変態プレイを97%の人が妄想経験アリと回答。Netflixオリジナルドキュメンタリー「“性”をダイジェスト」が性的嗜好に対する背徳感を薄くする!?

Netflixで今年から配信されSNSを中心にじわじわと話題を集めている「“性”をダイジェスト」は、人間の生態を統計や科学を元に新たな視点で探るドキュメンタリー。ジャネール・モネイ(歌手)の脳に浸透していくような落ち着いたナレーションとワンエピソード20分前後という丁度良い再生時間も視聴者を飽きさせない理由の一つ。今回は第1回目「性的ファンタジー」を見て感じたことを書いていくわ。自分の性的嗜好って特異なモノ?と悩んでしまっている人はぜひ、この作品を見てほしい。

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第一回目ではジャスティン・レミラー(セックス研究者)や人気ドラマ「私はラブ・リーガル」にも出演し、バイセクシュアルであることを公言しているマーガレット・チョー(コメディアン)らが「性的な妄想」、日本では「変態プレイ」なんて言われていることが決して特異なことではない理由を紐解いていくんだけど、これが本当に面白いの。まぁ、冒頭でジャスティン氏の肩書を「セックス研究者」と訳した翻訳者のセンスに心掴まれて最後まで観ちゃったってのもあるんだけど…なに?セックス研究者って(笑)。

そんなどうでもいいことは置いといて「性的な妄想」として主に挙げられたのはグループセックス(複数プレイ)、ノベルティ(オモチャの使用や性行為に適していない場所でのプレイ)、BDSM(手錠などの拘束具を用いた隷従関係プレイ)の3プレイ。性的背景や指向などが違う、全米50州の18~87歳の4200人にアンケート調査をしたところ、97%がグループセックスを妄想したことがあるのだそう。妥当な数字だけど逆に3パーセントの妄想経験なしの126人が気になってしょうがないから今度、セックス研究者=ジャスティン氏に調査をお願いしたところね。

そうは言うもの私自身、グループセックスを経験したいとか具体的なシチュエーションや人を妄想したことって、意外と無かったりする。それ系のHなビデオを見ることはあるけど、あくまで「傍観者」という立場にいて、輪の中に入りたいとかそういう感情は一切湧いてこない。器用じゃないから複数の人の感じるスポットを短時間で探り当てて気持ちよくするなんてことできないし、きっと「私がこんだけ気持ちよくしてあげているのに、何その手抜きな扱い方!」と自分がしている以上のことを相手に求めてしまうのが分かっているからなんだよね。挙句の果てに「こっちの人に集中しすぎたから、次はこっちを責めてみる…?」「この人、私ばっかり責めてくるから、隣の子の顔を見るのが怖いわー」と注意力が散漫した後、理性が勝って作業的なセックスになるのも目に見えているし(笑)。

兎にも角にも「私は古風な日本男児、一人を愛し愛されていると実感できる45分(私個人の平均セックス時間)のベッドの上が一番ぴったりってことね♡」なんて考えに落ち着いていたら、今度は約3割の人がBDSMを妄想したことがあるだなんて統計データを突き付けられたもんだから、もうパニックよ。逆にそれ少な過ぎじゃない!? 1対1のセックスを好む傾向にある私はお互いの信頼関係や精神的に愛されているという実感が興奮に繋がるタイプだと自覚していたから、私がBDSMに興味が湧くこともある種、自然なことではあるかなと思ってたけど、実際の数字を目の当りにしたら「嘘でしょ、こんなに少ないの!私変態じゃん!!ぴえん!!!」って不安になったよね。まぁ10秒後にiPhoneの電卓アプリで計算したら4200人中1200人もBDSMに興味をあることを知って、少しは落ち着いた。

この他にもゲイのレザー文化やラブドラマでよく目にする強制的な性行為から恋に落ちるパターンの歴史に迫ったりと、トピックスが次々と派生していくのも魅力的なのだけど、「“性”をダイジェスト」の第一話を見て素晴らしいなと思ったのは、専門家による確かな統計データの数字を見せること、そして一般人が自分の性癖をジョーク混じりに淡々と話すカットを取り入れた構成ね。パーソナルな面が見えてこない数値を補うために一般人へのインタビューをするというのは当たり前のことなのかもしれないけれど、時折、妄想しては「自分って、度を超えた変態…?」と感じてしまう不安を払拭してくれたの。ユーモラスでクリエイティブな妄想に拍手を送りたくなる人もいたわ。世界に77億人いれば、それだけ妄想の数もあるわよねって(笑)。

最後のシーンである心理学者のお言葉も最高だったわ。「自分の性的嗜好は間違っているのでは…?」と頭の片隅で思ってしまっている人は一度「“性”をダイジェスト」を見ることをおすすめするわ。20分前に悩んでいた自分がおかしく思えるくらい、気が楽になるはずよ。

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記事作成/芳賀たかし(newTOKYO)
イラスト/やすだじゅん

やすだじゅん
精神科作業療法士をしつつ、バックパッカーでありイラストレーター。愛する映画と音楽の言葉を用いて、マイノリティが生きやすくなるような思考をイラストにて毎日インスタグラムで発信中。

Instagram@hesomagarisaburo

Netflix「“性”をダイジェスト」
生物学的観点から見るときめきのメカニズムから、避妊の歴史にいたるまで、性に関するあれこれをひも解く楽しくてためになるシリーズ。
https://www.netflix.com/title/81160763

本記事は2020年3月5日に掲載されたものの再編集版となります。

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