「滅相も無い」中川大志、染谷将太、上白石萌歌、森田想が独特の世界観を絶賛。注目の演出家・加藤拓也を質問攻め!

MBS・TBSで4月16日にスタートするドラマイズム「滅相も無い」(MBS=火曜深夜0:59、TBS=火曜深夜1:28)の第1・2話先行上映と完成披露トークイベントが行われ、出演する中川大志染谷将太上白石萌歌森田想、監督・脚本を務める加藤拓也氏が登壇した。

「滅相も無い」は、演劇と映像を自由に行き来しながらめざましい功績を残し続ける加藤氏自身が、初めて連続ドラマで全話の脚本・監督に挑み、演劇と映像を交差させた完全オリジナルのSFヒューマンドラマ。

物語の舞台は、巨大な“穴”が現れた日本。ビルより巨大な穴、雲を突き抜ける穴、都会の真ん中に現れた穴…突如七つの巨大な穴が現れる。混乱し、対応に追われ、さまざまな調査が行われたが、穴の正体は分からないまま。やがて人々は、穴とともに暮らし始める。穴に入る者も多く存在したが、帰ってきた者はまだ誰もいない。そして、穴を神とする者が現れる。その名は、小澤(堤真一)。小澤は「穴の中には救済がある」と説く。

12月1日、リゾート施設に8人の男女が集合。怒れない川端(中川)、思い出す菅谷(染谷)、田舎暮らしの松岡(上白石)、帰国生の青山(森田)、取り返しがつかない渡邊(古舘寛治)、起業家の真吾(平原テツ)、好奇心の井口(中嶋朋子)、そして夢うつつの岡本(窪田正孝)。彼らは、小澤をリーダーとする団体の信者たちだ。

加藤作品へは初参加となった中川が「いよいよ来週からスタートということで、ドキドキしています。今回脚本を読ませていただいて、現実世界に突如穴が現れるという、リアルと非現実が隣り合わせにある監督の世界観が本当に好きです。演劇と映像をミックスした手法で撮影していくということで、現場に入るまで想像できてない部分が多かったので、撮影に入るのが楽しみでした」と大きな期待を持って撮影に臨んだことを伝える。

染谷は「演じる菅谷について、本読みの時に『ずるい男だけど、ある種の一番普通の人間』と監督がおっしゃられて、それでしっくりきました。むちゃくちゃしゃべる役柄で、演劇の経験が薄いのもあって、不安でした」と吐露すると、加藤氏が「めちゃくちゃしゃべりますよね、本当によくしゃべる」と他人事のようにコメント。中川が「勝手にしゃべるわけじゃなくて、加藤さんが書いてるんです(笑)」とツッコむと、染谷は「ほかの役者さんに『今、加藤さんの作品に出ている』と言ったら、『よくしゃべるでしょ』と言われたぐらい」と明かし、中川は「演劇的な撮り方、作り方をしているシーンもあるので、1発に懸ける集中力というか、同じ時間軸で、キャスト・スタッフが一斉に集中して撮影したテークがたくさんある。それはしびれましたね」とセリフが多い芝居だけに、緊張感のある中で撮影が行われたことをうかがわせた。

上白石も、念願だったという加藤組参加について「舞台を拝見してきて、加藤さんの作品には“加藤語”というのがあると思っていて。例えば普通にしゃべっていると、『あの、えっとなんだっけ?』とか言うと思うんですが、そういう日常的な会話のエッセンスがセリフに入っていたり、普通にしゃべっている時にかんじゃう部分も、脚本に落とし込まれたりしています。そのせいか、今回はセリフを覚えるのに普段より時間がかかりましたが、セリフとして発すると登場人物に寄ったセリフになっていくので、これが加藤さんの世界観なんだなと思いました」と加藤が紡ぐセリフについて言及。「1、2話を見て、今まで見たことのないような作品になっていて、映像の中で場面転換をするところがあったり、見ていて1秒も飽きなくて、まだまだこの世界にいたいなという気持ちになりました」と作品への思いを熱く語った。

森田は、特殊な物語の魅力に関して「周りの方に説明しても分かってもらえなかった」と言い、「見ていただけたら面白もが分かる素晴らしいドラマです。バレエに挑戦して作品に臨むことも楽しい過程でした。皆さんと違って私の役はしゃべらない役柄ですが、監督がしゃべらない“間”の演出もこだわってくださったことが印象深いです」と加藤氏の演出にも触れた。

加藤氏は「演劇の手法と映画の手法の両方を使っています。紙芝居やCG、AIも使って、いろんな表現方法を混ぜ合わせて作っています。CGを作るにあたってゲームモデルを使ったりもしました」と製作過程でのこだわりを述べた。

第67回岸田國士戯曲賞、第30回読売演劇大賞演出家賞部門優秀賞、また世界を変える30歳未満として「Forbes JAPAN 30 UNDER 30 2023」に選出されるなど、舞台作家として今最も注目を浴びている加藤氏。その一方、映像でも「きれいのくに」(NHK)で第10回市川森一脚本賞受賞、自身で監督・脚本した映画「ほつれる」(2023年)はナント三大陸映画祭で受賞する、気鋭のクリエーターだ。

