モドリッチ参戦「エジプト大会」、予選中「サウジ」も開催、激増「出場国」【新大会「FIFAワールドシリーズ」の大問題と可能性】(2)

エジプト大会にはルカ・モドリッチらクロアチア代表が出場した。撮影/渡辺航滋(Sony α‐1)

国際サッカー連盟(FIFA)の下、サッカーは膨張を続けている。今年に入ってスタートした新たな大会「FIFAワールドシリーズ」は、どのような意味を持つのか。サッカージャーナリスト大住良之が考察する。

■貫禄を示した強豪中の強豪「クロアチア」

「FIFAシリーズ2024エジプト」は、ホストのエジプト(36位)の他、欧州のクロアチア(10位)、オセアニアのニュージーランド(103位)、アフリカのチュニジア(41位)と、今年の「FIFAシリーズ」で唯一「ワールドカップ・クラス」が集まった。クロアチアは2018年ワールドカップ・ロシア大会で準優勝、2022年カタール大会でも3位という強豪中の強豪である。

唯一の「勝ち上がり方式」の大会。1回戦で2022年ワールドカップ出場国同士のクロアチアとチュニジアが激突して0-0からPK戦5-4でクロアチアが勝ち、ニュージーランドを1-0で下したホスト国エジプトと決勝戦で対戦。MFルカ・モドリッチを中心にワールドカップ出場選手を並べたクロアチアが4-2の勝利。貫禄を示した。

■アジア2次予選を戦った「サウジアラビア」の思惑

「FIFAシリーズ2024サウジアラビアA」には、アジアのカンボジア(179位)、アフリカのカボベルデ(65位)、アフリカの赤道ギニア(79位)、北中米カリブ海のガイアナ(157位)が出場、「サウジアラビアB」には、北中米カリブ海のバミューダ(171位)、アジアのブルネイ(194位)、アフリカのギニア(76位)、オセアニアのバヌアツ(170位)が出場した。試合はすべてジッダで開催された。

両グループは、いずれも「ホスト国なし」という特殊な形。この3月の国際試合ウインドーで、サウジアラビアはワールドカップのアジア2次予選を戦っており、タジキスタンを相手にホーム(リヤド)で1-0、アウェーで1-1と厳しい試合となっていた。「自国代表」がいないのにサウジアラビアが2グループの計8試合を受けいれたのは、最近の「観光立国」としてのアピール、そしてまたFIFAとの関係強化のためだったと思われる。

「A」グループではカボベルデ、「B」グループではギニア、ともにアフリカ勢が優勝を飾った。カンボジアは赤道ギニアに0-2、ガイアナに1-4の連敗、ブルネイはバミューダに0-2で敗れたが、バヌアツを3-2で下して2位を占めた。

■2026年から「48か国に増える」ワールドカップ出場国

そして「FIFAシリーズ2024スリランカ」には、ホスト国スリランカ(204位)の他、同じアジアのブータン(184位)、アフリカの中央アフリカ(129位)、オセアニアのパプア・ニューギニア(165位)が出場。今大会唯一の「FIFAランキング200台」のスリランカだったが、パプア・ニューギニアと0-0で引き分け、ブータンに2-0で勝って、中央アフリカに次いで2位を占めた。

現在FIFA加盟国は211。4年に一度開催されるワールドカップには、2026年のアメリカ/カナダ/メキシコ大会から48か国が出場する(2022年カタール大会までは32か国だった)。しかし、その出場国は、限られた国に集中している。アジアサッカー連盟(AFC)で見ると、今世紀に入って2002年から2022年までの6大会で出場権を獲得したのは、47の加盟国中、わずか8か国にすぎない。

ワールドカップに出場できない国にとって、代表チームが対戦できる公式戦の相手は、基本的に自地域の国に限られる。他地域のチームと親善試合をしようとしても、最近はどんどん難しくなっている。欧州サッカー連盟(UEFA)では、親善試合をできるだけなくそうと「UEFAネーションズリーグ」をスタート。南米のチームも全18節にわたるワールドカップ予選で忙しく、空き日程があっても、安いギャランティーでは来てくれない。

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