北朝鮮戦「中止」、世界王者「遠征」、欧州「強豪対決」の裏で開催【新大会「FIFAワールドシリーズ」の大問題と可能性】(1)

日本代表と北朝鮮代表の第2戦の中止が話題になる裏で、世界では新たな動きが起きていた。撮影:原悦生(Sony α‐1使用)

国際サッカー連盟(FIFA)の下、サッカーは膨張を続けている。今年に入ってスタートした新たな大会「FIFAワールドシリーズ」は、どのような意味を持つのか。サッカージャーナリスト大住良之が考察する。

■北朝鮮との「第2戦」に日本が振り回された裏で…

3月下旬、日本のサッカーは北朝鮮に振り回された。3月21日に東京・国立競技場で、そして、26日には平壌の金日成競技場でのワールドカップ・アジア2次予選が行われるはずだったが、国立で1-0の辛勝を収めた直後に、「平壌での試合ができなくなった」とのニュースが伝わったのだ。

一時は「第三国」での開催の可能性も伝えられたが、結局、実現できず、国際サッカー連盟(FIFA)が「没収試合、3-0で日本の勝利」と決定した。この結果、日本の3次予選進出が決まった。

3月18日から26日の9日間は、FIFAが定めた「国際試合ウインドー」のひとつで、各国の代表チームは代表選手を招集して、それぞれ2試合、国際試合を行うことができた。アジアサッカー連盟(AFC)はワールドカップの2次予選の第3節と第4節にあて、4チームずつ9グループ、計36チームが21日と26日に予選を戦った。

一方、世界のサッカーをリードする地域である欧州では、今年6~7月の欧州選手権(ドイツ)の最終プレーオフが組まれ、ポーランドを筆頭に12チームが4チームずつ3組に分かれて戦い、最終的にポーランド、ウクライナ、そしてジョージアの3チームが出場権を獲得した。そして、必然的に欧州の強豪各国は公式戦がなく、3月の「国際ウインドー」では数多くの親善試合が行われた。

もうひとつの「世界の雄」である南米も、世界に先駆けて昨年9月にスタートしたワールドカップ予選(全18節)がこの3月は休みで、欧州選手権と同じ時期に行われるコパアメリカ(南米選手権)の準備のための親善試合日程となった。

というわけで、今年3月の「国際試合ウインドー」には、久々に欧州と南米の強豪同士の親善試合が組まれ、世界の耳目を集めたのである。「世界チャンピオン」のアルゼンチンは、エルサルバドルとコスタリカとの親善試合をアメリカ合衆国内で行って「ギャラ稼ぎ」に専念したが、ブラジルはイングランド、スペインとのアウェーゲームを行い、1-0の勝利、3-3の引き分けという成果を残した。その他にも、フランス×ドイツ(0-2)、ドイツ×オランダ(2-1)、イングランド×ベルギー(2-2)など、「ビッグゲーム」が大きな話題となった。

■5つの国で行われた新大会「FIFAシリーズ」

こうした中、まったく話題にならなかったが、今後の世界のサッカーに影響を与える可能性のある大会が世界の各地で開催された。それが「FIFAシリーズ」である。

話は2022年12月、カタールで開催されていたワールドカップの終盤、FIFAの記者会見でのジャンニ・インファンティーノ会長の発言にさかのぼる。2年に一度、偶数年の3月に、ナショナルチームが他の地域連盟のナショナルチームと対戦する親善大会「FIFAワールドシリーズ」をスタートする――と発表したのだ。

同時に発表された「32チームによるFIFAクラブワールドカップ(2025年から4年に一度開催)」、「9月と10月の国際試合ウインドーを合併させ、4試合を行う(2026年から実施)」も十分、衝撃的だったが、FIFAが親善試合をコントロールし、世界規模の交流の機会にしようという「FIFAシリーズ」の試みは、それ以上に注目された。

その「パイロット大会」と位置づけられたのが、今年3月、5つの国で開催された6グループの「FIFAシリーズ」だった。参加したのは各グループ4チーム、計24の代表チームだった。

開催を引き受けたのは、アルジェリア、エジプトのアフリカ2か国、アゼルバイジャン(欧州)、そしてサウジアラビア(2グループ)とスリランカのアジア2か国だった。1グループは4チームで構成され、エジプトでは「1回戦=準決勝」の敗者同士で3位決定戦、勝者同士で決勝戦という方式だったが、他のグループはすべて4チームが決められた2試合をして、勝点で順位を決めるという「親善大会」ならではの方式がとられた。

■日本人監督が率いる190位「モンゴル」も奮闘

「FIFAシリーズ2024アルジェリア」には、ホストのアルジェリア(今年2月時点のFIFAランキング43位)の他、欧州からアンドラ(164位)、南米からボリビア(86位)、アフリカから南アフリカ(58位)が集まった。このうちアンドラは、当初予定されていたアルバニアが欧州内での親善試合をすること(チリ、スウェーデンと対戦)になったために棄権、代替出場となったものだった。

ホームのアルジェリアがボリビアに3-2、南アフリカとは3-3と2勝1分けで優勝。アンドラは初戦南アフリカに1-1で引き分ける奮闘を見せたが、2戦目はボリビアに0-1で敗戦。勝ち点1で最下位に終わった。

「FIFAシリーズ2024アゼルバイジャン」は、アゼルバイジャン(113位)の他、欧州のブルガリア(83位)、アジアのモンゴル(190位)、アフリカのタンザニア(119位)が出場。日本の大塚一朗監督が率いるモンゴルは、アゼルバイジャンに0-1、タンザニアに0-3と連敗、最下位に終わったが、奮闘が称えられた。ブルガリアとアゼルバイジャンがともに1勝1分けで首位を分け合った。

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