ドングリ凶作で人里に出現か 農作物を食い荒らすイノシシを駆除 国頭村が772頭を買い取り過去最多に

 畑を食い荒らすイノシシやカラスなどから農作物を守ろうと、沖縄県国頭村が実施する有害鳥獣の買い取り事業で、2023年度のイノシシ買い取り数が過去最高の772頭に上ることが6日までに分かった。イノシシの餌となるドングリの凶作で、人里に降りて来ている可能性がある他、村がこれまでの銃猟に加え、わなを設置して捕獲数を伸ばしていることが主な要因だ。(北部報道部・松田駿太)

■被害額は500万円

 村は有害鳥獣駆除実施隊などが捕獲したイノシシを、1頭4千円で買い取っている。買い取り数は18年度の183頭からほぼ毎年増加を続け、22年度に370頭、23年度は772頭と急増した。23年度のカラスの買い取り実績は1193羽だった。

 JAおきなわが村内の農家への聞き取り調査を基に予測する、カラスやコウモリなども含めた農作物の被害額はデータのある16年度以降では19年度の約866万円が最高で、最新の22年度は約500万円だった。

■わなを導入 報奨金を値上げ

 村は野生動物から基幹産業の農作物を守ろうと、20年度から従来の猟銃に加えて箱わな、囲いわな、くくりわなを導入した。さらに3千円だった報奨金を4千円に値上げするなど、イノシシ対策を強化してきた。

 村農林水産課の担当者はわなの設置について「農家の所得に直接関わる。どこかで流れを食い止める必要があった」と説明。その上で「今後は電気柵や果物を守るメッシュなど、防除も重点的に進めたい」と話す。

 やんばるや奄美、徳之島など「中琉球」の森でドングリの豊凶調査を実施している森林総合研究所九州支所の小高信彦主任研究員はイノシシの捕獲数が増えたことについて、やんばるの森のイタジイに実を付けるドングリの豊凶が大きく関係しているのではないかと推察する。イタジイは大体2年周期で豊作・凶作が繰り返されることが分かってきており、調査によると21、22年が豊作で23年は凶作だった。豊作が続いた後の凶作年は、餌を求めて野生動物の分布域が広がる傾向があるという。

■「解体施設あればジビエ料理も」と期待

 小高研究員は「ドングリが豊作だと凶作時の春夏だけでなく真冬にも繁殖するようになり、ウリボウ(イノシシの子)が増える。豊作が2年続いて森のイノシシが増えたところに凶作で餌不足となり、警戒心が薄い若いイノシシなどが人里に降りて来ているのでは」と分析した。

 村の有害鳥獣駆除実施隊として活動する金城建昭さん(69)は「イノシシの通り道にわなを仕掛けるなど、効率良く捕獲ができている。これだけイノシシがいるので、村が解体施設を造ればジビエ料理や精肉販売など村の新たな目玉になるのでは」と期待した。

国頭村内で箱わなにかかったイノシシ(提供)
イタジイの木に実るドングリ=2022年(玉城学通信員撮影)

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