ガザ支援職員殺害、イスラエルに国際的圧力高まる 米大統領は「憤慨」

パレスチナ自治区ガザ地区で人道支援活動を行っていた米拠点の慈善団体「ワールド・セントラル・キッチン(WCK)」の職員7人がイスラエル軍の空爆で殺害されたことをめぐり、同国に対する国際的な圧力が高まっている。英米首脳らは2日、イスラエルを強く非難した。

殺害されたのは、イギリス人3人、ポーランド人、オーストラリア人、パレスチナ人、アメリカとカナダの二重国籍者が各1人。

WCKによると、職員らが乗った車両3台がガザ中部デイル・アル・バラフの倉庫を出発したところ、空から攻撃された。うち2台は装甲車で、WCKのロゴがはっきりと表示されていたという。

職員らは車で移動する前、倉庫で「海上ルートでガザに運ばれた人道支援の食料100トン以上を荷下ろししていた」という。車列の動きはイスラエル軍と調整済みだったという。

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は2日、同国軍が「罪のない人たち」を攻撃したことを認め、独立した調査を約束。イツハク・ヘルツォグ大統領も、死者を出したことを謝罪した。

支援活動を停止

WCKは有名シェフ、ホセ・アンドレスさんが設立した団体で、ガザでの主要支援組織の一つ。イスラエル占領地政府活動調整官組織(COGAT)によると、パレスチナ自治区に運び込まれる非政府援助の6割を担っている。

WCK は4日前、これまでにガザ地区で4200万食を提供したと発表していた。トラック1700台以上で食べ物を運んでおり、海上からも43万5000食近くをガザに届けているという。

今回の事態を受け、WCKはガザでの活動の即時停止を発表。現地の人道支援の今後が危ぶまれている。

WCKと緊密に連携している慈善団体「アメリカ近東難民援助(ANERA)」も、ガザでの活動を停止するとBBCに話した。

英米首脳らが強く非難

イギリスのリシ・スーナク首相は2日、イスラエルのネタニヤフ首相と電話で協議した。

英首相官邸によると、スーナク首相はガザが「ますます耐え難い」状況になっているとの見解を伝え、WCK職員の殺害について「徹底的かつ透明性のある独立調査を求めた」。また、イスラエルに人道支援に対する制限をやめ、民間人を保護する必要があると付け加えたという。

アメリカのジョー・バイデン大統領も7人の殺害を非難。「憤慨し、心を痛めている」と述べるとともに、迅速な調査と責任の所在の明確化をイスラエルに求めた。

また、ガザでは支援物資の分配が「非常に困難」になっているとし、原因はイスラエルが「支援職員らを十分に保護してこなかった」からだとした。さらに、パレスチナ民間人の保護も不十分だとイスラエルを非難した。

オーストラリアのアンソニー・アルバニージー首相も、ネタニヤフ首相と長時間にわたり電話で協議。「オーストラリアの怒りと懸念を表明」し、「今回の事態がどのように起きたのか完全かつ適切な説明」を求めたとした。

ポーランドのラドスワフ・シコルスキ外相は、イスラエルのイスラエル・カッツ外相に対し、独立調査を要求したと述べた。

カナダのジャスティン・トルドー首相も、「完全な説明責任」が必要だと表明。イスラエル軍によって「支援職員が殺されるなど絶対に容認できない」と述べた。

支援職員200人近くが犠牲に

アメリカが出資する「支援職員安全データベース」によると、ガザで昨年10月以降に殺害された支援職員は196人以上に上っている。全員が職務中に殺されたとは限らないという。

今回殺害されたのは以下の人々(カッコ内は国籍)。

ソボルさん、アブタハさん、フリッキンガーさんは、フランクコムさんが率いていたWCKの救援チームの所属だった。チャップマンさん、ヘンダーソンさん、カービーさんは警備チームの一員だった。

WCKのエリン・ゴア最高経営責任者(CEO)は、7人全員が「英雄」だとする声明を発表。「私たちは自分たちの損失に、世界にとっての損失に、衝撃を受けている」とした。

(英語記事 Biden 'outraged' over Israel strike on World Central Kitchen staff in Gaza

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