お麩まわりのデザイン~パッケージも中身もバラエティ豊か~【さんぽの壺】

地方出張に行った際、現地のスーパーでご当地商品を買って帰るのが趣味の友人がいる。その友人が、盛岡土産として「いたふ」をくれた。パッケージに惹かれたという。

手書き風の字体がかわいい、盛岡のいたふ。味噌汁などに入れてもいいらしい(矢沢製麩店)。

レトロかわいいものが多い、麩のパッケージ

そう言えば、以前「麩(ふ)をジャケ買いする」というネッシーあやこさんのWeb記事を読んだ時も、麩のデザインに惹かれる人が一定数いることが紹介されていた。

一方で私自身は、麩と言えばもっぱら麩菓子しか思い浮かばず、料理のために麩を買うということがほとんどなかった。

私が「麩」と聞いて真っ先に思い浮かべるのはこのような麩菓子である(敷島産業)。
筑波山で購入したピンクの麩菓子。「ふ菓子」という表記がかわいい(さくら菓子本舗)。
島田(静岡)の大井神社売店で購入した麩菓子。調べてみると、静岡近辺では麩菓子はピンク色をしているのが一般的らしい(麩屋藤商店)。

ところが改めて麩のパッケージを見直してみると、確かにレトロでかわいらしいものが多い。以降、各地に赴いた際に麩を気にする生活が始まった。

「扇カット麩」は、車麩の親戚?

各地に赴いた際に、と言ったが、実は近所のスーパーにもさまざまな麩が売られている。東京在住の私が一番よく目にするのは、「焼き麩」と名づけられている、棒を輪切りにしたような形状の麩である(正式には「小町麩」とか「おつゆ麩」と言うらしい)。

黄色と紫のパッケージが素敵な白菊麩。上に挙げた麩菓子と同じ、岐阜の敷島産業製である。

ところが同じ「焼き麩」でも、東根(山形)の大山製麩所のものはフランスパンのような大ぶりのものであった。

東根市の六田地区で古くからつくられる六田麩。イラストは「もっつすすぎ」と呼ばれる製麩方法だそう(大山製麩所)。
上の「やきふ」を切った「きりふ」。左上の着物の人物がぱっと見水前寺清子に見えた(大山製麩所)。

続いて多いのが、車輪のような形の「車麩」。

重厚なデザインと「おいしいふ」のゆるいキャッチコピーのギャップが良い(サイシン・セイフ)。
上の車麩とは別のスーパーで購入したが、製造元は同じサイシン・セイフであった。

すき焼きの具や卵とじにしてもおいしい、食べ応えのある麩である。新潟の物産館で見つけた「扇カット麩」は、車麩の親戚であろうか。

車麩が有名な新潟の扇カット麩。4つつなげると多分車麩になると思う(マルヨネ)。

油で揚げた麩も、都内のスーパーでよく見られる。

何となく、中国の油条を彷彿とさせる(山形屋商店)。

登米(宮城)の伝統的な食材だそうで(https://www.city.tome.miyagi.jp/kirakira/shoku/aburafu.html )、他に替えがきかない食材だからこそ、各地に展開しているのかも知れない。

形はもとより色彩の豊かさに驚かされる

都内のスーパーではあまりお目にかからない、その土地独自の形をした麩も見てみたい。四角いものあり、平らなものあり、半球状のものありと、実に様々な形状をしている。

この角麩は焼かれているが、北陸や東海地方では生の「角麩」がよく用いられるようだ(越前焼麩田中商店)。
車麩を平たくしたおし麩。芋煮に入れてもいい(大山製麩所)。
半球状の麩は、水を吸うとモッフリする(宮村製麩所)。

もはや麩で作れない形はないのではないか、と思うくらいだ。

さまざまな形状と言えば、やはり「吸い物に入っている麩」を外すことはできない。スーパーを見てみると、古典的な手まり麩、カラフルな花麩などを見つけることができる。

カラフルな手まり麩は、吸い物以外にも使い道がありそう(常陸屋本舗)。
鍋焼きうどんに入っているとうれしい花麩(敷島産業)。

最近では星形のカラフル麩などもあったりして、形はもとより色彩の豊かさに驚かされる。

シャレたネーミングの「カラふル」。裏面の調理例にはスープやサラダ、カレーライスが紹介されていた(常陸屋本舗)。

また、形の面白さから言えば吸い物や味噌汁の中でよく見るうずまき麩も代表的だが、大容量のものを購入してしまうと、使っても使っても減らないという事態に陥るので注意が必要だ。

「うずまきだ!」と喜んで購入したが、500gの麩を消費するには何日かかるのだろうと計算してみる(村上製麩)。

あなたの麩は、どんな麩ですか

ここまでさまざまな麩を追ってきた。実にバラエティ豊かな形状があり、パッケージの裏面を見てみても色々な料理法がある。もしかすると、麩に対するイメージは出身地によって一人一人異なるのではないだろうか? 今私は、周囲の人に片っ端から「麩ときいて思い浮かべる形は?」「どうやって食べる?」と質問してみたくてたまらなくなっている。これを読んでいるあなたの麩は、どんな麩ですか。

イラスト・文・写真=オギリマサホ

オギリマサホ
イラストレータ―
1976年東京生まれ。シュールな人物画を中心に雑誌や書籍で活動する。趣味は特に目的を定めない街歩き。著書『斜め下からカープ論』(文春文庫)。

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