【4月6日付社説】春の新聞週間/読む習慣つくり知識磨こう

 大人や社会の仲間入りをした若者らは、知識や教養を身に付け、深めるために、どのような方法があると考えているだろうか。講座の受講や資格の取得などいずれも大切だ。そこに新聞を読む習慣づくりを加えてほしい。

 春の新聞週間が始まった。新入学や就職などに合わせたキャンペーンで、県内の大学に設けられた新聞の試読コーナーでは、購読していない学生も全国紙や地方紙を手に取ることができる。

 新聞をめくると、自民党派閥の裏金問題や台湾の地震など国内外のニュースから地域の話題まで、さまざまな記事が載っている。新聞を読む効果として感じやすいのは、正確性や信頼性の高い記事を会話の種として生かせることだ。企業の採用担当者や会社の上司、取引先と会話が続かないといった人にまず勧めたい。

 興味のある記事を継続して読むと分かってくることがある。小林製薬の「紅麹(べにこうじ)」を使ったサプリメント問題を例に考えてみたい。

 問題が判明した当初に福島民友新聞は、後手に回った事業者の対応や健康被害の概要、サプリのパッケージ写真などを分かりやすく掲載した。その後も原因究明の動きや、健康被害との関連が疑われる化合物についての専門家の見解などを連日取り上げている。

 予期せぬ問題に企業はどう対応すべきか、食品の安全を守る国の制度に不備はなかったか―。物事のつながりや問題の全体像を俯瞰(ふかん)して把握することで、多くの課題が浮かび上がってくる。

 新聞を読む習慣を身に付けることはニュースのポイントを的確に押さえ、自分なりの問題意識を持つことにつながる。さまざまな記事に触れて問題の切り口を見つけ、掘り下げることで、学業での課題設定や会社の危機管理などに役立つことを実感できるだろう。

 岸田文雄首相の声や画像を使った偽の動画が昨年秋、交流サイト(SNS)上で拡散した。首相の声を生成AI(人工知能)に学習させて作られたとみられる。

 生成AIで作られた偽の映像や音声が選挙などに影響を与え、世の中を誤った方向に導く恐れがある。今のネット社会では利用者の趣味嗜好(しこう)が読み取られ、自分の興味がある情報ばかりが流れてきがちになることも看過できない。

 センセーショナルなネット情報に接した際に、1日置いて新聞をめくれば情報の真偽や価値が分かるはずだ。何紙か読み比べることで、自分の考えに偏りがないかを確認できる。デジタル時代に潜む落とし穴を新聞で埋めよう。

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