「将来の大企業を育てる」住友不動産 藤島正織グロースサポート事業部長に聞いた

藤島正織 住友不動産ビル事業本部グロースサポート事業部長

住友不動産<8830>は2024年4月1日に、関西初となるインキュベーション施設を大阪と京都に同時にオープンした。

スタートアップ向けのシェアオフィス「GROWTH大阪中之島」と「GROWTH京都河原町」がそれで、施設を利用するスタートアップを対象に住友不動産のオフィスビルに入居する全国の約1800社との連携の橋渡しなどを行う。

そこで、今後の事業展開や主力の不動産事業とのシナジーなどについて、住友不動産ビル事業本部グロースサポート事業部の藤島正織部長に話を聞いた。

スタートアップと1800社との連携を支援

ー関西初となるインキュベーション施設を大阪と京都に同時にオープンしました。これらの地を選択された理由を教えて下さい。

まず、京都を選んだのは、この地で世界に羽ばたくモノづくり企業が生まれており、変わらず京都に本社を構えて発展している企業が多く、こうした企業に続くスタートアップも出てきていることが挙げられます。

この背景には、京都には京都大学をはじめ多くの大学があり、研究シーズが多いことがあります。こういう街なのでテック企業生まれてきたわけで、この地にインキュベーション施設を設置するのは意味があると考えました。

加えて東京のVC(ベンチャーキャピタル)や、事業会社、スタートアップなどが京都に関心を向けていることも大きいですね。

京都への関心が高まっている理由は学生率の高さにあります。京都は人口の10%以上を学生が占めており、日本で最も学生率の高い街になっています。若い人が集まる街で、インキュベーション施設をやることに意味があると思っています。

ー大阪の拠点にはどのような狙いがありますか。

我々はSBI(銀行や証券などを手がける総合金融企業)さんと太い付き合いをさせていただいており、大阪中之島の施設はSBIさんと共同で運営します。

SBIさんは大阪府、大阪市との間で「国際金融都市OSAKAの取組推進に関する連携協定」を結んでおられ、国際金融都市OSAKAの情報発信や、金融リテラシー教育などのほかに、スタートアップの成長支援にも取り組まれています。今回のインキュベーション施設の運営はこの取り組みの一環だと思われます。

ーインキュベーション施設ではIPO(新規株式公開)やM&Aの支援なども行われます。どのような計画がありますか。

スタートアップの出口戦略はIPOの一本足では不足気味のため、M&Aも必要になっていくのではないかと思います。大企業を含めた事業会社がM&Aを積極化させることが必要であると考えています。

我々は、我々のオフィスビルに入居する1800社ほどの事業会社とのネットワークがあります。この1800社とスタートアップとの連携を促進しようと考えています。これまで東京でいろんなイベントを実施してきましたが、これを関西でも行う計画です。

モノづくり企業は研究段階から量産化していく際に、死の谷と言われる資金調達の問題に直面することがあります。資金がないために量産化、事業化できない状況のところに、東京のマネーを呼び込むことで、こうした問題をクリアできるのではないかと考えています。

京都市と連携協定を締結

ー今回のオープンで施設数が関東6カ所、関西2カ所となりました。今後さらに増やしていく計画ですか。

我々は自社が所有しているビルでインキュベーション施設を運営していますので、関西に関しては数を増やすというよりも拡張する方向で考えています。利用者が増え、入りきれなくなれば、同じビル内でスペースを増やす計画です。

東京ではもう2カ所増やす計画で、秋口までに8カ所となります。その時点で東西合わせて10カ所となります。

ーインキュベーション施設と御社事業とのシナジーについてはどのように考えていますか。

我々の主力はオフィス事業です。オフィス事業は日本経済が活性化すれば活性化する事業だと思っています。我々は今170万坪のオフィス床を保有していますが、2031年3月までにプラス70万坪を供給していこうと考えています。

そうなってくると、今の大企業だけではなくて、これから日本経済を背負っていくようなスタートアップ企業とのつながりを作っていくが大切になります。

インキュベーション施設を礎にして発展する将来の大企業とのつながりを持つのは非常に意味があることだと思っていますし、その結果として日本経済の活性化につながっていけば意義があると思っています。

ー国や自治体によるスタートアップの支援体制についてどのように考えていますか。

政府がスタートアップ育成5か年計画を出していますし、東京都も積極的に支援しておられます。京都市も補助金を用意されるなど、支援体制が整ってきています。

京都市とは連携協定を結ばせていただいており、一緒になって京都を盛り上げていくことになっています。こうした動きは非常に心強いですね。

藤島正織 住友不動産ビル事業本部グロースサポート事業部長

藤島正織(ふじしま・まさおり)氏

2004年、早稲田大学政治経済学部卒業
同年、住友不動産入社
2022年、ビル事業本部グロースサポート事業部長
1981年生まれ、福岡県出身。

文:M&A Online

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