『GTOリバイバル』“時代遅れ”だからこそ現代性を獲得 国内ドラマの可能性を広げた一作に

反町隆史主演のカンテレ・フジテレビ開局65周年特別ドラマ『GTOリバイバル』が4月1日にカンテレ・フジテレビ系で放送され、反響を呼んでいる。

破天荒な行動ゆえに、どの学校でもクビになっていた教師・鬼塚英吉(反町隆史)はかつての教え子たちに頼まれ、私立相徳学院高校に赴任することとなる。学校ではフォロワーが200万人近くいる暴露系インフルエンサー“裁ノカ笑”によって教師や生徒たちの暴露記事がネットに晒され、生徒も教師も「いつ自分が晒されるのではないか?」と疑心暗鬼に陥っていた。

『GTOリバイバル』は1998年に放送された連続ドラマ『GTO』の続編だ。藤沢とおるの漫画『GTO』(講談社)を1998年に連続ドラマ化した本作は高視聴率を獲得し、反町が歌う主題歌「POISON ~言いたい事も言えないこんな世の中は~」も大ヒットした。

その後『GTO』は、2012年にEXILE AKIRA主演でリメイクされ、人気シリーズとなったが、反町が主演を務める1998年版の続編は、1999年の劇場映画以来となる。

反町はこれまで『GTO』の続編のオファーを断っていたが、今回は反町による逆オファーによって企画がスタートしたという。続編を企画した理由の一つとして反町は、映画『トップガン マーヴェリック』で続編映画の主演を35年ぶりに務めたトム・クルーズの俳優としての生き方に共感したと述べている。

『GTOリバイバル』は、1998年のドラマで生徒役だった窪塚洋介や小栗旬といった俳優が成長した姿で登場していることもあってか、俳優主導のドラマという印象がとても強い。今作で反町が果たした役割はとても大きく、トム・クルーズのような俳優主導で作る国内ドラマの可能性を大きく広げたと言っても過言ではないだろう。

また、本作を語る上で外せないのが『GTOリバイバル』の主題歌としてリニューアルされたBLUE ENCOUNT × Takashi Sorimachi名義で反町が歌う「POISON」だ。

「POISON」は1998年のドラマ版では冒頭で前回のダイジェストとともに主題歌として流れ、劇中の山場でもアレンジの違うものが劇伴として流れていたため、視聴者の耳に深く刻まれており『GTO』=「POISON」と言っても過言ではなかった。

今回の『GTOリバイバル』でも、暴露系インフルエンサーとの対決を通して、1998年以上に「言いたいことも言えないこんな世の中」になってしまったSNS社会に翻弄される2024年の日本を学園ドラマを通して炙り出した内容に仕上がっている。

元々、『GTO』は暴走族出身の鬼塚が高校生たちと向き合うジェネレーションギャップが描かれた学園ドラマだった。一見真面目な優等生に見えるが裏で陰湿なイジメや援助交際をおこない、親や教師には理解不能な怪物に見えている生徒に対し、鬼塚は元不良の行動力と友達のような距離の詰め方で生徒たちと向き合っていく。そして、そんな鬼塚の姿を見て、事勿れ主義だった同僚の教師たちが目覚めていく姿が作品の見どころだった。

この構造は『GTOリバイバル』でも踏襲されている。鬼塚が老いたことで、生徒たちとのジェネレーションギャップはさらに強調されており、鬼塚の時代遅れ感はより際立っている。しかしどれだけ時代からズレようと鬼塚の魅力は変わらない。生徒のことを一番に考え、社会的規範を逸脱した行動も躊躇なく選択できてしまう鬼塚のめちゃくちゃさは「若さ」という後ろ盾がないからこそ、より輝いて見える。

鬼塚の古さが逆に武器になっていることが『GTO』の面白さだったが、古さを認めることで掬い上げることができる普遍性が存在するのだと、本作を観て改めて実感した。

2022年に劇場映画となった『Dr.コトー診療所』や、12年ぶりに新プロジェクトが始動することが報じられた『踊る大捜査線』など、過去にフジテレビ系で放送された人気ドラマの続編が作られる機会が増えている。

90~00年代のフジテレビのドラマは時代のトレンドを踏まえたポップなエンタメ作品が多いため続編が作られるのは当然だと言える。しかし、ヒットしたテレビドラマは作品が作られた時代の空気が色濃く反映されてしまうため、時代の空気が変わると途端に古臭いものに変わってしまう。そのため、新しさと古さ、どちらに軸足があるのかわからない迷走した続編も少なくない。

対して『Dr.コトー診療所』は、ドラマ放送時は若かった出演俳優が年齢を重ねた姿で登場し、昔は成立した英雄的振る舞いは時代遅れだと批判される場面を徹底的に描くことによって、逆説的に現代性を掴み取ることに成功していた。

おそらく『踊る大捜査線』の新作は、老いた室井慎次(柳葉敏郎)の姿が描かれることになるのだろうと思うのだが、古い時代の生き方を貫く主人公が現代と衝突する姿をうまく描くことができれば、『GTOリバイバル』のように「古さゆえ」に意味のある作品に仕上がるのではないかと思う。

若い時に観ていたヒーローが老いて時代遅れになっている姿を見るのは心苦しいものがあるが、だからこそできることもあるのだと『GTOリバイバル』は教えてくれた。本作の流れを引き継ぐ続編ものが増えることを期待したい。

(文=成馬零一)

© 株式会社blueprint