そんな加藤氏が生み出す世界観はもちろん、本人が持つひょうひょうとしたたたずまいに興味津々のキャスト4人が、加藤氏にそれぞれ質問をぶつけることに。

中川は、普段の淡々とした印象とは異なる、監督の意外な一面について質問。「現場での加藤さんしか知らないのですが、ものすごく『ふーっ!(テンションが上がる)』となることや、はしゃいじゃうことはありますか?」との問いに対し、加藤氏は「それこそ、昨日、劇中音楽を務めるバンド・UNCHAINのライブに行った時、声を出したいなと思いましたが、結局声は出さなかったですね」と返答。さらに、上白石が「ジェットコースターに乗った時は?」と尋ねると、「怖いなとは思いますよ。友達とジェットコースターに乗った時にコーラのペットボトルを持っていて、それが破裂しないかって怖かったことがありました」とエピソードも交えて回答。

染谷からは「脚本を書くのが早いと聞いたことがあるんですが、そうなんですか?」と聞く。加藤氏は「早くはないです。時間はかかるけど、動き出すタイミングが早いのかもしれません。1本作るのに1年かかります。ただ、タイピングはめっちゃ早いです。パワフルだねって褒められます(笑)」と明かした。

上白石は加藤氏の作品に対して「寝ている時の夢に似ているなと思っています」と表し、「現実と非現実の間を行き来しますが、加藤さんが見る夢はどういう夢なのかなって…」と問いかける。これには「夢は見ないんです。よく寝るんです。ベッドに入ったらすぐ寝る。眠りが深いんです」と話した加藤氏。加えて「夢を見たら投稿しますね」と約束していた。

最後に森田が「1・2話を見て、スタジオパートで同じカメラの中でセットが変わるのが多かったのですが、その発想は脚本を書いている時ではなく、現場で考えたものなんですか?」と尋ねると、加藤氏は「いいえ、美術打ち合わせの段階で決めていました。セットも多かったので、模型を作って、模型を動かしながらどうしようかと考えました」と答えた。

続いては、劇中では巨大な穴が登場するが、撮影前にその穴をどんな穴だと想像していたか、それぞれイラストにして発表。

縁に線が入ったメロンパン風の染谷の絵を見た中川が、「染谷さんのはパンですね…」とコメントすると、染谷は「黒く塗りつぶす時間がなくて…」と言い訳。鼓のような形状のイラストを披露した加藤氏は「象の鼻のようなものをイメージしていました。異次元の感じを出そうと思っていました」と語った。

ドーナツと書かれた上白石のイラストに「浮き輪ですか?」とツッコんだ中川。気にせず「ドーナツが好きなんですよ」と続ける上白石に、中川は「そういうことじゃなくて…」、加藤氏も「コーナーの趣旨が…」と微妙な反応を示すものの、上白石は「穴といえば自分の中でドーナツだったので、身近なもので穴と言えばドーナツ!(笑)」と一貫してドーナツで押し切った。

森田は「私は入るところを想像して書きました」と説明すると、中川は「上手〜! 階段もある!」と感心。中川自身は「ぽっかり空いた黒い穴を思い描いていました。穴って落ちるものというイメージがあって、穴が立っているという発想がなかったんです。街中の交差点にドカンと開いた穴、そこにヘリコプターでロープをたらして降りていくイメージでした」と解説。

実際に劇中に登場する穴について、加藤氏は「実際には空中に穴を掘ろうとしたので、結果的には立った感じになりました」と結論づけた。

最後には、あらためて5人がそれぞれあいさつ。

中川は「すごい面白いです。皆さん芝居がうまい人しかいないので、現場ではドキドキしていましたが、加藤さんが紡ぐ言葉や世界観を自分で解釈して落とし込んでやらせていただきました。未知なる新たなエンターテインメントを作っているという気がして、刺激的な時間でした。とにかく面白いので、楽しみに見ていただけたらと思います」と充実した撮影を経て完成した、自信作となっていることを力を込めて表明。

染谷は「虚構と現実の微妙な距離感がしっかり描かれていて、虚構性がしっかりあるからものすごく現実的に迫ってくる、そんな不思議な作品だと思いました。なかなか感じたことのない体験をできると思います。たくさんの方に見ていただけたら幸せです」と作品の独特の世界観をポイントに挙げた。

上白石は「夢の加藤組に参加できたことをうれしく思いますし、たくさんいる魅力的なキャストの皆さんと一つの作品を作れることを幸せに思いました。4月は新しい生活や新しい出会いがある中で、心が揺れたりする瞬間が多い季節だと思いますが、深夜の誰にも邪魔されない時間に、加藤さんの現実と非現実を行ったり来たりする、とても居心地がいい、でも危ういみたいな時間に身をゆだねてほしいなと思います」と加藤組への参加の喜びをかみ締め、作品を楽しんでほしいと訴えた。

森田は「こんなに大きなキャストの皆さんの中に入って作品に参加できたことがうれしかったですし、全部が新鮮で先鋭的で尖った、でも心のどこかに着地するような作品になっていて、必ず楽しんでいただけると思います。1日の終わりにこうしたエンタメを楽しんでもらえたら」と、新鮮な作品の世界観に没入してもらいたいと願う。

そして、加藤氏は「穴が注目されますが、派手な物語ではなく、俳優一人一人、人生のある一部分にフォーカスを当てた物語です。地味なお話で深夜に見るにはぴったりの作品になっていますので、いろんなお話を最後まで味わいながら見ていただけたらと思います」と作品の内容に触れながら、観客と視聴者に向けてアピールした。

© 株式会社東京ニュース通信社