転職後に後悔しないために…「オーナー企業」への幹部転職、採用選考で“絶対に確認すべき”ポイント【エグゼクティブ転職のプロが解説】

(写真はイメージです/PIXTA)

転職先として検討しているのが「オーナー企業」である場合、採用選考中に確認しておきたいポイントがあります。本稿では株式会社経営者JPの代表取締役・CEOの井上和幸氏が、オーナー企業での採用選考プロセスにおいて、どのようなことに注意すべきかを解説します。

オーナー企業への転職で確認したいポイントとは

メディアでも注目されている若手起業家が率いるスタートアップ企業。老舗で伝統商品を扱う何代目かの社長が率いるファミリー会社。大手で言えば、柳井さん率いるファーストリティリング、永守さん率いるニデック(旧・日本電産)、三木谷さん率いる楽天に星野さん率いる星野リゾートなどなど。

もちろんこうした有名企業・注目企業でなくとも、その会社の代表者が会社の支配株主である「オーナー企業」は多く存在しています。日本企業の約72%はオーナー企業だと言われています。

エグゼクティブ(管理職)の皆さんが転職先を選定される際に、応募先企業としてそんな「オーナー企業」を選ぶケースがあると思います。

オーナー企業ならではの、カリスマ社長のもとで経営参謀として活躍するチャンスがある。あの社長のもとで直に働いてみたい……そんな希望を転職時に想い描く方も少なくありません。

自ら望んで選んでいる場合、あるいは選んだ企業がたまたまオーナー企業であったという場合。いずれにしても、オーナー企業への転職を検討する際には、選考中に確認したいポイントがあります。

応募先は「どのような」オーナーの企業か?

おそらくほとんどの方が気になると思いますが、まず押さえたいのは、応募先は「どのような」オーナー企業かということです。

創業者でしょうか? あるいは何代目かの社長でしょうか? スタートアップやベンチャー企業であればほとんどの場合、創業経営者でしょうし、中堅中小企業であれば2代目、3代目、4代目、あるいは老舗といわれる企業であれば、かなり多くの代を重ねられているでしょう。

創業者であれば、社長自体がその会社のMVV(ミッション・ビジョン・バリュー)の体現者であり、組織風土の源(みなもと)です。社長を見ることで、その会社をほぼそのままイメージできます。

一方、何代目かの社長の場合、その会社のファミリーとしての考え方や行動規範などがどう受け継がれているのかに着目しておいたほうがよいでしょう。脈々と家訓が受け継がれている会社もあれば、とくにそうしたものはない(すでになくなっている)という会社もあります。

気をつけたいのは、ファミリーが社長以外に、他の役員や社員にいるかどうかです。いること自体が必ずしも悪いわけではありませんが、ファミリーが経営陣に複数存在しているときに念のため確認しておきたいことがあります。

それは、2ボイス、3ボイスになっていないか(経営陣での意見が割れたり、ダブルスタンダードになるような状況がないか)です。経営の意思統一が難しい企業は、マネジメントとして職務に邁進しにくいことが多いのは事実です。

大事なことは、オーナー、あるいはオーナー家としての<色>が、あなたの肌に合うかどうか。これはオーナー企業に入社する際の、極めて重要なチェックポイントであることを、ぜひご認識ください。

仕事の進め方や判断の仕方として入社後にずっと付いて回る部分です。ここがずれていると、職務遂行以前に違和感や窮屈感をずっと持ち続けて働くことになってしまいます。

オーナー企業ならではのメリットとデメリットを認識する

どのタイプのオーナー企業かにもよりますが、オーナー企業に総じて共通して言えるのは、オーナーの意思決定や行動が及ぼす影響が大きいということです。

そこでメリットと言えるのは、意思決定スピードの速さやダイナミックさであったり、昇進や抜擢のチャンスの大きさだと思います。やる意味、価値ありとなれば、無用な稟議やコンセンサスゲームなどなしで、即断即決して動くことができます。

また、ここは彼・彼女に任せることができるというオーナーの信頼を勝ち取れば、一気に経営陣や責任者に登用されることも、オーナー企業であれば日常茶飯事です。

積極果敢にチャレンジし、成果を上げ、役割や裁量をスピード感を持って拡大していきたいという志向を強く持つ人なら、オーナー企業を選択すべきでしょう。

一方、デメリットとしては、上記の裏返しですが、よくも悪くもオーナー社長の意思がすべてになりがちであること。これまでの同社の意思決定や実行が、社長の独断専行であるような場合は、あなたご自身の志向やスタイルとよく相談して参画可否を決めましょう。

後継問題も多くのオーナー企業の共通テーマです。オーナーの現在の年齢なども鑑み、いつ頃、次期後継者の問題が出てきそうかも確認しておくべきポイントです。オーナー会社でなくとも、トップの交代はマネジメント層の方々のキャリアにダイレクトに影響を及ぼすことが多くあります。

特に現在のトップの方向性に強く共鳴できていたり、トップとの相性がよくあなたが重責を任されているような場合、トップ交代によって、よいコンディションが180度変わってしまう場面を私も嫌というほど見てきました。

ファミリーの存在有無や既存社員の中での後継者候補の有無によっては、あなたが後継のポストを狙う・期待するなら、逆にチャンスがあるとも言えますね。

オーナー企業での選考プロセスで必ず留意したい点

では、そんなオーナー企業での採用選考プロセスについて、どのようなことに注意すべきでしょうか。

オーナー企業の選考で必ず確認したい点として、採用の意思決定プロセス(どのように最終決定するのか)、幹部陣の動き方、入社後の配属や昇進の決定プロセスが挙げられます。

採用決定は、一定の経営陣や人事との合議で決められるのか、あるいは社長の一存がすべてなのか。選考中の経営幹部陣の関与はどのようになっているか。入社後の配属や昇進についてオフィシャルなルールが存在しているのか、あるいはとくにルールはなく、これも社長の一存なのか。

最初に挙げた<色>の相性、意思決定スタイル面での相性・価値観合わせを、できる限り選考中にしっかり行ってください。繰り返しになりますが、ここがずれていることは、あなたが働く上で無用のストレスを常時抱えることになります。

あなた自身の選考に臨む姿勢面での注意点は、あなた自身の意思決定スピード、社長との相性&幹部陣との相性、自身のキャリアビジョンとの合致度です。

あなたが応募先企業の意思決定スピードやスタイルに惚れ込んだとしても、あなたの意思決定スピードやスタイルが自社と同じ以上でなければ、先方には魅力なしと判断されてしまいます。

会話のキャッチボールの気持ちよさ、共通の言語、判断のフレームを持ち合わせているか。そしてオーナー企業で最終的に最も問われるのは、その応募者が自分の転職先を決めるために必要な情報を効率的に収集し、自身で判断軸を作り、それに基づいてスピード感をもって明快な最終意思決定ができることです。

内定オファーが提示された段階で、この部分での明確なファイナルジャッジが(本人には明示されなくても)下されていることを、ぜひ認識いただければと思います。

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転職先としてオーナー企業を選択することは、あなたのキャリアにとって大きな武器となるケースもあれば、ハンデとなるケースもあります。どちらに転ぶ可能性が高いか、しっかり見極めながら応募と選考を進めてください。

井上 和幸

株式会社 経営者JP

代表取締役社長・CEO

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