松山ケンイチ&小林薫は“信頼”できる! 『虎に翼』が序盤から問いかける“現在も続く不平等”

『虎に翼』(NHK総合)第3話で、「言いたいことがあれば、言いたまえ」と穂高(小林薫)に引き止められた寅子(伊藤沙莉)は、桂場(松山ケンイチ)と学生の「婚姻状態にある女性は無能力者だからであります」というやり取りについて、「それは女性が無能ということでしょうか?」と疑問を投げかける。

穂高も桂場も、寅子の言葉に真摯に耳を傾けていたのが印象的だ。特に桂場は怖い顔を決して崩さないが、寅子が女性だからという理由だけで突き放すことはなかった。

公式サイトの登場人物紹介には「寅子に対して、女性が法律を学ぶことに疑問を呈する」と記されているので、法律を学ぶ女性に対して手強い相手ではあるかもしれない。けれど、寅子の問いかけに「そうではない。結婚した女性は準禁治産者と同じように責任能力が制限されるということだ」など、法律上の女性の立場について説明した際、桂場は寅子を見下すことも威圧することもなかった。加えて印象に残るのが学生たちへの対応だ。

桂場は寅子を小ばかにするように笑う学生たちに鋭い目つきを向けると「何がおかしい? 彼女は分からないことを質問しているだけだが?」と問う。松山ケンイチが見せる険しい顔つきや厳しい佇まいから「近寄りがたい人」といった印象を覚えるが、桂場の発言や寅子をばかにする学生への対応を通じて筋の通った人物であることがうかがえる。

穂高の人物像も視聴者の心を掴んだに違いない。演じている小林薫の面持ちや台詞の言い回し、佇まい全てに穂高の穏やかな人柄が表れている。しかしただ物腰が柔らかい人物というわけではない。釈然としない顔つきの寅子に教室へ残るよう勧めた穂高は、学生たちへこう問いかけた。

「君たち、これが世の女性の反応だ」
「法律とは、全ての国民の権利を保障すべきなのに……。君たちはこれをどう捉える?」

万人は法の下に平等とされているが、不平等を感じている人がいる。法律上の権利と現実とのズレに疑問を持ち続けること、そしてその疑問を解決につなげていくことこそが大切なのだと伝えたいのではないか。穂高の公平を重んじる姿勢が伝わってきた。

講義終了後、思いのままに気持ちを明かす寅子に穂高は感心し、自分が教授を務める明律大学女子部法科に入るよう勧めた。

進学に賛成してくれた父・直言(岡部たかし)を味方につけ、寅子は願書を出願したが、母・はる(石田ゆり子)への説得は保留に。親友であり寅子の兄・直道(上川周作)と婚約中の花江(森田望智)にも制されてしまった。果たして寅子ははるを説得することができるのだろうか。
(文=片山香帆)

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