「三菱地所の中興の祖」 渡辺武次郎の伝記漫画を発刊 出身地の矢掛町 東京・丸の内の発展担う

完成した渡辺武次郎の伝記マンガ

 日本を代表する不動産会社三菱地所(東京)の中興の祖として、戦後に東京の丸の内を、世界有数のビジネス街へと発展させた、渡辺武次郎(1894~1997年)の伝記漫画が完成した。名誉町民として顕彰する岡山県矢掛町が、母校矢掛中(現矢掛高)の校訓に従い、誠実に努力を続けた、武次郎の精神を伝えようと発刊した。

 武次郎は、東京高等商業学校(現一橋大)から三菱合資会社に入社。三菱地所の社長、会長、相談役として経営を46年間担った。関東大震災(23年)や東京大空襲(45年)による荒廃を教訓に、高度成長期に丸の内を災害に強いビジネス街へと造り替えた。

 漫画は「矢掛に育まれて」「丸ビル建設と関東大震災」など8章で構成する。77年に日本人として初めて、世界不動産連盟の名誉会長代行に就いた。フランス旅行中、ピカソが初対面の武次郎のシャツに絵とサインを描き、話題になったエピソードも盛り込んだ。

 矢掛中の校訓「至誠(しせい)力行(りっこう)」が意味する「誠実に、諦めず、努力してやり遂げる」精神を生涯貫いたという。矢掛町中心部の整備に助言し、多額の寄付をするなど、古里発展にも尽くした。

 笠岡市の漫画家南一平さんが描き、B6判、100ページで1550部印刷した。費用335万円の大半はB&G財団(東京)の助成金で賄った。町内の児童生徒約1100人のほか、図書館など公共施設に配る。町教委教育課は「武次郎の精神を子どもに学んでほしい」と期待している。

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