“2クール連続放送”が業界のトレンドに? 『薬屋』『フリーレン』に続く注目の春アニメ4作品

近年、アニメ業界では2クール連続放送の形態が増加傾向にある。その背景には、ロングランタイトルを4クール分制作する際の制作体制の確立が難しいことや、連載中の原作に追い付いてしまうリスクが存在することが理由に挙げられる。(※1)そのため、2クールで完結するオリジナル作品だけでなく、原作の人気エピソードまでを凝縮した「ファンを獲得するための第1期」を2クールでスタートさせる作品も増えているのが現状だ。

2023年秋より2クール連続放送されていた『薬屋のひとりごと』と『葬送のフリーレン』が、ついに最終回を迎え、多くの視聴者を魅了した。また同じ2クール連続放送といえば、1月から放送開始した『ダンジョン飯』の4月からスタートする第2シーズンにも注目が集まっている。

この4月から始まる春アニメにも、期待の2クール連続放送作品が控えている。今回は、その中から注目の4作品を紹介しよう。

●『転生したらスライムだった件 第3期』
今回のTVアニメ第3期では、リムルVSヒナタの白熱のバトルが見どころになりそうだ。第3期のPVでは、2人が真剣な眼差しで対峙する様子が描かれている。

第3期では、正式に魔王となったリムルの支配地域がジュラの大森林全体に拡大。それに伴い、各種族の代表が挨拶に訪れることが予想されるため、リムルのお披露目とテンペストの新規住民獲得を兼ねた「開国祭」の開催が企画される。

一方、魔物を敵視するルミナス教の総本山・神聖法皇国ルベリオスでは、聖騎士団長・ヒナタが何者かによって改竄されたリムルの宣戦布告を受け取っていた。2クールの放送が終わる頃、この戦いはどんな結末を迎えるのだろうか。

●『ザ・ファブル』
『太陽の牙ダグラム』や 『装甲騎兵ボトムズ』で知られる髙橋良輔監督が、原作の魅力を最大限に引き出しアニメ化を実現した『ザ・ファブル』。主人公は幼少期から殺し屋としての英才教育を受け、どんな敵も6秒以内に葬り去る無敵の天才殺し屋・通称“ファブル”だ。しかし彼は、突如「1年間誰も殺してはならない」という指令を受け、全く新しい“普通の”生活を送ることになる。

2度の実写化で多くの人の心を掴んだ『ザ・ファブル』だが、アニメでは2クールに渡ってどこまで描かれるのかも気になるところ。主人公ファブル役に興津和幸、ヒロインの岬役に花澤香菜、さらには大塚明夫、津田健次郎など豪華声優陣が名を連ねる。視覚的なアクションの攻防はもちろんだが、殺し屋たちの“声”に注目して作品を観ても面白いだろう。

●『狼と香辛料 merchant meets the wise wolf』
『狼と香辛料』は、若き行商人クラフト・ロレンスと、豊穣を司る狼の化身である美しい少女ホロの旅を描いた作品だ。ロレンスは荷馬車を引く馬を相棒に、街から街へと商品を売り歩く日々を送っていたが、ある日出会ったホロの「遠く北にあるはずの故郷・ヨイツの森へ帰りたい」という望みを聞き、2人は北を目指す商売の旅の道連れとなる。

『狼と香辛料』の特徴は、経済学を駆使した推理アドベンチャーの要素が含まれ、ファンタジーの世界を舞台にしていながらも、剣や魔法ではなくあくまで商売の話がメインとなるところ。近年の“ド派手”な演出が織り込まれたアニメが続く中では珍しい、キャラ同士の深い掛け合いが見どころになるような作品とも言える。2008年に始まったアニメシリーズから10年以上が経ち、完全新作のアニメプロジェクトとして始動したことで、ファンの期待も高まっているに違いない。

●『夜桜さんちの大作戦』
『SPY×FAMILY』のヒットによって空前のスパイ作品ブームが起きている。春アニメでもスパイを題材にした『夜桜さんちの大作戦』が放送される。

本作は、スパイ一家・夜桜家の10代目当主である夜桜六美と、高校生・朝野太陽を中心に描かれたスパイバトルコメディだ。家族を事故で亡くし、心を閉ざすようになった高校生・朝野太陽は、クラスメイトからは「超・人見知り」と印象づけられている。唯一話せるのは幼なじみの夜桜六美だけ。しかし、六美には代々続くスパイ一家の当主であるというヒミツがあり、様々な敵から命を狙われていた。

すでに公開されているキービジュアルでは、主人公・朝野太陽とヒロイン・夜桜六美が並び立つ背景に、印象的な夜桜が描かれている。まさに、この春にぴったりの2クールアニメとして注目を集めているのが『夜桜さんちの大作戦』なのだ。

2クール連続放送作品は、より多くの話数とクオリティで視聴者を楽しませ、作品世界により深く没入できる機会を提供してくれる。今回触れた4作品は、いずれも人気原作のアニメ化ということで、映像ならではの表現やアニメオリジナルの展開にも期待が募る。春から夏にかけて始まるこれからの半年間も、アニメファンにとって嬉しい展開となりそうだ。

参照
※ https://www.itmedia.co.jp/business/articles/2403/22/news026_2.html
(文=すなくじら)

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