スイスでサステナブルな旅をしよう! アルプスの絶景と伝統をめぐる① 「スイステナブル」って知っていますか?

旅のテーマは「サステナブル」。地球環境を守るためには何かを強いられたり、ガマンをしたり、そんなイメージがありませんか? でもサステナブルって、そんなに構えることじゃないんです。地産地消だって、公共交通機関を使うことだって、環境意識の高い宿に泊まることだってサステナブル。そんなサステナブルなスイス2週間の旅を4回にわけて案内します。

モントルー➡グリンデルワルト➡ベルギューン

サステナブルってなに?

近年、日本でもしきりに言われるようになった「サステナブル」や「SDGs」。しかし観光立国・環境立国のスイスでは、ずっと前から取り組んできたごく普通のこと。大自然をより近くに感じながら、その土地で長く受け継がれてきた文化や伝統を体験し、地元ならではの郷土の味を楽しむ。そして長く滞在すれば、その魅力をより深く掘り下げることができる。そんなサステナブルな旅へ出発!

スイスのサステナブル

あの人が愛した町と大人のチーズフォンデュ

チューリヒ空港に着いたら、まずは大きなスーツケースを手放そう。スイスには荷物託送サービスがあり、駅から駅、ホテルからホテルなどへ荷物を送ることができる。身軽になったら、鉄道を乗り継いでレマン湖畔の町・モントルーへ。湖の南側はフランスだ。リゾート地の雰囲気が漂うここは、フレディ・マーキュリーが愛した町としても知られる。湖のそばには記念館「クイーン ザ・スタジオ・エクスベリエンス」も立つ。

翌日、絶景ルートを走る「ゴールデンパス・エクスプレス」で乗り換えなしに向かったインターラーケン。蒸気船でブリエンツ湖のクルーズに興じたあと、ケーブルカーでハーダークルム展望台に上れば、アイガー、メンヒ、ユングフラウの三山を前にサンセットディナーが待っている。ここでいただくのはチーズフォンデュ。白ワインがしっかり効いた濃厚なチーズは、いままで食べていたものはなんだったの?という大人の味だ。

レマン湖畔に立つフレディ・マーキュリーの像。
上部にも窓があり、風景が流れていくような「ゴールデンパス・エクスプレス」。
ハーダークルム展望台から。正面にアイガー、メンヒ、ユングフラウの三山を望む。
ハーダークルム展望レストランで。チーズフォンデュには地元のビールを合わせたい。

迫力の三山 ずっとここにいたい!

多くの人がイメージするザ・スイスな風景と出会うのは、次の日のこと。ヴェンゲルンアルプ鉄道で、昨日見た三山にもっと近づいていく。花がいっぱい咲いているので、クライネ・シャイデック駅からひと駅手前のヴェンゲルンアルプ駅まで歩くことに。次から次へと現れるかわいらしい花たちが大迫力の三山と相まって、なんて幸せな時間なのだろうと、この絶景を心に焼きつける。後ろ髪を引かれながら、グリンデルワルトへ。

グリンデルワルトはユングフラウ地方の拠点の町。レストランや土産物店なども並び、多くの人でにぎわう。今日はフィルストとアイガーグレッチャー周辺の2カ所でハイキングを。

フィルストから1時間ほど歩いて向かったのは、バッハアルプゼー。途中、色とりどりのかわいい花々と出会い、湖に着いたら目の前に形のいいシュレックホルンが! 気持ちよく往復してきたら、なにやら絶壁に張り付くように金属製の橋が見える。約250mの回廊、フィルスト・クリフウォークだ。ドキドキしながら渡っていくと、なんだこれは!の絶景が待っていた。

アイガーグレッチャー駅へは、2020年に開業したロープウェイ、アイガー・エクスプレスで向かう。ユングフラウ鉄道に乗り継いで、標高3454mのユングフラウヨッホ駅へ。スフィンクス展望台から、アルプス最大・最長のアレッチ氷河を眺める。ユングフラウ鉄道でアイガーグレッチャー駅に戻り、ここからクライネ・シャイデックまで約1時間のハイキング。なんとここで、大きな二本の角が特徴のヤギの一種・シュタインボックに出会ったのだ。

スイスは、あちこちにハイキングコースが整備されているのが大きな魅力。時間や体力に合わせて、自分で選択できるのがうれしい。

ヴェンゲルンアルプ鉄道は向かって右側の座席を確保して、三山をたっぷり堪能しよう。
高山植物の共演に時間が経つのを忘れてしまう。
クライネ・シャイデック駅のレストランでレシュティを。スイスの国民食ともいえるポテトのパンケーキは、山岳レストランにはだいたいどこでもある。

●レシュティについてはこちら
myswiss.jp/experiences/food-and-wine/recipe/roesti/

バッハアルプゼーの湖面にシュレックホルンが映る。
フィルスト山頂の切り立った絶壁に沿って造られた橋上を歩く展望回廊、フィルスト・クリフウォーク。
フィルスト駅のレストランで食べたアルペンマカロニ。リンゴをすりおろした甘いソースが付く。

