見ず知らずの母子を車に乗せる人、避難を誘導する人、混乱の中にも助け合い 津波警報沖縄の一日【動画あり】

津波警報が発令され、高い場所へ避難する観光客ら=3日午前9時56分、那覇市前島・泊ふ頭旅客ターミナル(金城健太撮影)

 3日午前9時ごろ、沖縄本島、宮古島、八重山地方に津波警報が発令され、避難を呼びかけるアラートや防災無線が繰り返し鳴り響いた。不安げな表情で、避難所や高台の公園へと急ぐ人々。日常生活が一変した混乱の中に助け合いもあった。

■見ず知らずの人が避難手助け

 指定避難所となっている那覇市松山の那覇商業高校には、お年寄りから外国人まで200人以上が避難した。部活中の生徒や犬を連れて避難する人もいた。車いすの女性(94)は「遠くに行けず、危険だから避難した。何ごともなければいい」と不安げな様子だった。

 那覇市金城の高台にある「がじゃんびら公園」には100人以上が集まった。春休みで自宅にいた高校新1年生(15)は、仕事中の両親と連絡を取りながら姉(19)と歩いて避難。「状況が分からずスマホで調べている」と困惑した様子だった。

那覇商業高校に避難した人たち。心配そうにベランダから外の様子を眺めていた=3日午前10時1分、那覇市(竹花徹朗撮影)

  避難所の沖縄市役所には、海抜が低い市の東部地域などから多くの市民らが避難。城間光さん(31)は生後5カ月の大河ちゃんを連れて買い物中に、スマートフォンの緊急速報が鳴った。急いで車に戻って沖縄市役所に向かったが渋滞。警察車両から「車から降りて避難してください」との呼びかけを聞いて、歩いて市役所を目指した。「途中で、渋滞を抜けた見ず知らずの人が車に乗せてくれた。仕事中の夫とも連絡が取れ無事を確認できた」とほっとした表情で話した。

■車の誘導で協力し合う

 県内で唯一海に面していない南風原町でも、河川付近に避難指示が発令され、高台にある公園などに町民らが避難した。黄金森公園陸上競技場に「いろは児童クラブ」の小学生25人を連れて避難した職員の桑江千秋さん(48)は「日頃から訓練しているのでスムーズにできた。みんな『本物の避難だ』とびっくりしていた」と話した。

 糸満市真栄里の高台にある「ロンドン杜公園」内の中央図書館は臨時休館したが、警報発令を受けて避難者を受け入れた。金城毅館長は「多くの車や市民で混雑したが、避難者が車の誘導を手伝ってくれた。協力し合って避難できたと思う」と語った。

走って高台を目指す子どもたち=3日午前9時6分、糸満市真栄里

 沖縄市のこどもの国に家族4人で避難した山城千夏さん(36)は、買い物をしに沖縄市比屋根の自宅から北中城村のイオンモール沖縄ライカムに向かう途中に津波警報を知った。「驚いた。すぐにライカムに向かったけど、みんな高台を目指していて渋滞していた。諦めて、途中で渋滞を抜けてこどもの国にきた」と話した。高台から中城湾を見つけ「家族も全員無事。街も大きな被害がなくて本当に良かった」と安堵(あんど)した。

沖縄市役所に避難してきた市民ら=3日午前10時50分、沖縄市仲宗根町

■「命が最優先」

 豊見城市は伊良波小、伊良波中を避難先として開放した。愛犬のココと豊見城市与根付近を散歩中だった伊良波中2年の金城匡飛(だいと)さんは「親から『逃げて!』と電話があってびっくりした。与根は低い土地だから怖かった」と話した。

 3日午前9時45分ごろ、宜野湾市の嘉数高台公園の駐車場はすでに満杯に。約300人が避難した。

展望台に避難する住民ら=3日午前10時頃、宮古島市平良下里・カママ嶺公園

 沖縄電力グループの沖電企業(浦添市)は警報が出ると社内放送で「高台に逃げて」と呼びかけ、全職員約80人は歩いて避難場所に向かった。米盛修市総務課長は「業務の心配もあるが、命が最優先」。午前10時40分に津波警報が注意報に切り替わると避難を解除し「会社に誰もいないので、サーバーに異常が起こっていないか心配だ」と急いで職場に戻った。

 観光名所のほとんどが海抜1~2メートルの北谷町美浜では、地元住民や観光客がサンセットビーチに隣接する大型量販店の屋上駐車場に避難した。同店は津波警報を受けて営業を一時休止。店の従業員が買い物客や観光客らの避難誘導に当たった。神奈川県から夫婦で訪れていた男性(46)は「警報に驚いて必死に高い場所を探して駆け込んだ」と話した。

 名護市東江の大型ショッピングセンターの屋上5階には従業員や客ら約80人が避難。天願善八さん(82)は「自宅が海抜2.5メートルの低地にある。津波が押し寄せないか心配」と話した。

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