気候変動は「未知の領域」に 10カ月連続で月別の最高気温を更新

マット・マクグラス、マーク・ポインティング、BBCニュース環境・科学担当記者

今年の3月は、観測史上最も暖かい3月だったという新たなデータが発表された。第一線の科学者はBBCに対し、年末までに気温が下がらなければ、気候変動は「未知の領域」に突入する可能性があると警告した。

先月がこれまでで最も暖かい3月となったことで、月別の最高気温も10カ月連続で更新された。

このため、気候変動がさらに加速する新たな段階に突入するのではないかという懸念の声も上がっている。

最近の暖かさの背景には、エルニーニョ現象が関係している。

エルニーニョ現象が今後数カ月で収束すれば、気温は一時的に下がるはずだが、そうならないかもしれないと心配する科学者もいる。

米航空宇宙局(NASA)ゴダード宇宙科学研究所のギャビン・シュミット所長はBBCニュースに対し、「今年の夏の終わりまでに、北大西洋などでなお記録的な気温になるなら、我々は本当に、一種の未知の領域に入っていくことになる」と述べた。

欧州連合(EU)のコペルニクス気候変動サービスによると、今年3月の世界の平均気温は、人類が化石燃料を大量に燃やし始める前の「工業化以前」と比べて1.68度高かった。

今のところ、長期的な温暖化傾向は予想とほぼ一致しており、ほとんどの研究者は気候が新たな段階に入ったとはまだ考えていない。

しかし一方で、なぜ2023年末がこれほど暖かかったのかを正確に説明するのに苦労している。

今年3月の記録更新は予想されていた。昨年6月から始まり、12月にピークを迎えたエルニーニョ現象は、温暖化の主要因である化石燃料の使用によって暖められた大気に、さらに熱を加えた。

しかし、気温は昨年9月頃から特に大きく記録を更新し始めている。当時はまだエルニーニョ現象が発生段階だったため、この暖かさをすべて説明することはできない。

未来の予測が難しくなっている

シュミット氏は、こうした事態が今後の予測にどう影響するのかを懸念している。

「我々の予測は、2023年の具体的な数字についてはかなり大きく外れてしまった。もし過去の統計がうまくいかなければ、将来何が起こるかを言うのはかなり難しくなる」

コペルニクス気候変動サービスのサマンサ・バージェス博士もこれに同意し、「昨年半ばになぜ状況が激変したのか、この状況がいつまで続くのか、気候変動のフェーズが変わったのか、それとも長期的な傾向の中の一過性のものなのか、我々はまだ理解しようとしている段階だ」と述べた。

現在起きているエルニーニョ現象は減退しており、今後数カ月で終わる見込みだ。

科学者たちは、太平洋の状況がどのように変化するか正確には把握していないが、現在の予測では、今年後半には完全に、海面水温が低下するラニーニャ現象に変わる可能性がある。

海面が冷え込むと、通常、世界の気温は一時的に低下する。しかし、具体的にどのように展開するかはまだ不明だ。

米海洋大気庁気候予測センターのミシェル・ルー氏は、「エルニーニョ現象が弱まっているのは確かだが、問題はその先だ」と言う。

しかし科学者らが確信を持っていることもある。地球温暖化を止める方法は、地球温暖化ガスの排出を急速に削減することだ。

メルカトル・オーシャン・インターナショナルのアンジェリーク・メレ博士は、「我々には今後数年間、排出量を削減することで気候変動の影響を緩和しようとする余裕がある」と述べた。

「私はその難しさを分かっているが、もし行動を起こさなければ、2023年が『新しい普通』となる未来に我々自身が貢献していることも事実だ」

「それがどれくらいのスピードで実現するのか。それは我々次第だ」

図表:アーワン・リヴォルト、マーク・ポインティング

(英語記事 Climate change: 'Uncharted territory' fears after record hot March

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