●アルペンマカロニについてはこちら
myswiss.jp/experiences/food-and-wine/recipe/herdsmans-macaroni-with-applesauce/

アイガー・エクスプレスでアイガーグレッチャー駅まで。
ユングフラウヨッホ駅。こんな高所にも鉄道で気軽に行けるのがスイスの素晴らしさ。
ユングフラウヨッホ駅に隣接するトップ・オブ・ヨーロッパ。スフィンクス展望台からは、世界遺産のアレッチ氷河を見ることができる。

絶景列車の旅は続く

さらに翌日、「ルツェルン=インターラーケン・エクスプレス」と「ゴッタルド・パノラマ・エクスプレス」を乗り継いでやってきたのは、三つの古城をもつ世界遺産の町・ベリンツォーナ。イタリアとの国境の町なのでイタリア語圏だ。トゥージスからは、世界遺産のレーティッシュ鉄道アルブラ線に乗ってベルギューンへ。心待ちにしていた宿へチェックイン!

ルツェルン湖の湖船クルーズと伝統の旧ゴッタルド線を走るパノラマ列車がセットになった「ゴッタルド・パノラマ・エクスプレス」。車内では、車掌さんがポストカードを集めにきて投函してくれる。帰国したら家に届いていた!
途中でびっくり、こんなおもてなしが。
小さな村や橋を渡って進むレーティッシュ鉄道アルブラ線。

スイステナブルなホテルに泊まる

「スイステナブル」とは、スイスとサステナブルを組み合わせた造語。サステナブルなプロジェクトに積極的に取り組んでいるホテルやレストラン、ミュージアムなどの施設、交通機関などをスイス政府観光局が認証している。認証ホテルではミネラルウォーターを繰り返し使えるガラス瓶で提供したり、バスルームのシャンプーやリキッドソープも詰め替えできるリターナブル瓶を使用したり。チェックしてみよう。

Grand Hotel Suisse Majestic

グランド ホテル スイス マジェスティック

ベル・エポック様式の優美な建物が目を引く。モントルー駅の正面に立ち、鉄道でめぐる旅にうってつけ。レマン湖を望むテラスでの朝食も気持ちいい。周辺に広がるラヴォー地区のブドウ畑はユネスコの世界遺産に登録されている。

グランド ホテル スイス マジェスティック

Hotel Eden Spiez

ホテル エデン シュピーツ

トゥーン湖と町を見下ろす、シュピーツの丘の中腹に立つ。バルコニーからの景色がすがすがしく、遠くにはベルンの山々も。野菜や果物、ハーブを育てる自家菜園と美しい庭園があり、地元の素材にこだわった食事も人気。

ホテル エデン シュピーツ

Kurhaus Bergün

クアハウス ベルギューン

アール・ヌーヴォー様式の装飾や建物が美しいクラシックホテル。まるで映画のワンシーンのような特別な空間にうっとり。映画室もある。地産地消を目指し、野菜や肉、チーズ、バターなど地元の食材を使ったメニューが魅力だ。

クアハウス ベルギューン

スイストラベルパス&荷物託送サービス

サステナブルな旅に欠かせないのが、スイストラベルパス。主な鉄道、バス、湖船、都市交通が乗り放題で利用できる。主要都市の市内交通や全国約500カ所の美術館・博物館が無料になるほか、山岳交通の半額割引などの特典も付く。3・4・6・8・15日間と予定に合わせて選べる。そんな乗り継ぎや途中下車の多い旅を可能にする荷物託送サービスも。スイス国内の駅から駅へ、ホテルなどの滞在地から次の目的地まで荷物を直送できる。使わない手はない。

重いスーツケースは送って、身軽に旅を!
パスポートのようなかわいい冊子「マイグランドトレインツアー」にスタンプを押して、記念に持ち帰ろう。

●スイス・グランドトレインツアーについてはこちら
myswiss.jp/experiences/experience-tour/train-bus-boat-grand-train-tour/grand-train-tour-of-switzerland/

【Information】日本からスイスへは― 成田~チューリヒ間を約14時間で結ぶ、スイス インターナショナル エアラインズの直行便が週5便運航している
[気候]春・秋は8~15度、夏は18~28度、冬は-2~7度。山岳地帯と麓の村では温度差があり、日中と朝晩の気温差も激しいので、レイヤード(重ね着)が基本。着脱しやすい服装を準備したい
[時差]日本の-8時間(夏は-7時間)
[言語]ドイツ語、フランス語、イタリア語、ロマンシュ語の4言語(地域により異なる)。ホテルやお店では英語が通じる スイスの情報(スイス政府観光局)

取材・文・撮影=『旅の手帖』編集部 協力=スイス政府観光局、スイス インターナショナル エアラインズ、スイストラベルシステム
『旅の手帖』2024年4月号より

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