関口氏が画面から消えただけで新しさゼロ
2024年4月7日の『サンデーモーニング』、フルートのリードが爽やかな新オープニング曲に続いて、いよいよ新司会者の膳場貴子氏が登場しました。
膳場貴子氏:おはようございます。4月7日『サンデーモーニング』、今日から司会をいたします膳場貴子です。関口宏さんのバトンを受け継ぎつつ皆さんと新しい日曜日を作っていけたらなと思っています。どうぞよろしくお願いします。では早速1週間を振り返って行きましょう。
さっそうと登場した膳場氏ですが、コメンテーターは、相変わらずの寺島実郎氏、元村有希子氏、畠山澄子氏、松原耕二氏の4名、ハッキリ言って引き継ぎ過ぎです(笑)
先週、関口宏氏は「サンデーモーニングが終わってしまうわけではございません。私は今日で消えます」と宣言しました。結局、その宣言通り、セットは変わらず、番組構成も変わらず、制作プロデューサー金富隆氏も変わらず、スタッフもほぼ変わらず、関口宏会長の株式会社三桂の協力も変わらずで、本当に関口氏が画面から消えただけでした。
この体制である限り、当然、今後出演するコメンテーターも変わらず、彼らが主張するコメントも変わらないことは自明です。『サンデーモーニング』は司会者交代で変わるようなヤワな番組ではありませんでした。
司会者交代にヨコシマな期待を抱いていらっしゃった皆さん、実際私もそうなのですが、お花畑でした(笑)
政局評論家の得意技「イタコ芸」
ちなみに、もう一つ変わったことがありました。
膳場貴子氏:自民党の裏金問題をめぐる動きについて、駒田さん
駒田健吾アナ:今日からサブキャスターを務めます駒田健吾と申します。どうぞよろしくお願いいたします。自民党の裏金事件で処分が出ました。同じアベ派幹部でも処分の重さは違っていて、党内から不満の声が上がっています。
女子アナだけにニュースを読ませてきた時代錯誤のシーラカンス番組も、さすがに時代の波には勝てなかったようです。男性アナのTBS駒田アナがサブキャスターのトップ格として膳場氏の隣の席に常駐するようになりました。
駒田健吾アナ:萩生田氏への寛大とも取れる寛大な処分の背景にはこんな思惑があると言います。
星浩氏(VTR):アベ派は解散をするが100人規模の集団、荻生田氏は森氏との関係も良好なので「連絡役として使える」と政局的判断に繋がった。
駒田健吾アナ:そもそも処分の線引きに政治的判断を挟む余地があるのは裏金事件の真相解明をしなかったからだと星さんは指摘します。
政局になると番組に現れる政局評論家の星浩もVTRで登場しました。後藤謙次氏もそうですが、政局評論家が得意とするのは、政治家の思惑を勝手に想像して紹介してしまう「イタコ芸」であり、この日も例外ではありませんでした。
ここで注目したいのは「~と○○さんは指摘します」という駒田氏のアナウンスです。
これはTBSの情報番組でしばしば聞くことができる「TBS構文」と言える表現であり、政局評論家の根拠のない「妄想」を専門家の根拠ある「指摘」であるかのように偽装する効果があります。
そして視聴者がちょっと油断している隙に、いつのまにか「指摘」が「事実」であるかのように独り歩きしています。
TBSが巧妙なのは、この指摘は、あくまで○○さんの指摘であるため、仮に予想がハズれたとしてもTBSに責任が及ばないところです。
全て打ち合わせ通りの展開
膳場貴子氏:自民党内から「真相究明すべき」という声が今上がっていますけど、えっ今頃やっとという感じがどうしてもしてしまうんですよね。
駒田健吾アナ:「真相解明」という言葉が政治家の使命感から来るのであればいいんですけれど、個人的恨みから出た言葉じゃなければいいなと思ってしまいます。
膳場貴子氏:本当にそうですね。
この会話は打ち合わせ通りの発言と考えられます。
これまで『サンデーモーニング』では、主要なトピックのスタジオ・トークの前に、司会の関口氏と女子アナの会話で暗に結論を示してからコメンテーターにコメントさせるスタイルをとってきました。
