「お金…」横浜の商店街でスマホから漏れ聞こえ110番 大学生が詐欺防ぐ 「〝おばあちゃん子〟として当たり前」

特殊詐欺を未然に防ぎ、鶴見署の中西署長から感謝状を受け取った阪部さん(右)=同署

 スマートフォンから漏れ聞こえた会話をきっかけに特殊詐欺の被害を防いだとして、鶴見署は5日までに東京都板橋区の日本大学4年、阪部全さん(23)に感謝状を贈った。

 署によると、3月15日午後0時50分ごろ、座間市内の70代女性宅に男から一本の電話がかかってきた。「不倫がばれ、弁護士が示談金を150万円にしてくれた」と電話口で言われ、女性は長男と誤信。現金150万円を持って電車を乗り継ぎ、指定された横浜市鶴見区の商店街へ向かった。

 そのころ、友人と会うために同区を訪れていた阪部さんは、スマートフォンと紙袋を持って商店街に向かう女性を見かけた。スピーカー機能を使って大音量で話し、落ち着かない様子だったという。しかも通話相手はボイスチェンジャーで声を変えており、「お金」という単語も漏れ聞こえたことから「特殊詐欺かもしれない」と察知した。

 阪部さんは「見て見ぬふりは嫌」と考えたものの、「自分には犯人を信じ切っているおばあちゃんを説得できないのではないか」と思い、110番通報。署員が駆け付け、女性は現金を渡さずに済んだ。受け取り役は現れなかったという。

 感謝状を受け取った阪部さんは「通報に迷いはなかった。“おばあちゃん子”として当たり前のことをしただけ」と振り返り、中西実署長は「問題意識を持っていたからこそのひらめき。感謝したい」とたたえた。

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