ロックバンド「キッス」、楽曲やブランドを売却 総額450億円超か

デイヴィッド・ワデル、BBCニュース

米ハードロックバンド「キッス」が楽曲などを、3億ドル(約454億円)を超えるとみられる額でスウェーデンの音楽投資企業に売却した。

ストックホルムを拠点とする企業「ポップハウス・エンターテインメント」は、キッスのブランド、肖像権、知的財産も併せて購入した。

キッスは最近まで「エンド・オブ・ザ・ロード・ワールド・ツアー」でライブ活動をしていたが、今回の売却でそうした活動から引退することになる。

楽曲の高額売却は、他の音楽家も行っている。米歌手ボブ・ディランさんは5億ドル、同ブルース・スプリングスティーンさんは4億5000万ドルで、それぞれ大手音楽会社に楽曲を売却している。

キッスが合意した内容の詳細は明らかになっていないが、イギリスのバンド「ジェネシス」の契約内容と似たものにだろうとされている。他方、米歌手マイケル・ジャクソンさんの楽曲売却額6億ドルよりは、少ない金額だろうとみられている。

ポップハウスは知的財産なども所有するため、今後、AI(人工知能)生成のコンテンツを生み出すことが可能になる。

同社は昨年12月、キッスとデジタル・アバター・プロジェクトで協力した。これと似たかたちで、スウェーデンのポップグループ「アバ」の、デジタル技術を活用した「ヴォヤージュ」コンサートもプロデュースした。

キッスは1973年、リードボーカルのポール・スタンレーさんとジーン・シモンズさんによって結成された。エース・フレーリーさんとピーター・クリスさんを含めた当初のメンバーは、独特のフェイスペイントで有名になった。

全盛期の1970年代には、「ロックンロール・オールナイト」や「雷神」などのヒット曲を生み出した。

1983年に初めてフェイスペイントなしで登場し、改めて注目が集まった。1990年代後半になると再びペイントをするようになった。

協力的な関係

キッスは過去50年間で、約1億枚のレコードを売り上げた。

バンドのビジネス面に大きくかかわってきたシモンズさんはBBC番組で、今回の売却に伴う金額を正確に示すのは避けたが、「数十億ドル」かもしれないとからかい、その後それは多過ぎると言った。

そして、「これでみんな家賃は払えるようになる。ただ、どんなに金を積まれても、あくどい連中とベッドインなんかしない」と話し、こう続けた。

「今回の取引ではともかく、相手が良かった。互いに協力的な関係が作れて、今後ずっと友情が続く新しい親友に出会ったわけだ」

ポップハウスのパー・サンディン最高経営責任者(CEO)もBBCの取材で、今回のパートナーシップを称賛した。

ビジョンの共有

サンディンCEOは、「彼らはメイク、ドレス、ペルソナにおいて独自のIP(知的財産)をもっており、素晴らしい音楽をもっている。そして、世界中にすべての世代のファンがいる」とBBCに話した。

今後のキッスのブランドとAI生成素材の開発には、シモンズさんはスタンレーさんが継続的に密接に関わっていく。

シモンズさんこうした関係を、母親と赤ちゃんのようなものだと説明した。

「母親は子どもが成長したり結婚したりするのを見ているが、お母さんでなくなることはない」、「誰かにそれを譲ることはできない。ビジョンは共有しているが」。

キッスはブランドの関連商品を多数販売していることでも知られる。シモンズさんは、コーヒーからコンドーム、棺おけに至るまで、5000もの製品に自分たちのブランドを刻んできたと話した。

シモンズさんは、「金がたくさんあるのはいつだっていいことだ」とBBCに語っていたが、逆にキッス商品として認めないものはあるのだろうか?

「キッス・クラック(コカイン)はたぶんよくない。キッスのたばこもダメだ。だが、他は何でもありでいいじゃないか。ブランディングでいろいろ楽しくなる」

(英語記事 Hard rock band Kiss sells brand and songs for $300m

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