【4月10日付編集日記】何年かかっても

 この地域にどれほどの活気があったのかが容易に想像できた。富岡町の「夜の森桜まつり」が、東日本大震災後初めて、夜の森公園をメイン会場に行われた。当時を懐かしく思い出した方も多かったに違いない

 ▼同町で育ったミュージシャン渡辺俊美さんの演奏が印象的だった。自身も卒業生で、作曲を手がけた双葉高創立100年の記念賛歌「百年の樹」などを披露。彼の息子さんも共演し会場を盛り上げた

 ▼夜の森地区を中心にした復興拠点の避難指示が解除され、1年がたった。建物が解体されて更地になったままの空間、人けのない家屋にどうしても目がいく。人の営みを取り戻すのが、そう簡単な道のりではないことを痛感する

 ▼その風景と背中合わせで、まつりのにぎわいがあった。3世代が手を携えて来たのだろう。幼児をベビーカーに乗せた夫婦と連れだって歩く年配の方々や、若者のグループらがそれぞれに桜並木をめでていた

 ▼「百年の樹」にこんな一節がある。作詞はOBの作家志賀泉さん。「その樹の名は双葉 百年たっても双葉」。たとえ何年かかろうとも、不調和な情景が解消され幾世代にもわたり人が集う地域になる。この日のにぎわいに触れ、そう思った。
 

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