱり毎週視聴するべき! 裕福過ぎる磯野家に“穴子さん無双”の神回

毎週、「ほとんどの作品を観ている」アニメライター・はるのおとによる週刊連載「【アニメ】神回・オブ・ザ・ウィーク」。3月25日から3月31日に放送された分から注目の“神回”をピックアップ!(編集部)

日曜夕方のアイコン的バラエティ番組『笑点』(日本テレビ系)3月31日の放送で(黄色い)林家木久扇さんが卒業しました。その後に生出演した『真相報道 バンキシャ!』(日本テレビ系)で今後について問われると、彼は「『落語スター・ウォーズ』というアニメを作りたい」とコメント。アニメファンならご存知の通り、落語を扱った作品は『笑点』メンバーも関わった2006年の『落語天女おゆい』や、『じょしらく』『昭和元禄落語心中』『うちの師匠はしっぽがない』など多数あります。

『まえせつ!』『GET UP! GET LIVE!(ゲラゲラ)』『てっぺんっ!!!!!!!!!!!!!!!』といったお笑い系アニメもありましたが、メディアの違いが大きいからか上手く落語やお笑いの面白さを表現できた作品はあまり多くない印象(もちろんないわけではありません)。林家木久扇さんのような方が本格的に関わることで、新たなお笑い系アニメが生まれることに期待したいところです。

というわけで、今回は同じく日曜夕方のアイコン的アニメの話からです。

●やっぱり『サザエさん』は愉快だな

先週お伝えしていた通り、『サザエさん』の2023年度最後の放送は1時間スペシャルでした。その後半に放送された、目玉となる「美味しい歴史の旅」はサザエさん一家が日本三大史跡(福岡県の太宰府跡、奈良県の平城宮跡、宮城県の多賀城跡)を巡るエピソードだったのですが、元々サザエさんたちは福岡に旅行するだけの予定でした(カツオの成績が悪いから神頼みをするため)。しかし旅先で出会った親子との交流をきっかけにそのまま奈良、そして宮城に出かけることに……って、一家7人揃っていきなり旅程を伸ばし各地でグルメを堪能しまくるあの一家は、やはり裕福な家庭なんだなあと改めて実感させられます。

“穴子さん無双”だった「穴子さんの遊園地」も良エピソード。徹夜麻雀で朝帰りとなった穴子さんが、奥さんを誤魔化すために(色々あって)マスオやカツオらと一緒に遊園地に行くという話です。彼のなかなかなクズっぷりもさることながら、ジェットコースターに乗って若本規夫ボイスで悲鳴をあげる穴子さんが爆笑ポイント。恥ずかしながら『サザエさん』を観るのは久々でしたが、やはり毎週視聴すべきなのかと思わされるスペシャル放送でした。

●朝番組で実現した放送局を超えた謎パロディ『逃走中 グレートミッション』

『逃走中 グレートミッション』はフジテレビが誇るバラエティ番組『run for money 逃走中』のアニメ化で、2023年4月から放送中です。同作はキャラクターが賞金を稼ぐために逃走ゲームに挑むというもので、挑戦者を追うハンターが登場しナレーションもマーク・大喜多さんと『逃走中』を踏襲していますが、仮想空間がステージというのが本家との大きな違い。これまでも渋谷(なぜか怪獣が出てくる)や名古屋城、ロンドンや砂漠の都市をモチーフとしたステージでゲームが行われてきました。

そしてこの回から始まったゲームの最初の舞台は1970年代の西海岸です。そこからアメリカ大陸を横断して最終目的地であるニューヨークを目指して逃げていくということで、「ニューヨークへ行きたいか!」という煽り文句も登場。一定年齢以上の方には説明不要でしょうが、日本テレビ系列で25年以上前まで放送されていたクイズ番組『アメリカ横断ウルトラクイズ』を思いきりよくオマージュしていました。

放送局の枠を超え、しかも子供がターゲットであろう朝アニメでそんなに古い番組のパロディをすることに困惑しつつも、単純にワクワクするしツカミのよさは過去最高クラス。来週はカーレースをしてくれるそうです(『天晴爛漫!』か!)。最近ラビという美少女がいきなり信楽たぬきから現れたのもそうですが、『逃走中 グレートミッション』が景気よく2年目に突入してくれました。

●たぶん、冬アニメで一番アナーキーな最終回『炎上撲滅!魔法少女アイ子』

「魔法少女×社会風刺 炎上エンタメショートアニメ」を謳う本作、TV放送は中部日本放送(CBC)だけ(YouTubeで全話観られます)ということで知名度こそやや低いかもしれませんが、かなりアグレッシブ。32歳の魔法少女・アイ子を主人公に、炎上のない世界の実現を目指してモラルのない人々が裁かれていきます。

その最終回は、どこからか放たれた弾道ミサイルが街に着弾しようとするなか、正義のアイコンとして市民に祭り上げられたアイ子の選択が描かれるというエピソード。3分強と短いのでぜひ上の動画で直接見届けてほしいのですが、炎上や正義について考えさせられる風刺作品にふさわしい壮絶なオチでした。ほかにも先週は冬クールで最終回を迎えたものはたくさんありましたが、印象的という意味では随一の1話です。

(文=はるのおと)

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