【エフレイ設立1年】廃炉、災害、除染にロボットの力を

「住民の期待に応えられるようなロボットを開発する」と決意を述べる野波氏

 設立1周年を迎えた福島国際研究教育機構(エフレイ)が最重点に位置付けるロボットや農林水産、エネルギーなど研究開発5分野のトップには、国内を代表する研究者らが名を連ねた。各分野の研究内容と将来像について、5人に聞く。

 技術開発、地元に応える ロボット分野長・野波健蔵氏

 ―地元は東京電力福島第1原発の廃炉を進展させる技術の開発を期待している。決意を。
 「溶け落ちた核燃料(デブリ)はまだ1グラムも取り出せていないが、やらなければならない。デブリをのこぎりのようなもので少しずつ切り出し、運び出す技術が求められる。放射線対策も必要だ。かつて格納容器に投入されたロボットは放射線の影響で使えなくなった。カメラや(ロボットの頭脳を担う)中央演算処理装置(CPU)に使う半導体をシリコン系から高放射線に耐えられるダイヤモンド系にするなど開発を進める」

 ―災害対応ロボット開発の展望は。
 「1月に能登半島地震が発生した。今後の災害時に活躍するロボットが必要だ。例えば、体温を感知するサーモグラフィーを搭載したロボットががれきの下を捜索すれば迅速な救助が期待できる。開発した災害対応ロボットを企業に委託して量産し、消防や警察などが災害時に活用する状況をつくりたい」

 ―森林で作業するロボットの開発にも力を入れる方針だが、狙いは。
 「森林の除染はほぼ手付かずの状態だ。人が近づくと危険な場所もあり、除染するための人手も必要となる。そこで、ロボットが必要だ。森林に入って下草を刈り、樹木を伐採し、若木を植えることで環境をよみがえらせたい」

 ―廃炉や災害対応、森林作業の各分野の技術開発の目標は。
 「ロボット分野への住民の期待は非常に高いと感じている。(2030年度から始まる)第2期中期計画の初頭には成果を『見える化』したい。住民から評価されるような仕事をしていきたい」

 ―人材育成にどう取り組むのか。
 「日本人は(機械本体となる)ハードウエアなどものづくりは得意だが、ソフトウエア開発分野で遅れている。スマートフォンもLINE(ライン)などのアプリに価値があり、そうした頭脳の部分は主に米国などが作っている。ソフトウエア開発にこそビジネスチャンスがある。先端研究を進める中でソフトウエア分野に強い若手を育てたい」

 主な研究テーマ

・福島第1原発の廃炉に貢献する遠隔操作技術や放射線に耐えられる半導体の開発
・廃炉を担う人材を育成するための教育プログラムの開発と試行
・ドローンによる災害時の状況把握を可能にする技術開発の推進
・福島ロボットテストフィールドでのロボット国際競技大会の開催と性能評価手法の検討

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 野波健蔵(のなみ・けんぞう) 福井県出身。東京都立大大学院工学研究科博士課程修了。米航空宇宙局(NASA)のシニア研究員などを経て、2017年から日本ドローンコンソーシアム会長を務めるドローン研究の第一人者。75歳。

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