エクアドル警察、メキシコ大使館に突入し元副大統領を拘束 メキシコは断交

エクアドルの警察当局が5日、首都キトにあるメキシコ大使館に突入し、汚職疑惑で逮捕状が出され同大使館に保護を求めていたエクアドルのホルヘ・グラス元副大統領を拘束した。これを受け、メキシコはエクアドルと国交を断絶した。

突入時の写真では、警官隊がメキシコ大使館の閉鎖された入り口で、壁や金属フェンスを乗り越えている。

メキシコのアリシア・バルセナ外相は、同国の外交官が何人か負傷したとした。

メキシコのアンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール大統領は、エクアドルとの外交関係の即時停止を命じたとX(旧ツイッター)に投稿。

「エクアドルの警察は、私たちの大使館に押し入り、同国の元副大統領を拘束した。元副大統領は迫害と嫌がらせを受け、難民として亡命手続き中だった」と説明した。

そして、「これは明白な国際法違反とメキシコの主権に対する侵害だ」と主張した。

一方、エクアドル大統領府は、「エクアドルは主権国家であり、いかなる犯罪者も野放しにはしない」とする声明を発表。「エクアドルの司法制度によって禁固刑を言い渡された」グラス氏を逮捕し、「関係当局の指示下に置いた」とした。

元副大統領と汚職疑惑

グラス元副大統領は昨年12月、エクアドル当局から汚職疑惑で逮捕状が出されたのを受け、メキシコ大使館に逃げ込んでいた。

グラス氏の弁護士は、同氏は無実だとしている。同氏はグアヤキル市へ航空機で移送され、厳重警備の刑務所で裁判を待つことになる。

グラス氏は2013年に副大統領に就任。その後、汚職の疑いが強まり、2017年に解任された。

同年、ブラジルの建設大手オデブレヒトが絡んだ汚職事件に関連して禁錮6年の有罪判決を受けた。検察は、グラス氏が1350万ドル(約20億円)の賄賂を受け取ったとした。

2022年11月に釈放されたが、エクアドル当局はその後、さらなる汚職疑惑で別の逮捕状を発行。グラス氏はメキシコ大使館に保護を求めた。

メキシコ側は5日、状況を「徹底的に分析した結果」、グラス氏の政治亡命を認めたと発表していた。

ニカラグアも断交を発表

メキシコに続き、ニカラグアも5日、エクアドルとの断交を発表した。AFP通信によると、ニカラグア政府は声明で、「異常で非難されるべき行為」を受けた措置だと説明した。

メキシコとエクアドルは最近、緊張が高まっていた。メキシコのオブラドール大統領は3日、エクアドルのダニエル・ノボア大統領が勝利した昨年の大統領選挙の暴力に関して発言。エクアドル側はこれを「残念だ」としていた。

その翌日、エクアドルはメキシコ大使をペルソナ・ノン・グラータ(好ましからざる人物)に指定し、国外退去を命じた。

(英語記事 Mexico cuts diplomatic ties with Ecuador after Jorge Glas arrest

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