膳場氏と駒田アナもこれを踏襲しています。膳場氏と駒田アナの会話によって、明らかに視聴者は、「真相解明」という言葉が政治家の使命感という美徳からくる言葉ではなく、個人的恨みという悪徳から出た言葉であると誘導されます。
これで事前の認知操作は完了です。
膳場貴子氏:これで幕引きとはいかないと思います。皆さん、どう考えていますか。
もうこの段階で、スタジオ・トークの結論はバレバレです。コメンテーターは、競うように司会者を喜ばせるコメントを語り始めます。勿論そこに多様性は皆無です。
まるで、ネットのエコーチェンバーにおいて、インフルエンサー様のご意向に沿って太鼓持ちを競い合う信者とよく似ています(笑)
寺島”禅問答”の洗礼
寺島実郎氏:奇怪な印象を持つのは、岸田政権の本質に関わる疑問だが、アベ政治なるものを継承しながら検証も総括もしないままアベ派を排除する奇妙なコップの中の嵐みたいなものを見せられている。
今真相解明と言うが、何の真相ですかと。僕はアベ政治というものの総体をね。「日本を取り戻す」と安倍氏は再登場してきたが、取り戻した日本って何なんですかと、よく国民として考えないと。
例えば、アベノミクスなるものが行き着いた先、このまさに円安の状況。さらに、要するに、統一教会との関係から焙りだされてきている政治の構図。それからプーチンに手玉に取られた外交。まもなく首相自らの訪米が迫っているが、日米同盟で中国に向き合おうっていう流れの中にいるわけだが、本当にそれでいいのかと。
沖縄・尖閣のこと考えて、台湾有事。そういうことを考えてアメリカに対して同盟国として日本が何を言うのか、凄く問われている瞬間だ。そういうことをトータルに頭の中に入れて、いわゆる真相解明なるものに向き合わなければいけない。
今回初登場の膳場氏におかれましては、寺島氏のあまりに難易度が高い奇怪な禅問答の洗礼に強烈なショックを受けたことかと思いますが、これは寺島氏にとっては通常のコメントなので、『サンデーモーニング』の司会者としては慣れていただくしかありません(笑)。
政治資金不記載問題に統一教会とかプーチンの話題が出てくることを理解するには相当のスキルが必要ですが、一応「真相解明」というキーワードを使って安倍氏を非難しているので、番組の趣旨には合致しているコメントかと思います。
「本当の意味での実態解明」とは?
元村有希子氏:「コップの中の嵐」と寺島氏がおっしゃったけれど、本当に国民が呆れてしまうような現状が起きている。
岸田氏の大好きな「説明責任」という言葉について考えてしまうが、「説明責任」って「アカウンタビリティ」だ。「アカウンタビリティ」を「説明責任」と訳して説明する責任は果たしていると皆言う。その説明の中身が「知りませんでした」「わからないんです」ということだけではダメだという専門家もいて「アカウンタビリティ」は「答責性」と訳すべきだと言っている。
つまり、説明するだけでなく結果責任にもきちんと責任を持つ、身を処すことまで含めて「アカウンタビリティ」を果たしてほしいと専門家が言っている。党内の混乱はどうなろうといいが、岸田政権の支持率が10%台まで下がっているような状況で、しかも難問が山積している。
これから国会審議もいっぱい残っている。その中で、この状態で自民党は政権与党でいいのか。一人一人が自分の胸に聞いて欲しい。
説明責任=アカウンタビリティは「ないこと」を挙証する悪魔の証明とは異なり、蓋然的に「ないこと」の状況証拠を示して説得する責任です。身を処すものではありません。自民党議員の「知らなかった」「わからない」という発言はアカウンタビリティの一つです。
そもそも、本人が自身の潔白を完全に証明することはできない(悪魔の証明)ので、その説明に相手が納得しない限り、この問題は永遠に終了しません。
