ロープウェイ利用「山頂まで2時間」春の北アルプスへ! 高校生の娘の「雪山デビュー」登山レポ

西穂丸山からの景色。正面に焼岳、その奥に乗鞍岳(撮影:兎山 花)

低山の雪山歩行に慣れ親しんでくると、アルプスの雪山に興味を持つ人もいるであろう。そんな人に、アルプスの雪山デビューにぴったりの「西穂高岳 丸山(通称:西穂丸山)」を紹介したい。

寒さも和らぐ春の残雪期であれば、軽アイゼンとストックで登頂可能だ。この記事では、北アルプスで雪山デビューをした高校生の娘と一緒に登った、残雪の西穂丸山登山をレポート。残雪期の西穂丸山の魅力と北アルプスの大絶景を楽しんでもらいたい。

■アルプス雪山デビューにおすすめの「西穂丸山」とは

西穂丸山山頂、正面に笠ヶ岳が見える

西穂高岳 丸山(通称:西穂丸山)は、長野県松本市と岐阜県高山市にまたがる標高2,452mの山。北アルプスの南部に位置し、360度視界が開けた山頂からは北アルプスの山々を展望できる。

登山口までは、標高1,117mの新穂高ロープウェイ「新穂高温泉駅」から2つのロープウェイを乗り継ぐ。約25分の空中散歩で標高2,156mの場所にある「西穂高口駅」まで一気に標高を上げるため、約2時間弱で西穂丸山山頂へたどり着けるのも大きな魅力だ。

登山口から西穂丸山に向かう途中、山頂よりも15分ほど手前の場所には、通年営業の山小屋「西穂山荘」があり、急な天候不良など万が一の場合も安心である。また残雪期、多くの登山者が西穂丸山に訪れるため、踏み跡もあり迷いにくい。

これらの理由から西穂丸山は、はじめてのアルプスの雪山登山にうってつけの山である。

■高校生の娘と歩く西穂丸山

2023年4月初旬、筆者は高校生の娘と西穂丸山へ向かった。娘にとってはじめてのアルプスの雪山登山。当日のお天気は快晴、暖かくて残雪期のアルプスデビューにうってつけの日であった。西穂丸山は、日帰りで登山することも可能だが、筆者たちは北アルプスの雪山を満喫するため、西穂山荘に1泊することにした。

ロープウェイ終点の西穂高口駅から登山スタート。ロープウェイを降りると、たくさんの登山者が西穂山荘方面に向かって歩きだしている。踏み跡をたどりながら、登山道に結ばれている赤いリボンを目印にして歩くためわかりやすい。西穂山荘までは小さなアップダウンを繰り返しながら、樹林帯の中を進んでいく。

この日は風もなく暖かい日で、娘は歩き出し早々に上着を一枚脱いだ。ゆるやかな道をしばらく進むと、急登が現れる。西穂丸山までの道のりで一番ハードな上りである。途中休憩をとりながらゆっくりと登ることにした。標高差200mほどを一気に登ると西穂山荘に到着。ここまで1時間半ほどである。

西穂山荘に到着すると一気に視界が開け、目の前に美しい山容の霞沢(かすみざわ)岳が現れる。

霞沢岳を見ながら、お昼休憩。持参した雪山用スコップでテーブルとイスを作り、その上でお湯を沸かす。雪山で食べる熱々のカップラーメンは格別の美味しさで、娘も幸せそうな表情だ。

昼食後は、山荘前の広場で持参したソリで滑ったり、雪だるまを作ったりと、積雪のない地域に住む高校生の娘は童心に帰って雪遊びを楽しんでいた。

夕方になると、霞沢岳は沈む太陽の光を受けてオレンジ色に染まり、いっそう美しく見えた。

■翌朝、西穂丸山へ

翌朝、西穂丸山に向かう。西穂山荘から15分ほどの登りで山頂に到着。山頂は360度の大パノラマの絶景で、目の前に笠ヶ岳の稜線、南に焼岳、その奥に乗鞍岳が見える。北アルプスの大迫力な雪景色を手軽に、こんなに間近で見られる山はめったにない。

のんびりと景色を楽しみたいところであるが、氷点下の気温の中、寒くてじっとしていられないため、早々に下山することにした。西穂山荘までの下りは、目の前に焼岳や乗鞍岳を見ながら歩くので、最高の稜線歩きが楽しめる。

山荘まで戻ってくると、再度装備を整えて下山開始。日帰りの場合は、下りのロープウェイに間に合うように時間に余裕を持って下山しよう。

■必ず立ち寄りたい、新穂高ロープウェイ展望台

今回の登山のもう一つの楽しみが新穂高ロープウェイの駅での観光である。新穂高ロープウェイは日本で唯一の2階建てロープウェイだ。

新穂高ロープウェイの終点、西穂高口駅に着いたらぜひ最上階にある展望台に立ち寄ってみてほしい。展望台に上ると巨大な雪だるまが我々を迎えてくれたので、まずは雪だるまと記念撮影。展望台からは笠ヶ岳や焼岳、乗鞍岳、さらに西穂高岳、奥穂高岳へ続く荒々しい稜線も見える。

筆者たちはこの展望台に行き帰りとも立ち寄った。風が強く、寒い西穂丸山の山頂から見るのとまた違って、安心して景色を満喫できるからだ。また、3か所ある各ロープウェイ駅にはモンベルコーナーや売店、軽食喫茶がある。売店ではオリジナルの西穂高岳グッズや飛騨の特産品など色んな商品が売られているのでショッピングも楽しめる。各駅によって店舗が異なるので、時間があればそれぞれの駅に立ち寄ってみよう。

筆者のおすすめは、しらかば平駅の「アルプスのパン屋さん」。焼きたてパンとドリンクを購入して、ソファー席や外の足湯で景色を見ながら食べられるのがよい。登山と観光、両方楽しめるのも西穂丸山の魅力である。

■視界不良、風が強いときは迷わず引き返そう

登山口から往復4〜5時間ほどで、北アルプスの雪山登山を楽しめる西穂丸山。娘も手軽に絶景と雪山を満喫でき「楽しかった、また行きたい!」と大満足の様子だった。

しかし、山頂付近の気温は氷点下で、西穂山荘から丸山までの稜線上は風が強く、体感温度はさらに下がる。筆者たちは4月初旬に訪れたが、春と言えどもまだまだ寒く朝晩は氷点下になった。防寒着や顔を覆うバラクラバ、厚手の手袋や靴下など防寒対策は必須である。

また視界不良時や風が強いと思ったら、登頂をあきらめ迷わず引き返す勇気も必要だ。安全に配慮して、思い出に残る残雪期の北アルプス登山にのぞもう。

【基本情報】
・施設名:新穂高ロープウェイ
・住所:岐阜県高山市奥飛騨温泉郷新穂高温泉
・電話番号:0578-89-2252
・ロープウェイ往復料金:3,300円
・ウインター(12/1〜3/31):始発9:00、下り最終16:15
・グリーン(4/1〜11/30):始発8:30、下り最終16:45

※営業日時はホームページよりご確認ください

※この記事の情報は2024年3月現在のものです。内容が変更される場合もありますので、最新の情報はリンク先のHPでご確認ください。

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