「私たちはここにいた」校内サポートルームの生徒7人、卒業記念の貼り絵に込めた思い 兵庫・川西の多田中学校

卒業生7人が取り組み、ほっとルームに飾られている貼り絵=川西市新田2、多田中学校

 兵庫県川西市立多田中学校(新田2)で不登校の生徒が過ごす校内サポートルームに、今春卒業した7人の卒業制作の貼り絵が飾られている。修学旅行で訪れた沖縄の思い出を基に、海や空を悠々と泳ぐジンベエザメやクラゲ、熱帯魚を描き、「私たちはここにいた」という証しを刻んだ。(浮田志保) ### ■楽しく過ごせたということを知ってほしい

 同校のサポートルーム「ほっとルーム」は、教室に入りづらい生徒の社会とつながる場として、2021年6月に開設された。同市では全国に先駆け、サポートルームを市内全小中学校に設置。担当教員と福祉職の経験がある支援員らが、1日2人体制で生徒らを見守っている。

 7人は体調不良や転入をきっかけに不登校となり、中学1~2年にルームへ通い始めた。担当教員らと課題の丸付けなどを通してコミュニケーションを取り、「どこでつまずいたのか」を一緒に考えていくうちに、生徒らは自ら学ぼうとするようになったという。登校回数は徐々に増え、教室にも顔を出すようになった。

 昨年5月の修学旅行前には、食事係や美化係などそれぞれの役割を確認する学年係会にも足を運んで少しずつ集団行動に慣れ、当日は7人全員が参加した。

 貼り絵を制作するきっかけは、担当教員の一言だった。「みんなで思い出の作品をつくろう」。7人は沖縄で印象深かったという水族館の生き物をテーマに選んだ。

 一人一人が書いた絵を1枚の紙に集め、鉛筆で色を塗りながらイメージを膨らませた。濃淡のある約20色の画用紙を1センチ四方に切り取り、縦77センチ、横134センチの段ボール紙に1枚ずつ貼り付けていった。半年ほどかけ、空や虹をバックに気持ちよさそうに泳ぐ生き物たちの姿を表現した。

 「ここで楽しく過ごせたということを一人でも多くの人に知ってほしい」。ルームでの日々を糧に7人は高校に進学し、新たな一歩を踏み出した。制作の様子を見守った当時2年生の女子生徒は「先輩たちが話し合いながら苦労してつくっていた。それぞれの思いが一つになった作品はすごい」と振り返った。

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