Z世代新入社員 電話のビジネスマナーでつまずきがちなポイントは 上手な教え方をプロが解説

新入社員にとって電話応対は新たな学び(写真はイメージ)【写真:写真AC】

新入社員にまず覚えてほしいマナーのひとつに「電話応対」があります。とはいえ、スマートフォンの普及で、電話に慣れていない人も少なくありません。この春、新入社員を迎えた上司世代は「このくらい常識だろう」という思い込みを捨て、マナーを教える必要がありそうです。そこで、ビジネスマナー講師である株式会社トークナビ代表取締役でアナウンサーの樋田かおりさんが、Z世代の常識を踏まえたマナーの教え方を解説します。

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「もしもし」はビジネス電話ではNG

「もしもし」「もしもし?」。電話をかけた若手社員が、第一声でこう繰り返しているのが聞こえます。話し始めたものの、途中で相手の声が聞き取りにくくなったのか、再び「もしもしー?」。ようやく本題に入ったあと、確認事項があり、いったん保留にしました。そして、電話に出るとまた「もしもしー?」。

このように、新入社員が使いがちな電話応対のNGワードが「もしもし」です。「もしもし」はカジュアルな電話では一般的ですが、ビジネスでは使いません。プライベートでも電話を使う機会が少ないZ世代にとって、「もしもし」はオフィシャルな用語だと勘違いしている場合もあるようです。

では、もしもしを連発していた最初のケースでは、どうするのが正解なのでしょうか。まず、ビジネス電話の第一声では、「もしもし」の代わりに「お世話になっております」を使います。

そして、途中で声が聞き取りにくい場合には、「お電話が少々遠いようです」と言いましょう。その後、電話を保留にしていますが、再会する際には「お待たせいたしました」と言うのがマナーです。

Z世代が「お世話になっております」に抵抗感を覚える理由

Z世代が電話の第一声で「もしもし」と言いがちな理由は、ほかにもあります。社会人になるまでは、電話といえば、SNSなどもとからつながっている人と通話をする機会がほとんどです。そのため、わざわざ「○○です」と名乗る習慣がありません。

また、店への問い合わせなどもどんどん利便化し、ウェブ上で完結する場合がほとんどです。知らない人と電話をする機会があまりないため、「もしもし」以外の定型フレーズを知らないことも多いのです。そこで、ビジネス電話ではまず名乗ること、「お世話になっております」とあいさつすることがマナーであると教えましょう。

このとき、新入社員からは「初めて電話する相手なのに、『お世話になっている』と言っていいのですか?」と質問されることがあります。「お世話になっております」は慣用的な表現ですので、実際にお世話になっている関係かどうかを気にする必要はありません。

伝言メモに相手の名前がない! 名前の聞き方マナー

いざ応対をしてもらって困ることがないように、電話相手の社名や名前をしっかりメモすることも先に伝えておくといいでしょう。Z世代の電話応対で、伝言を承ったのに、肝心の相手の社名と名前がわからないということがありました。

SNSでは、互いに名前やニックネームを知っている状態でやりとりします。メッセージグループなどで誰なのかわからない人がいても、本人に直接聞くのは失礼だと感じて、ほかの人に聞いて確かめる場合も。電話も例外ではなく、名前を聞きそびれても何度も確認するのは失礼だと感じて聞き返せないことがあるようです。ビジネス電話では、「誰から誰への電話か」の確認が大切であることを伝えましょう。

また、電話の最後に慌てて「あ! お名前、いいですか?」などと聞いてしまわないよう、聞き方も併せて指導しておくと安心です。相手の名前を聞くときは、まず「私、○○と申します」と名乗ったうえで、「失礼ですが、お名前を伺ってもよろしいでしょうか」と確認するといいでしょう。

まずは「会社の電話が鳴ったら出る」意識づけを

上司世代からは言葉遣いや応対のマナー以前に、「そもそも、新入社員や若手社員が会社の電話を取らない」という悩みも聞きます。電話は1人1台が当たり前の環境で育ったZ世代は、「自分宛て以外の電話に出る」という経験があまりないでしょう。

また、こうした悩みはZ世代に限らず、以前から聞かれてきました。職場の先輩や上司たちは「新人が電話を取るのが常識でしょ」といった言い方ではなく、会社の電話が鳴ったら新人が率先して出たほうが良いことを教えてあげてください。

樋田 かおり(といだ・かおり)
岐阜県出身。日本テレビ系列RAB青森放送アナウンサーを経て、2015年に株式会社トークナビを設立。企業向けのプレゼン研修やマナー研修、広報代行事業などを実施。著書に「社長の伝え方には会社を変える力がある」(青春出版刊社)ほか。

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