常識的に考えれば、国家で最も厳しい捜査能力を持つ第三者委員会と言える検察が無罪を発表した段階で、当該議員に刑事罰を与えることはできません。国民が当該議員に懲罰を与える手段は投票行動のみです。また当該議員には説明責任よりも法改正を求めるのが論理的です。
畠山澄子氏:本当の意味での実態解明がやっぱりなされていない。処罰の種類や軽重を、メディアを含め焦点としているが、明らかに自民党が論点をずらして、そこにメディアも乗っかっている構図ができてしまっている。
4月4日に世耕氏は「誠実に処分を受け止めることによって政治責任を果たしたい」と言っているが、その政治責任は一体何なのか。一番大事な「誰がいつどうやってやろう」と言ったところがわからなければどうしようもない。
おそらく今、私たちはずっと続いてきた「諦めさせる政治」「忘れさせる政治」みたいなものと戦わなければいけなくて、その意味ではしつこいと言われても実態解明をして欲しいと私は言い続けなければいけなくて、メディアにはそれを取り上げて欲しいし、野党の議員には証人喚問を追求し続けてほしい。
気持ちはわかりますが、国家で最も厳しい捜査能力を持つ第三者委員会と言える検察が行った実態解明の結果を重く受け止めるのが法治というものです。
意味不明なのは「本当の意味での実態解明」という言葉です。本当の意味とは一体何なのかということです。
また、全員が不作為すれば現状維持となるこの件には「誰がいつどうやってやろう」という指示は必ずしも必要ではありません。検察捜査の結果から、この事件の元凶は集団的無責任であると考えるのが蓋然的です。
なお、検察よりも厳しい懲罰があるとすれば、それは私刑(リンチ)しかありません。もちろん私刑は法の支配や法治に対する冒涜行為です。
モラハラ社会とキャンセル・カルチャーの創造主
松原耕二氏:今回裁く側に回った岸田氏は派閥に不記載の問題を抱えている。茂木氏は何億円もの金を公開基準の緩いその他の政治団体に移して脱法行為をし続けている。つまり裁く側もグレーだ。それはいろんな議員に聞いてもわかっている。
だから正当性はないという思いが強くて、しかも岸田氏が今後政治資金規正法のポイントを3つ指示しているが、例えばデジタル化とか、外部監査の義務化とか、連座制とか、いっぱい問題あるのにそこだけという感じだ。実体化がおざなりになっている。今後の政治の金の額をどうしようとするのか、それもまったく見えない。
だから皆さんおっしゃるように、これからはメディアを含めてちゃんと見続けて怒り続けないと変わらない。
岸田政権の「デジタル化」「外部監査の義務化」「連座制」という具体的な政策を批判する一方で「ちゃんと見続ける」「怒り続ける」という精神論を結論にするところは残念なほどに情けないです(笑)
さて、番組の最後の「風をよむ」もそのまま変わらずです。この日のテーマは「変わる仕事…若い世代は」でした。この中で興味深かったのが、松原耕二氏のコメントです。
松原耕二氏:このチャンネル(JNN系列)でやってた『不適切にもほどがある!』というドラマを想い出した。あれ見ると、昭和と令和とこんなに価値観が変わったんだと思い知らされた。風刺が効いていたんですね。
実は『サンデーモーニング』こそ、スケープゴートを次々と徹底的に叩いて辞めさせる令和のモラハラ社会とキャンセル・カルチャーの創造主であるかと思います。今のネットのモンスター・クレーマーは『サンデーモーニング』のマネをして、言葉狩りをしてはイチャモンを付けまくっているのです。松原氏に創造主の自覚がないところは、まさに昭和そのものです(笑)
いずれにしても、司会者が交代したにもかかわらず、『サンデーモーニング』の番組構成にほとんど変化は認められませんでした。残念ながら、これでは新しい視聴者層を獲得するのはほぼ無理かと思います。ケントさんに復活していただくとか、大胆な番組改革が必要であると考える次第です(笑)。