「沖縄で強くなりたい」 ボクシング世界王者の中谷潤人さん 3階級制覇を報告

WBCバンタム級王者の中谷潤人さん(左から4人目)とガイドの比嘉涼子さん(同5人目)、沖縄観光コンベンションビューローの下地芳郎会長(同3人目)、中谷さんの家族ら=4日、那覇市

 世界ボクシング評議会(WBC)バンタム級王者で、3階級制覇を達成した中谷潤人さん(26)が4日、那覇市の沖縄観光コンベンションビューロー(OCVB)に下地芳郎会長を訪ね、快挙を報告した。次戦は未定。「7日までの沖縄合宿では走り込んで体力をつくり、沖縄で強くなりたい」とあいさつした。

 中谷さんは三重県の中学3年生だった2012年、修学旅行で沖縄を訪問。特に「集団自決(強制集団死)」があった読谷村の戦跡チビチリガマは「生きたくても生きられなかった人たちがいた。頑張る場所のある自分は存分にやろう」と考え、その後の活躍につながる「人生の分岐点」となった。当時案内した「地域ガイド風の会」で村内在住の比嘉涼子さん(67)もOCVB訪問に同席した。

 中谷さんは学級担任と交流があった比嘉さんにクラスで手紙を送るなど、縁が続いた。「命どぅ宝の言葉が印象に残っている。今後も沖縄を定期的に訪ねて合宿し、比嘉さんとも交流したい」と穏やかな表情で語った。

 比嘉さんは中谷さんの試合前には「チバリヨー」と励ました。中谷さんが22年、読谷村で修学旅行生に講話を行ったことにも触れて「ボクシングだけではなく、人間性のある、青少年の目標となる人に育った」と目を細める。

 首里城復興の寄付金贈呈でも面会したことのある下地会長は「中谷さんはまだ夢を追う途中にいる。その歩みの中で、沖縄を大切にしてくれていることはうれしい」と再会を喜んだ。

 中谷さんはその後、チビチリガマを訪れ、チャンピオンベルトを置いて黙とう。戦没者に思いをはせた。(運動部・又吉健次)

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