『おいハンサム!!』Season2も“変わらない”安心感 愛すべき伊藤家と再会できる喜び

1月クールに『不適切にもほどがある!』(TBS系)や『おっさんのパンツがなんだっていいじゃないか!』(東海テレビ・フジテレビ系)といった“昭和気質”なおじさんを主人公にしたドラマが流行したとなれば、『おいハンサム!!』(東海テレビ・フジテレビ系)の続編をやるにはもってこいのタイミングではないだろうか。

とはいえ『おいハンサム!!』で吉田鋼太郎が演じる伊藤源太郎は、不適切でもなければアップデートが殊更必要なおじさんでもない。たしかに昭和気質の旧型タイプではあるけれど、実直で無害で、ただただ3人の娘が心配で仕方がないというおかしくもしがない、それでいて時に愛らしい、まるで昭和の時代から長年愛されてきたマスコットキャラクターのような存在である。

2年前の1月クール、土曜の23時枠で放送されていた『おいハンサム!!』のSeason1。当時、何の気なしに流し見でもしようかとチャンネルを合わせてみれば、武田玲奈演じる三女の美香が一人暮らしをしたいとわめき、とんとん拍子で引越しを完了する冒頭シーンで一瞬で引き込まれた。さらにそこへヤカンを持って現れた源太郎とのチグハグなやり取りも然り、脚本も演出もすべてにおいてパーフェクトで、流し見するにできないレベルのドラマが始まったと度肝を抜かれたほどだ。

しかもその第1話の後半、源太郎が取引先の大森(浜野謙太)とその後輩の山下(京典和玖)と蕎麦屋に行く一連。それまでは膨大なセリフ量で畳み掛けるようなドラマになると思わせておいて、このシーンでは日常のちょっとした“気付き”を些細な動作と視線の演技によって時間をたっぷり使って見せてくれる。その巧妙さがまたこの作品に釘付けになってしまう理由の一つであり、毎週土曜日にこのドラマを観るのが楽しみで仕方なくなったことはいうまでもないだろう。

源太郎と美香、長女の由香(木南晴夏)、次女の里香(佐久間由衣)、そして母親の千鶴(MEGUMI)の伊藤家5人と、彼ら彼女らを取り巻くあまりにもダメな男たちや、奇妙だけれどどこかその辺にいそうなシュールな登場人物たちの個性と軽妙な掛け合い。もちろん伊藤家の面々のユニークさもそれに負けないぐらい強烈であり、観れば観るほどその細部まで観ていたくなる。筆者はNetflixの配信ですでに軽く10周はしているはずだ。

“食”がひとつのテーマとして据えられているとはいえ、近年多々見受けられるいわゆる“飯テロドラマ”のように意図的に食べ物をピックアップすることはせず、あくまでもさりげなく、家庭や職場など登場人物たちの人間関係のなかに器用にそれを順応させていく。全体を通して“衣食住”という人間の生活においてファンダメンタルな3要素を引き立て、その土台のうえで恋愛なり人間関係なりといった彩りを散りばめてコメディへと昇華させる。

もちろんそこに連続ドラマにありがちなミステリアスなクリフハンガーで繋ぎ止めようとする策は打たれず、きちんと伊藤家の人たちの日常生活が毎日続いているのだと示すように連続ドラマとして物語がつなげられていく胆力に、シンプルながらも驚かされる(そうでなくても伊藤理佐による複数の原作漫画をミックスして一本のドラマに仕立て上げていること自体が驚きではあるが)。Season1は全8話。観るたびにいっそ4クールぐらいぶっ通しでやってもらいたいと思い続けてきたら、ようやくSeason2とまさかの映画版の製作が発表された2024年の1月。これはもう歓喜せずにはいられない。

しかしながら、ここに具体的な例を挙げるまでもなく、評価されたから・流行ったからという理由付きで続編が制作された作品には、どうしたって不安はつきものである。最初が受け入れられたのをいいことに、妙にスケールアップして初期のトーンやカラーを薄めてしまったり、安直で凡庸な二番煎じを繰り返してしまったり。ところが『おいハンサム!!2』に関しては、その心配は一切無用である。ひと足先に第1話を鑑賞させてもらったが、期待通り、良い意味で誰も、何も変わっておらず、このドラマの“お約束”といえるマインドをきちんと継承しながら登場人物たちに2年の時間経過を与えている。ほとんど“2年ぶりに放送された第9話”という感触である。

前作ではやんわりとモテ期だった由香は非モテ期に突入し、離婚して実家に出戻っている次女の里香は良い出会いに恵まれずにやさぐれモード。ユウジ(須藤蓮)との交際を源太郎に認めてもらった美香だったが、売れっ子になったユウジには他の女の影があり疑心暗鬼に陥る。そんな娘たちにやきもきする源太郎と、いつも通り達観した感じで見守る千鶴。そして物語は、源太郎がある朝に首を寝違えて昔使っていたコルセットをつけるところから始まるのだ。

このドラマを存分に楽しみたいのであれば、当たり前ではあるがSeason1を先に観ておくのが理想的だ。観ていない人はいまからでも配信なりで追いかければきっと間に合うはずだ。メインキャラクターを含め、登場人物もほとんどが前作から引き継がれており、由香がたびたび頼りにする占い師(光宗薫)も登場するし、Season1では一切顔が映らなかった“『アフリカの夜』の男”と里香のその後も描かれる。おそらく今後のエピソードでも、再登場キャラが物語に介入してくるのだろうか(願わくば高杉真宙演じる大倉学に再登場してほしいのだが)。

そして、富田靖子が演じる不思議なトーンのご近所さんだったり、逢沢りな演じる鼻血を自在に操れるユウジのおっかけファンだったりとパンチの強い新キャラも続々登場する。まだ告知はされていないので言えないが、第1話からあまりにも意外な人物が現れるので油断は禁物。また、Season1を観ている人は序盤の台所のシーンで伊藤家の目玉焼きのルールを思い出すだろうし、美香とユウジの取っ組み合いや由香の部屋の電気スタンドのポーズにワクワクして、伊藤家に帰ってきた気分になることだろう。この変わらない安心感を保ちながら、Season2と6月に控える映画版まで一気に駆け抜けてくれるに違いない。
(文=久保田和馬)

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